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なぜP&GとパンテーンのV字回復事例を、日本企業の方々に本気で学んで欲しいのか

元P&Gの大倉さんが、noteに寄稿された大作記事は、もう皆さんお読みになりましたでしょうか。

8月23日のイベントでご一緒させて頂くこともあり、私も記事公開前に拝読させて頂き、noteの書評も寄稿させていただきました。

あまりに大作で、ほぼそのまま書籍になりそうな内容なので、初見で全てを理解できる人は少ないだろうなぁと思いますし、私自身、全部を理解できているわけでは全くないのですが。

P&Gと大倉さんが成し遂げたパンテーンのV字回復の事例は、できるだけ多くの人に知ってもらいたいので、微力ながら私視点の解説記事を書いておきたいと思います。


今回のパンテーンの #HairWeGo のキャンペーンは、今回のカンヌライオンズでPR部門でシルバーとブロンズをダブル受賞という快挙を達成されていますし、多くの方が何らかの形で目にされているんじゃないかと思います。

シンボル的なもので言うと、生まれつき髪が茶色い中高生に学校が提出を求めることがある地毛証明書などの、謎校則に問題提起をした「#この髪どうしてダメですか

就活において、女性が黒いひっつめ髪にしなければならないというような空気がある日本の就職活動たいして、139もの企業と一緒に問題提起をした「#令和の就活ヘアをもっと自由に」があげられるでしょう。


今でこそ、これが成功事例だというのが広く認知されているので、普通に良くできたキャンペーンだな、とか思う人も少なくないと思うんですけど。
是非皆さんに、昔の常識を思い出して欲しいんですよね。

パンテーンですよ。

シャンプーですよ。

皆さんは、シャンプーのテレビCMって言ったら、どういうものを思い出しますか?

普通は、綺麗な髪の有名な女優さんが、たばねていた長い髪をほどくのがアップになるとか、長い髪をゆらしながら歩いて、最後に商品画像がドーンと出るCMとかが普通だったと思うんですよ。
あとは、「ノンシリコン」とか「ナチュラル」とかのシャンプーの成分訴求ですよね。

それが、上記のパンテーンの動画では商品画像すら出てきません。

これ、普通の企業だとCSR活動とかで作るやつであって、ブランドの売上にコミットしている活動ではないやつだと、つい思っちゃいますよね。

でも、大倉さん達は、このキャンペーンによって日本市場で苦戦していたパンテーンの売り上げをV字回復させることに成功したわけです。

しかも、それがたまたまバズったから売れた、とかではなく、パンテーンのブランドパーパスに立ち返り、パンテーンがやるべきことを現代の日本女性に合わせて「あなたらしい髪の美しさを通して、すべての人の前向きな一歩をサポートする」と定義したところからはじまっていて、ちゃんと論理的にプランされているというのが凄いところです。

最初から、このキャンペーンによって売上を回復することができるという確信を持って、従来のシャンプー市場であれば一見非常識だったアプローチに取り組まれているんですよね。

大倉さんは、その思考回路のかなりの部分を、冒頭の記事で明らかにしてくれています。
もちろん、そのプロセスだけ学んだところで、同じ規模の成功は普通の人には無理だからこそ、惜しげもなくその考え方の一部を明らかにしてくれているんだとは思いますが。

記事にも書かれているとおり「世の中で話題になるキャンペーンをやればビジネスが成功するわけではない」ということでもあり、逆に言うと、「きちんと企業やブランドのパーパスがあれば、そこに立ち返ることでビジネスを浮上させることは可能」だと示してくれたということだと思っています。


で、この視点は、これから全てのブランドにとってますます大事になってくると感じています。

ある意味、普通なら自動車がカッコ良く高速道路や山道を疾走するテレビCMを作るのが王道の自動車業界において、トヨタがトヨタイムズを紹介するテレビCMにシフトしているのもその1つかもしれません。

スポーツシューズを作るNIKEが、スニーカーの機能訴求とは別に、コリンキャパニックや、BlackLivesMatterのような社会問題を正面から支援しているのもその1つでしょう。

また、D2Cのブランドが、SNSやnoteで自らの思いを発信することで、多くのファンに支援してもらえるようになるサイクルが回り始めているのもその1つでしょう。

パンテーンが、自らの商品訴求をするキャンペーンではなく、女性の髪を自由にするための活動を実際に行ったことで、顧客である女性達がパンテーンを実際に購入するようになったというのは、本当にすごいことでもあり、勇気をもらえる話だと感じています。

ついつい私たちは「広告」や「プロモーション」というと、商品そのものを宣伝しなければいけないと思い込んでしまうわけですが。

実は顧客が商品を選択する理由ってもっと複雑で。
商品や企業のメッセージや行動によって、顧客の「心」が動いたのかどうかを、ちゃんと考えなければいけないんだと改めて思う事例です。

多くの日本の方々にも大倉さんの事例を学んでいただけると、多分、同じような日本の社会を良い方向に変えてくれるキャンペーンがたくさん生まれてくれるんじゃないかと勝手に期待していたりしますし。

個人的には日本企業は実はもともと「三方良し」という言葉もあるように、こういうアプローチの方が向いているのではないかと思ったりもする次第です。

ということで、こちらの記事は必読ですので、是非どうぞ。


ちなみに、8月23日(月)のイベントでは、こうしたアプローチを取る際に苦労した話も大倉さんに聞いてみたいなと思っていますので、直接自分も質問してみたいという方は是非どうぞ。


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徳力基彦(tokuriki)
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