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Number_iとAwichのコーチェラ出演に学ぶ、日本の音楽の世界への広げ方

この記事は2024年4月16日Yahooニュース寄稿記事の全文転載です。

世界最大級の音楽フェスとして知られる「コーチェラ」において、日本人アーティストの活躍が続いています。

「コーチェラ」は、アメリカのカリフォルニア州で毎年開催されている音楽フェスで、その来場者数は1日で12万人を超えるとも言われており、YouTubeライブでも多くのパフォーマンスが視聴できることで有名です。
過去にはX JapanやPerfume、きゃりーぱみゅぱみゅさんなども出演している歴史があるのですが、今年はなんと日本から5組ものアーティストが出演するという日本の音楽界にとっても記念すべき年となりました。

その中でも、特に注目しておきたいのは、Number_iとAwichさんが出演することができた点です。

3組は事前に出演が発表済み

「コーチェラ」ではメインステージだけでなく、複数のステージで同時に様々なアーティストがパフォーマンスを展開するのが基本的な形になります。

今回、日本からは新しい学校のリーダーズ、YOASOBI、そして初音ミクの3組が、それぞれ自分達の単独のステージに出演することが事前に発表されていました。

新しい学校のリーダーズは、「ATARASHII GAKKO」として2021年に海外デビューを果たしており、2021年からアメリカのフェスに出演している経験豊富なグループです。

またYOASOBIは何と言っても昨年「アイドル」が世界的な大ヒットをして国際チャートで1位を獲得した実績もありますし、昨年アメリカでのフェスに出演し、今年は単独公演も予定しているアメリカでも人気急上昇のグループと言えます。

さらに初音ミクは、2020年の「コーチェラ」に出演予定だったのが、コロナ禍で断念した経緯があり、現在は北米ツアーも実施中ですので、順当な出演と言えるでしょう。
ちなみに、この3組に関しては、まだ今週末にも再度「コーチェラ」で出演がありますので、先週見逃したという方は是非生で視聴されることをお勧めします。
 

サプライズで発表されたNumber_iとAwichの出演

なお、この3組の出演に加えて、ファンや業界関係者にとって大きなサプライズとなったのが、「88rising Futres」という88risingの手掛けるステージに、新しい学校のリーダーズとYOASOBIに加えて、Number_iとAwichさんが出演するという発表でした。

(出典:88rising 公式SNS)

この88risingという会社は、新しい学校のリーダーズが所属していることでも日本ではお馴染みですが、アメリカを拠点にアジアのカルチャーを世界中に発信しているレーベルです。

日本のアーティストの海外のフェス出演の機会を多数提供してくれており、2022年の「コーチェラ」においても、彼らが手掛ける特別ステージに、宇多田ヒカルさんのサプライズ出演を成功させたことでも知られています。

そんな彼らが、今回アジアの未来の顔として紹介するべく7組のアーティストを選んだ中に、Number_iとAwichさんが選ばれたわけです。
 

世界進出を宣言しているからこそ用意された舞台

ここで注目したいのは、彼らが選ばれた背景です。
Number_iもAwichさんも共通しているのは、彼らが明確に世界進出を目指すことを宣言していた点です。

Number_iのメンバーは、世界を目指すために前の事務所を退所したことが知られていますし、Awichさんは昨年11月に明確に世界進出を宣言されていました。

これまでの日本のアーティストの世界進出と言えば、ある程度日本で成功を積み上げて、それから海外を目指すという展開や、海外進出用に英語曲を用意したりするのが一般的だったと思います。
特に今回のような海外のフェスの出演となると、当然宇多田ヒカルさんのような日本で大きな人気があるアーティストか、YOASOBIのように海外でのヒット曲があるアーティストが選ばれるのが当然と考える方が普通だと思います。

なんといってもNumber_iは、まだ今年の1月にデビュー曲をリリースしたばかりの新人グループですし、Awichさんも世界進出を去年の11月に宣言したばかりですから、一般的に考えるともう少し実績を積んだり、英語曲をリリースしてからフェスへの出演が実現すると考える方が多いでしょう。

しかし、今回88risingは、そうした2組に直接世界の舞台を用意することを選びました。
 

海外フェスに出演したからこそ見える世界

その88risingの新しいアーティストを世界に紹介するということへの力の入れ具合は、米国においての知名度では2組を上回るYOASOBIと新しい学校のリーダーズをあえて先に出演させ、新しい学校のリーダーズとコラボする形でAwichさんを出演させたことにも表れていたと感じます。

