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日本政府も注力する「Web3」は、日本を再び輝かせるための技術になりえるのか
デジタル庁が「Web3.0研究会」を開催すると発表し、業界で注目されています。
これは河野デジタル大臣が発表したもののようですが、6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の方針に従い、総務省や経産省とも連携しながら議論を取りまとめる予定だそうです。
一般の方からすると、Web3.0やWeb3(ウェブスリー)と呼ばれるような概念に対して、わざわざ政府が研究会を開催するのはなぜなのか、良く分からないという方もおられるかもしれません。
一方で、政府や自民党の間ではこのWeb3を推進すること自体が、日本の成長戦略の柱になるという議論もあるのです。
概要をご紹介したいと思います。
議論が分かれるWeb3やWeb3.0の定義
Web3という言葉の概念については、歴史的にさまざまな有識者が定義をおこなっていたこともあり、業界の間でも議論が分かれている言葉です。
極端な事例としては、技術書の老舗として定評のあるインプレスから出版された「いちばんやさしいWeb3の教本」に、「内容に誤りが多い」と指摘が集まって炎上状態になっていた出来事があげられるでしょう。
現時点でのWeb3の議論では、イーサリアムの共同設立者であるギャビン・ウッドが、2014年に「ブロックチェーンに基づく分散型オンライン・エコシステム」を指して作った言葉を軸に、暗号資産などのトークン、NFT、DAOなど最近注目されている一連の技術の総称として使われることが多いようです。
Web2.0と定義される現在のインターネットにおいては、GoogleやFacebookなどの一部の企業が寡占的な影響力を持っていると言われています。
こうした現状をWeb3技術は変える可能性があるとみている方が少なくなく、Web3の普及によってインターネット上の勢力図が変わるという見方もあるわけです。
象徴的なのは、自民党の平議員が「Web2.0では敗れたがWeb3の勝機は十分」とインタビューで語っている点でしょう。
Web2.0の黎明期、日本でもさまざまなウェブサービス企業が誕生しましたが、検索やSNSなどの主要事業においてはGoogleやFacebookなどとの競争に勝つことができず、海外市場で存在感のある企業が少ないのが現状。
そこで、政府や自民党が注目しているのがWeb3というわけです。
岸田トークンはネタ扱いされたがWeb3は骨太の方針へ
自民党のWeb3に関する勉強会と言えば、5月に自民党の青年局の研修会で「岸田トークン」や「小泉トークン」が配布されるということが話題になったのが記憶に新しい方も少なくないでしょう。
総理の顔写真をそのままトークンにしたNFTの画像のインパクトは非常に大きく、ウソのニュースを配信して人気を博しているネットメディアの虚構新聞が、わざわざ「これは現実のニュースです」とツイートしてネタにされるほどでした。
【編集部】自民党青年局がNFTを活用した「岸田総理トークン」を配布する記事について、本紙報道とのご指摘をいただいておりますが、これは現実のニュースです。ご了承ください。https://t.co/oWyReblVV0
— 虚構新聞速報/編集部便り (@kyoko_np) May 28, 2022
ただ、自民党や政府内でのNFTやWeb3に対する検討は着実に進み、6月には日本政府の「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)」の中に「ブロックチェーン技術を基盤とするNFT(非代替性トークン)の利用等のWeb3.0の推進に向けた環境整備」が明記されることになります。
その後、7月には経産省に「Web3.0(ウェブ・スリー)政策推進室」が設置され、今回のデジタル庁の「Web3.0研究会」開催発表と、着実に検討が進んでいるのです。
日本が仮想通貨で世界1位だった時代も
こうした動きは、当然Web3に取り組む日本企業からも熱望されています。
実は、日本は2017年頃の仮想通貨ブームの黎明期において、取引額が世界1位だった時代がありました。
ブルームバークの集計によると、2017年10月〜12月の日本円による仮想通貨取引の世界シェアは55%にも上っていたそうです。
