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日本を代表する3人の名映画監督によるトークンファンディングは、日本の映画の作り方を変えるか

「SPEC」の堤幸彦監督、「踊る大捜査線」の本広克行監督、「キサラギ」の佐藤祐市監督という、日本の名物映画監督3名がチームを組んで、「スーパーサピエンス」という新しいプロジェクトに挑戦されるということで、業界のちょっとした注目を集めています。

特に今回のプロジェクトが注目されるのが、「 日本の“E”エンタメをひっくり返す!」というキーワードにあるように、コンテンツの作り方から収益モデルまで、これまでの映像作りの常識とは真逆のアプローチで作品作りを開始する点です。

実際に、スーパーサピエンスのサイトを見に行くと、「DAO」に「クリエイターエコノミー」、「WEBTOON」に「トークンファンディング」など、IT業界の話題のキーワードが目白押し。さらには、NFTも連動した形でプロジェクトが実施される形になっており、あまり最先端のIT知識がない方からすると、少しハードルが高いプロジェクトに見えてしまうかもしれません。

しかし、すでにプロジェクトのクラウドファンディングには、募集開始から数日で450人以上の支援者から2000万を超える資金が集まっているようです。

映画とクラウドファンディング

クラウドファンディングを通じた映画作りと言えば、草分けの成功事例として有名なのが「この世界の片隅に」でしょう。2015年に実施されたこのクラウドファンディングは、3900万円をあつめ、興行収入25億円を超える大ヒットとなりました。

また、2018年に大きな話題になった映画「カメラを止めるな!」も300万円の制作費の半分をクラウドファンディングで集めたことが知られています。

ただ、まだまだこうしたクラウドファンディングを起点にした映画制作は難しいというのが現実で、一般的には日本では「製作委員会方式」と呼ばれる関係企業でお金を出しあう方式が中心になっていると言われています。

この「製作委員会方式」では、映画監督が本当に作りたい作品を作りにくい、という現状も、今回の「スーパーサピエンス」プロジェクト開始の背景にあるようです。

自立分散型組織DAOとしての運営

今回の「スーパーサピエンス」プロジェクトでは、トークンやNFTの配布が可能なフィナンシェの仕組みを利用することにより、単純にクラウドファンディングで資金だけを募るのではなく、支援に対してトークンやNFTを配布することで支援者をプロジェクトメンバーとして巻き込む形で、DAO(Decentralized Autonomous Organization)と呼ばれる「自律分散型組織」の形で始動しているのが最もユニークな点と言えるでしょう。

従来の映画製作委員会方式の映画が、出資企業の資金によって映画を製作するスタイルなのに対して、この「スーパーサピエンス」のプロジェクトでは、トークンを購入する形で支援した支援者が、資金提供者でもありプロジェクトメンバーとしてもプロジェクトに携わっていくスタイルになるわけです。

筆者もこのプロジェクトに支援者として早速参加してみましたが、すでにチャットルームには監督自らのコメントも書き込まれ、大勢の支援者がアイデア出しをするなど盛り上がっているのが印象的でした。

まずはWEBTOON製作から

さらに今回の「スーパーサピエンス」では、単純に映像作品を作るのではなく、まずは「WEBTOON」というスマホに最適化されたウェブ漫画の製作から入るそうです。

韓国ではWEBTOONが原作の映像作品が次々にヒットしていることは有名で、そのアプローチを取り入れるということになります。
19日に実施された発表会でも、さっそくWEBTOONのサンプルが公開されていました。

もちろん、今回実際に製作されるコンテンツがヒットすることになるのか、海外でも受け入れられるような形に拡がるのかは作品次第になりますから、今のところは全く分かりません。

トークンの配布やNFTなどは、少しバブルになっている印象もあり、まだまだ斜めに見ている人も多いのが現実でしょう。

ただ、こうした新しい仕組みを使って、堤幸彦監督、本広克行監督、佐藤祐市監督のような実績のあるクリエイターが新しい挑戦をはじめることは、日本の映画だけでなく日本のエンタメ業界に一石を投じることになるはず。

「スーパーサピエンス」の今後の展開に注目したいと思います。

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この記事は2022年1月23日Yahooニュース個人寄稿記事の全文転載です。


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徳力基彦(tokuriki)
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