(出典:Coachella 公式YouTube)

また、Awichさんのステージでは最後に「Bad Bitch 美学 Remix」が展開。
ゆりやんレトリイバァさんも含む5人のBad Bitch 美学のメンバーがサプライズ出演して日本の女性ラッパーの日本語ラップのエネルギーを世界に披露する展開になりました。

(出典:Coachella 公式YouTube)

さらに、最も象徴的なシーンとなったのは、Number_iの2曲目の「GOAT」のパフォーマンスにおいて、世界的スターであるJackson Wangさんがサプライズでコラボ出演したことでしょう。

(出典:Coachella 公式YouTube)

Jackson Wangさんは、香港出身の世界的に知られるK-POPスターです。
Instagramのフォロワー数が3300万人を超えていると言えばその世界的な人気の凄さが少しは伝わるでしょうか?

Jackson wangさんは、昨年の「コーチェラ」にも出演され、XGの楽曲のリミックス版をパフォーマンスしたことで日本でも話題になりました。
今回は88risingが、あえて彼をサプライズゲストにすることで、Number_iにとっての初の海外スターとのコラボが「コーチェラ」で実現する展開になったわけです。

つまり、88risingのメッセージはハッキリしています。
もはや日本のアーティストにとっても、世界進出は憧れるものではなく、直接世界に挑戦してつかみ取るものだということです。
日本国内でファンを増やしたり、英語曲をリリースするという順番を経ていくものではなく、まず海を渡って挑戦してこそ見えてくるものがあるということです。
 

日本を出ることが最初の一歩

実際に、88risingに所属する新しい学校のリーダーズは、88risingと契約して2021年から海外で活動することで米国や世界のファンを増やし、それによって昨年日本でも大ブレイクすることができた、象徴的な成功事例と言えます。

新しい学校のリーダーズが所属するアソビシステムの中川さんによると、彼らがLAに行ったのはちょうどコロナ禍に入る直前で、いろんなコンサートが中止になり始めた時期だったそうです。
それでもLAに行って契約したことが、今の新しい学校のリーダーズの成功につながっていると言います。

新しい学校のリーダーズは日本語楽曲で米国でも成功していますから、Awichさんの日本語ラップや、Number_iの日本語楽曲が、そのまま米国で成功する可能性ももちろんあるわけです。

また、Travis Japanがアメリカズ・ゴット・タレントに出演して、米国レコード会社経由でデビューすることができたのも、彼らが日本でのキャリアを捨てて米国留学という選択をし、米国のダンスコンテストに挑戦して入賞するなどの実績を積んだからです。

もちろん、現在はYouTubeやTikTok、Spotifyなど音楽のプラットフォームは世界につながっており、YOASOBIの「アイドル」やCreepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」のように日本に居ながらにして世界でヒットする曲を生み出すことも可能な時代です。

ただ、YOASOBIに関しても、ジャカルタやLAなどの海外のフェスやライブに出演したことが、海外でのファンの熱量を高めることに着実に貢献していると聞きます。

実は、世界のファンを増やしたいのであれば、日本を出ることが最初の一歩とも言えるわけです。
 

「コーチェラ」出演でどんな景色が見えたのか

そういう意味で、今回88risingが4組もの日本人アーティストを「88rising Futures」のステージに送り出してくれたことには、数字以上に大きな意味があることは間違いありません。

(出典:88rising 公式SNS)

本気で世界に自分達の音楽を広げたいのであれば、「コーチェラ」のような世界的なフェスの舞台に積極的に挑戦し、海外のアーティストとのコラボやコミュニケーションを通じて、学ぶべきものがある、というのが88risingからNumber_iやAwichのような日本のアーティストへのメッセージと言えます。

今回、「コーチェラ」のステージに立った日本人アーティストの方々にも、間違いなくこれまで見えていなかった新しい景色が見えたはず。

(出典:88rising 公式SNS)

今回共演したアーティスト同士のコラボも今後期待されますし、「コーチェラ」以外の海外のフェスやライブに出演することも当然期待できるでしょう。
彼らの活躍を目の当たりにした他の日本人アーティストにもその熱は伝播しているでしょう。

今回の「コーチェラ」をきっかけに、日本のアーティストの活躍がさらに世界に飛躍していくことを楽しみにしたいと思います。

この記事は2024年4月16日Yahooニュース寄稿記事の全文転載です。


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