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総合1位獲得のBE:FIRSTとATEEZのコラボは、グローバル進出の新しい選択肢になるか

今年に入り様々な新しい挑戦を続けているBE:FIRSTが、また新しい快挙を成し遂げました。

7月1日にリリースされたK-POPグループのATEEZとのコラボ楽曲「Hush-Hush」が、ビルボードジャパンの総合チャートで1位を獲得したのです。

もちろん、BE:FIRSTと言えば、4月にリリースされた「Masterplan」がビルボードジャパンの総合チャート1位を獲得し、6曲の総合首位獲得をしているグループですので、今回のコラボ楽曲の総合1位獲得自体は順当な結果と言えるかもしれません。

今回特に注目したいのは、BE:FIRSTとATEEZのコラボ楽曲が、BE:FIRSTがグローバル進出するための新しいアプローチという側面を持っている点です。 
 

国と言語を超えたボーイズグループのコラボ

今回のBE:FIRSTとATEEZコラボが非常に興味深いのは、日本と韓国、J-POPとK-POP、日本語と韓国語という様々な境界線を越えて、2つのグループがコラボを実現している点です。

実際に楽曲を聴いて頂くと、両者がそれぞれ英語で歌い始めた後に、BE:FIRSTは日本語で、ATEEZは韓国語で歌唱するという、いわゆるトリリンガル楽曲になっていることに驚かれる方が多いと思います。

従来こうした国を超えたアーティストのコラボやフィーチャリング曲では、どちらかの国の言語に揃えたり、英語の楽曲にしたりすることが一般的だったと思いますが、今回のBE:FIRSTとATEEZのコラボはどちらかの国に寄せるのではなく、あくまで対等なコラボになっているのです。

もちろん、「Hush-Hush」のMVがBE:FIRST側のYouTubeに投稿されているように、今回のコラボを主導したのがBE:FIRST側であることは明白です。
ATEEZは、昨年BE:FIRSTが所属するBMSGの代表のSKY-HIさんが主導する「D.U.N.K. Showcase」にも出演していましたので、これも今回のコラボへの布石の1つだったと言えるでしょう。

実は今回のコラボについてはSKY-HIさんが、グローバル進出のための新しいアプローチという予告をされているのです。
 

4つ目のグローバル進出の選択肢

これまでの日本のアーティストの海外進出というのは、基本的に大きく3つのアプローチに分けることができます。

■1:海外活動を中心に
まず1つ目のアプローチは、シンプルに活動の中心を海外にすることです。

象徴的な成功事例としては、BABYMETALやXGがあげられるでしょう。
特にBABYMETALは2010年に結成されたグループですが、現在は日本国外での活動を主軸にしており、直近ではヨーロッパの様々なフェスで大量の観客を動員している動画がSNSに多数アップされています。また、今年は米国中をまわるツアーも予定されているようです。

XGも、今年に入って日本の音楽番組に出演するようになりましたが、2022年のデビューから2年間は、基本的に日本の音楽番組には出演せず韓国を拠点に海外のフェスなどを中心として活動を行っていました。
その結果、新曲「WOKE UP」がビルボードのグローバルジャパンソングスを6週連続で首位になるなど、海外に既に多くのファンを作ることに成功しているのです。

■2:アニメタイアップ
2つ目の選択肢は、最近の日本のアーティストのグローバルヒットの鉄板ルートとも言われるアニメタイアップです。
昨年世界でも大ヒットとなったYOASOBIの「アイドル」はアニメ「推しの子」のタイアップですし、今年世界で大ヒット中のCreepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」はアニメ「マッシュル」のタイアップです。

さらに、昨年米国でゴールドディスク認定の快挙を成し遂げた米津玄師さんの「KICK BACK」はアニメ「チェンソーマン」のタイアップで、米津さん自身もゴールドディスク認定はアニメのヒットのおかげであることを明言されています。

■3:メロディがTikTokで話題に
さらに最近日本のアーティストの世界ヒットの3つ目の新しい選択肢として注目されているのが、ネット経由、特にTikTok経由でのヒットです。

最も象徴的なのは、タイのTikTokで注目された後に世界的なヒットとなり、現在でもビルボードのグローバルジャパンソングスのトップ10入りを続けている藤井風さんの「死ぬのがいいわ」でしょう。

昨年はimaseさんの「Night Dancer」がTikTokを中心に話題となり韓国で大ヒットしましたし、最近ではアニメタイアップの「アイドル」や「Bling-Bang-Bang-Born」のヒットにはTikTokも大きく貢献したと言われています。
TikTokで話題になるような印象的なフレーズやメロディが、グローバルヒットの1つの要素になっているわけです。

