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「ちえ」(52)「浮気したでしょ」
土曜日の10時に、いつものように「ちえ」を家まで迎えに行きました。
しかし、「ちえ」の顔が、あきらかに不機嫌でした。
「なあ、なんか怒ってる?」
「アパートに着いたら話すよ⋯」
アパートに到着すると、すぐに「トクちゃん浮気したでしょ」と言われました。
「浮気⋯」
「ウソついてもダメだからね」
「Aちゃんが、トクちゃんが若い女の子と楽しそうにファミレスから出て来たのを見てるんだから」
「それって、いつの話?」
「この前の木曜日のこと」
「ああ、あれか⋯」
「認めるんだね?」
「確かに、木曜日にファミレス行ったよ」
「でも、2人じゃなくて4人で行ったんだ」
「4人?ってどう言うこと?」
「「ちえ」には、まだ言ってなかったけど、選挙手当てが出たんだよ」
「ほら、先週の日曜日に選挙あったろ?」
「俺、選挙管理委員会の仕事もしてるからさあ、その前の週も、ずっと残業してたじゃん」
「うん、それは知ってるけど⋯」
「それと、土曜日と日曜日も仕事だったろ。日曜日なんか仕事終わったの夜中の12時過ぎたからな⋯」
「その手当てが木曜日に出たんだよ」
「それで、一緒に仕事してる後輩に「奢ってやるから飯食いに行こう」って言ったんだよ」
「でも、男2人で行くのもなんだなって思ってさ「お前の好きな子連れて来て良いよ」って言ったんだよ」
「そしたら、課は違うけど、同じフロアで働いてる女の子2人連れて来たんだよな」
「それで、その内の1人に気があるって言ったからさあ、「じゃあ車2台で行こう」ってことになったの」
「ここまで、分かった?」
「うん、トクちゃんが女の子を連れて来たんじゃないんだね?」
「うん、でも、俺の車に女の子を乗せたのは確かなんだよね」
「その後輩が、気になるって子を自分の車に乗せたから」
「それで4人でファミレス行ったんだけど、その後輩がさあ、「その気になる子をデートに誘いたい」って言ってきたから、「じゃあ頑張れよ」って言ったんだよ」
「だから、ファミレスから出て来た時には、確かに2人で出て来たんだよ」
「その後はどうしたの?」
「真っ直ぐ帰って来たよ。だから、9時くらいかな⋯」
「6時くらいに市役所出て、ファミレスに7時くらいに着いて、それから飯食って話しして⋯」
「やっぱ、市役所の駐車場に着いたのが9時くらいだったと思うな」
「それってホントだよね?」
「ホントだよ」
「俺の車に乗せた子って、まだ18歳の女の子だよ」
「今年の新採の子でさあ、高卒だから」
「トクちゃん、若い子好きだから⋯」
「若い女の子好きかもしんないけど、さすがに18歳じゃあな、俺も、そこまで飢えてないって(笑)」
「ホントにホントだよね?」
「トクちゃん浮気してないんだよね?」
「ホントだよ。俺のこと信じられないか?」
「そう言うワケじゃないけど⋯」
「俺のことよりAさんこと信じるのか?」
「俺のこと信じないなら、今日は帰れよ」
「今から送っててやるから」
「分かった信じるよ」
「ホントか?俺、ウソついてるかもしんないぞ」
「大丈夫。トクちゃんウソつくと鼻ヒクヒクさせるから」
「俺、今、鼻ヒクヒクさせてるか?」
「ううん、させてない。だから信じるよ」
「ゴメンね。疑っちゃって⋯」
「俺も悪かったよ。先に「ちえ」に奢ってやるべきだったな」
「俺も、たまには先輩ヅラしたかったんだよな」
「あ、それでさあ、選挙手当まだ、だいぶ残ってんだよ」
「このお金で飯食いに行こ。それで残りのお金は2人の財布に入れて良いから」
「それはダメだよ。トクちゃんが働いたお金だもん。2人の財布には入れられないよ」
「良いって。だって、どうせ結婚したら、そう なるんだから」
「待てよ、結婚しても、選挙手当みたいな臨時収入は俺がもらっても良いか?」
「給料は全額、「ちえ」に渡すから」
「トクちゃ~ん。ホントにゴメンね、変なこと言って」
「良いって、それより今日は、お泊まりバック持って来なかったんだろ?」
「うん、トクちゃん浮気したと思ってたから⋯」
「それで、今はどうなんだよ?泊まりたいか?」
「うん、泊まりたい」
「良し、じゃあ、とりあえず飯食いに行こ」
つづく
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