もうひとつのラブストーリー(23)「仲良く発熱」
金曜日の夕方に仕事を終えて帰ると、アパートの鍵が開いていまし。
また「ちえ」が来ているなと思ってドアを開けると⋯。
「ちえ」が私の布団に横になっていました。
「「ちえ」起きろ」と声をかけても起きません。
額を触ると熱ぽく感じました。
体温計で計ってみると38度も熱がありました。
急いで薬局に行き、風邪薬と栄養ドリンクを買って来て「ちえ」に飲ませました。
「いつから熱が出たんだ」と聞くと、家にいる時から調子が悪かったようです。
「体調が悪い時に無理して来なくても良いのに」
「だって結婚したら体調が悪くても私が家事やるんだよ」
「奥さんの練習だと思って来たの⋯」
「バカだなあ⋯。結婚しても体調が悪ければ俺だって家事手伝うのに⋯」
「夕ご飯は作ってあるからね⋯」
「「ちえ」俺に風邪移せ。移せば風邪なんか治るから」
「ダメだよ⋯。「トクちゃん」に風邪なんか移せないよ⋯」
「俺の方が「ちえ」より体力あるから大丈夫だって」と言って無理矢理キスしました。
「それより、今日、家に帰れるか?」
「泊まっててっも良いぞ」
「じゃあ、お母さんに電話してみるね」
ということでアパートに泊まっていくことになりました。
その晩は、二人で布団にくるまって眠りました。
翌日の朝に「ちえ」に起こされました。
「私、だいぶ調子良くなったよ。熱も下がったから」
「そうか、良かったな」
「「トクちゃん」大丈夫?顔色良くないみたいだけど⋯」
「う~ん、なんかダルい⋯」
「熱、計ってみようか」
「あー。「トクちゃん」熱38.5分もあるよ⋯」
「そうか⋯。だからダルいのか⋯」
「私の風邪、「トクちゃん」に移しちゃったのかなあ⋯」
「良いよ。「それで「ちえ」の風邪が治ったんなら」
「ゴメンね⋯」
「良いって、俺が無理矢理移させたんだから」
「昨日、買ってきた風邪薬飲んでみるよ」
「それだけで大丈夫?」
「うん、大丈夫だって。日頃鍛えてるからな」
「だと良いんだけど⋯」
「とりあえず、私、スーパーで買い物してくるね」
「「ちえ」こそ大丈夫か?熱下がったばっかだろ?」
「うん、もう大丈夫だよ。なんか食べる物買って来るね」
「今日も「トクちゃん」ちに泊まってくから」
「そんなことすると、また「ちえ」に風邪が移っちゃうぞ」
「大丈夫だよ。私は免疫ができてるから」
「そうか⋯、なら良いんだけど⋯」
「ちえ」がスーパーで大量のパンやジュースを買って来てくれました。
「こんなに買い込んじゃった」
「これじゃあ2、3日分の食料大丈夫だな(笑)」
「じゃあ俺、パン食べたら、もう少し横になるわ」
「うん、ゆっくり休んでて良いよ」
「「ちえ」も病み上がりなんだから無理するなよ」
「うん、分かってる」
「これも奥さんの練習になるからね(笑)」
「奥さんも大変だな(笑)」
「「ちえ」は、こっちの部屋でテレビでも見てろよ、俺は、トレーニングマシンの横で寝てるから」
「できるだけ離れてた方が良いだろう?」
「そうかなあ⋯」
「私だけ、こっちの部屋だとさみしいんだけどなあ⋯」
「じゃあ、抱き合って寝るか?」
「うん!」
「ってウソだって。やっぱ離れてた方が良いって」
「そうかなあ⋯。つまんないなあ⋯」
「ひと眠りすれば熱も下がると思うから、下がったら一緒に寝よう」
「うん!調子悪かったら、いつでも言ってね」
「うん、そうするよ。おやすみ」
風邪薬が効いたのか、夕方には私の熱も下がりました。
「「ちえ」俺の熱も下がったから無理して泊まってかなくても良いぞ」
「大丈夫だよ。お母さんも良いって言ってくれたから、今日は泊まってく」
「そっかあ⋯」
「あー、「トクちゃん」の「そっかあ⋯」が出た。もう大丈夫だね(笑)」
「アハハ」
その晩も二人で抱き合って眠りにつきました。
二人で仲良く発熱した時のお話しでした。
つづく