デジタルトランスフォーメーションの最終ゴールは、デジタル部門が消滅すること
先日参加したネプラスユーですが、自分が2つパネルディスカッションを担当していたこともあり、パンテーンのメモを公開した後すっかり燃え尽きてしまったんですが。
LVMHの方のデジタルトランスフォーメーションの基調講演のメモを取っていたのを思い出したので今更ながら公開させて頂きます。
このセッションはLVMHグループでアジアのデジタル戦略をリードするWendy Chanさんによるもので、いかにLVMHをデジタルトランスフォーメーションしているかというお話しでした。
Wendy Chanさんはデジタル部門の責任者なんですが、最後の井上さんの質問に、タイトルに入れたように「私の最終的なゴールは、最終的にデジタル部門が消滅すること。それが成功の証」という趣旨のことをさらっと発言されていたのがメチャメチャ印象的でした。
ちょっと最近日本ではデジタルトランスフォーメーションとかDXというキーワードが、また流行語になって目的化してる企業が増えてる気がしますが、やはりChanさんがおっしゃるように「デジタルではなく消費者にフォーカスすべし」というのがポイントなのかなと改めて思います。
■デジタルによるラグジュアリー再解釈ーLVMHはいかに顧客文脈を紡ぎなおすか?
・Wendy Chan
LVMH Asia Pacific SVP LVMH Digial Asia
■デジタルな環境での新しい文脈を考える必要がある
■LVMHでのWendy Chan氏
・16年前にメディア部門に入社。当時デジタル部門はなかった
・CDOからデジタル部門への異動を打診されたとき、デジタルネイティブではなかった
■デジタルとは何か?
Digial is Not a "THING"
・デジタルは物体ではなく、ブランドと消費者の間に存在する多数のソフトウェア
・従来はデパートなどで直接顧客と接客していたが、今はソフトウェア経由の接客になっている
・こうしたことはECだけの話ではない。
「デジタル」を組織の一部門だけの話にしてはならない
デジタルというのは現在の顧客体験全体につながって影響する
・人間が変化している
我々は人間に販売をしているので、我々も変化しなければならない
・ミレニアル世代は1日に150回携帯電話をチェックしている
・76%のスマホユーザーは毎日3時間は使っている
・36%の顧客はお店の中で携帯電話で商品や値段を検索している
・私たちは常につながっている、
だからこそ私たちのビジネスもこの現実を反映しなければならない
■ラグジュアリーグッズもオムニチャネルが軸に
・世界で270億ドルのラグジュアリーグッズがオンラインで販売されている
日本は実は中国を抜いてアジアの中でトップの市場になっている
・また、浸透率で見ると実はまだ伸びしろがある
■オムニチャネルの進化
オンラインで購入している顧客が実店舗に来た際に、現状ではその人がVIPであることを認識できない。
最初の顧客接点がどこであろうと、顧客に最適なサービスが提供できるようにするのがオムニチャネルのポイント。
■インターネットは文化を変えている
・マスメディア→ 大量のニッチ
・例えばTikTokは、1年ほどであっという間に急成長している
■デジタルも進化しているが、店舗は引き続き最も重要
店舗でもデジタル技術を使いこなしていけるかが鍵になる
・例えば、店頭で接客したスタッフが、顧客とつながりチャットでコミュニケーションできるようにする
・自分の担当の顧客がオンライン上で購入する際にも、担当の店員がサポートできるようにする
・例えばジバンシーのポップアップストアをLINEで開設してみている
■次の大きな波はAIとアルゴリズム
よりカスタマイズ化されたサービスの提供が可能に
■デジタル化の流れは技術だけ、1つのチームだけでは駄目
まず人からはじめ、システムとデータの環境を整えていく
■デジタルチームの3つのキー
・デジタルの縦割り化の排除
・デジタルは各組織の役割を強化することができる
・活用する技術レベルを向上させていくべき
■デジタルではなく消費者にフォーカスすべし
LVMHは数十年前にラグジュアリーリテイルを定義してきた
同じように今からラグジュアリーオンラインを定義していく
■Q:ビジネスの調子が良いときにあえてデジタルトランスフォーメーションを行うことの難しさ
業績が良いからこそフルパワーで変化をすることができる。
それなりの予算を確保し投資もできる。
事業が安定しているときは変化が不要に思えるかもしれないが、LVMHにおいては安定性の上にあぐらをかくようなことは許されていない
■Q:うまくいっているから変えたくないと抵抗を受けたときにどうするべきか
LVMHではマネジメントがオフィスよりも店舗にいる人の方が多い
その結果、店舗側の人間が不安になることはある
ただ、データを分析するとオンライン、オフラインの組み合わせが大事であることが分かるので、そのデータを元に必要性を理解してもらう
ビジョンとデータの両方を理解してもらうことが大事。
■Q:次の流れへの投資の選択はどのように行うのか
現時点ではラグジュアリーブランドにとってはパーソナル化が最も大事だと考えている。
そのパーソナル化において重要なのは、AIとデータであると考えているので、そこに投資をしている。
■Q:チームに入るために何が必要か?
・好奇心
デジタルの新しい技術に興味を持つこと
・オープンマインド
・チームプレイヤー
各部門と連動して行動できる
■最終的にデジタル部門が消滅することが成功の証
※なお、同日のパンテーンの講演はこちら
※その他講演メモはこちら
ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございます。 このブログはブレストのための公開メモみたいなものですが、何かの参考になりましたら、是非ツイッター等でシェアしていただければ幸いです。