一方で、SKY-HIさんとBMSGは、上記の3つのグローバル展開の選択肢とは別の「4つ目」となるグローバル展開の選択肢について、長くプランを練っていたようです。

「等価交換」でのグローバル展開

実はこの「4つ目」のグローバル展開の方法については、書籍「ヒットチャートの解体新書」に掲載されている著者のビルボードジャパンの磯崎誠二さんとのSKY-HIさんとの対談の中で明確に言及されているのです。

「今4つ目で考えているのは、分かりやすく国内での価値を高めて等価交換していくって作業で、来年のBE:FIRSTはこれに取り組みたいなと思っていますね。(中略)BE:FIRSTのグループ単位でのコラボレーションっていうのが、来年はひとつ目標としてあります。」

この「等価交換」というのが、日本に強いBE:FIRSTと、グローバルのリーチが強いATEEZとのコラボレーションということだったわけです。

ATEEZは日本でこそまだ大きな知名度はありませんが、YouTubeのチャンネル登録者数は400万近く、今年は世界最大規模の音楽フェスであるコーチェラにK-POPのボーイズグループとして初めて出演を果たした、世界的に人気のあるグループです。

BE:FIRSTが今回そのATEEZとコラボを行ったことで、分かりやすい結果として出たのが、世界25の国と地域でiTunesのJ-POPジャンルの1位を獲得したというニュースでしょう。

「Hush-Hush」は、世界的に人気のあるK-POPのグループとのコラボ曲ですので、まだ海外で聞いている人が少ないJ-POPのジャンルで1位を取れるのは予定通りという展開とも言えるわけです。
 

ATEEZのワールドツアーにもBE:FIRSTが参加

さらに、7月20日と21日に開催されるATEEZのワールドツアーでのロサンゼルス公演に、BE:FIRSTがオープニングアクトとしてゲスト出演することが発表されています。
参考:BE:FIRST公式Xアカウントの投稿

アーティストの単独ツアーに、ゲストが出演するという方式はNewJeansの東京ドーム公演においてYOASOBIやリナ・サワヤマさんが出演していたように、最近は徐々に増えてきているケースではありますが、まだまだ珍しいケースということもあり、ファンの間では喜びの声もある一方で戸惑いや懸念の声もあるようです。

ここで参考になるのはBABYMETALのケースでしょう。
BABYMETALは既に様々なアーティストとのコラボを実現しており、直近ではドイツのバンドであるElectric Callboyと「RATATATA」というコラボ楽曲をリリース。

米国ビルボードチャートの「ハードロック・デジタル・ソング・セールス」チャートで1位、ドイツのYouTubeのデイリーランキングで3位になるなど、大きな話題になっています。

特にBABYMETALとElectric Callboyは、単純にコラボ楽曲をリリースしただけでなく、様々な海外のフェスでもコラボステージを一緒に披露されているのが非常に印象的です。

BE:FIRSTとATEEZのコラボも、今回のコラボが1回きりではなく継続的に続くかどうかでファンからの見え方もまた大きく変わってくると言えるでしょう。
 

既に増え始めているK-POPとの様々なコラボ

J-POPのボーイズグループとK-POPのボーイズグループのトリリンガルでのコラボ楽曲リリースという意味では、今回の「Hush-Hush」は画期的な事例ですが、一方で昨年の紅白歌合戦におけるYOASOBIとNewJeansなどとの「アイドル」コラボに代表されるように、日本の音楽番組での日本のアーティストとK-POPのアーティストのコラボ出演自体は、もはや珍しい出来事ではないぐらい普通に実施されるようになっています。

また、日本のアーティストとK-POPのコラボという意味では、Number_iがコーチェラに出演した際にジャクソン・ワンさんとサプライズコラボをしたケースもありますし、GLAYがENHYPENのJAYさんとコラボをするなど、すでに両者の境界線は溶け始め、コラボが増える下地はできていると言えます。

今回のBE:FIRSTとATEEZのコラボが、BE:FIRSTが海外にもファンを増やすきっかけになり、ATEEZが日本でファンをさらに増やすきっかけになるのであれば、今後日本で同様の海外グループとのコラボが増える可能性は高いと言えます。

まずはBE:FIRSTとATEEZの「等価交換」コラボがどのような拡がりを見せていくのかに注目したいと思います。

この記事は、2024年7月14日Yahooニュース寄稿記事の全文転載です。

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タイミングが合う方は是非ご参加下さい。


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徳力基彦(tokuriki)
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