当時業界関係者に聞いた話では、この頃は金融庁も仮想通貨の発展に前向きな姿勢をもっており、日本が仮想通貨市場で世界を制すると豪語する関係者も少なくありませんでした。
それが2018年1月のコインチェック事件によって、一気に風向きが変わります。さまざまな仮想通貨の規制や監督姿勢が見直され、それとともに日本はリーダーの座から滑り落ちる結果となったわけです。
Web3で世界を目指す日本の企業も
ただ、全ての業界関係者がWeb3における日本の可能性を諦めたわけではありません。
特に代表的な存在として注目されているのが、ビットバンクに上場して話題になった「アスターネットワーク」でしょう。
「アスターネットワーク」はパブリックチェーンと呼ばれる、異なるブロックチェーンの相互接続を実現するための仕組みで、創業者の渡辺創太氏を中心に運営されている日本発のサービスです。
ただ現在の日本の規制環境では、ゼロからパブリックチェーンを立ち上げるのが難しいと判断され、シンガポールを拠点にステイクテクノロジーズという企業を立ち上げ、そのサービスを日本に逆輸入する形で日本参入を果たしているのです。
最も象徴的なのは、「アスターネットワーク」が上場するタイミングで展開した「Japan as No.1 AGAIN」という新聞広告です。
多くの企業/プロジェクトにご協力いただき、誠にありがとうございました
— Astar Network Japan 🇯🇵 (@AstarNetwork_JP) September 30, 2022
Twitter Trendで2位に入る等インパクトの残るものになりました。これを一過性のものにせず、Astarをグローバルweb3エコシステムとの架け橋として、日本のweb3が世界で存在感のあるものにできるよう、尽力します#web3ならできる pic.twitter.com/9BIfheoTW2
なんとこの広告には、Web3系のスタートアップだけでなく、電通や博報堂のような日本の大手企業、マイクロソフトやアクセンチュアのような外資系企業まで329もの企業が名を連ねているのです。
この広告と同時に「#web3ならできる」というハッシュタグを使った投稿キャンペーンも展開され、ツイッタートレンドで2位に入るなど、界隈での盛り上がりを見せていたようです。
この広告には日本をWeb3で再びナンバーワンにしようという趣旨の、下記のような宣言が綴られています。
かつて、この国の代名詞は「ナンバーワン」だった。
日本が世界をリードしていた時代。
それは、遠い過去の話か。
違う。
今、この国には再びチャンスが訪れている。
私たちは、強くそう思う。
渡辺創太氏のような日本のWeb3起業家は、日本のWeb3に対する現在の規制に対する問題提起をさまざまなメディアやイベントを通じて発信しており、現在の政府や自民党の動きはそれに対応したものとも言えるでしょう。
Web3は日本の柱の1つになれるのか
仮想通貨やNFTには、投機的な動きもまだまだ多く、詐欺やスパム行為も存在するのは現実です。
政府がこうした問題のある技術をサポートするという姿勢自体に批判的な方も少なくないようです。
自民党の青年部会が実施していた「岸田トークン」が、ツイッター上では格好の笑いのネタになってしまったように、実際にWeb3が日本を再び輝かせるような技術になるかどうかも懐疑的な人がまだまだ多いのは事実でしょう。
コインチェック事件のような騒動がまた起こってしまい、日本社会全体がWeb3に批判的に変わってしまう可能性も当然あります。
ただ、少なくとも「アスターネットワーク」や渡辺創太氏のような日本のWeb3の起業家は、日本とWeb3の未来を信じて活動をされていますし、政府や自民党もその夢に懸けようとしているのが現状と言えるかもしれません。
実はインターネットの黎明期も同様に玉石混淆の混乱期があったことを考えれば、現在のWeb3の混乱の中から、同様に巨大な企業が誕生する可能性は低くはないとも言えるでしょう。
はたして現在の日本のWeb3企業の中から、将来海外でも注目される大手企業が育ってくるのか。
引き続き注目したいと思います。
この記事は2022年10月3日Yahooニュース個人寄稿記事の全文転載です。
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