アニメ『陰の実力者になりたくて!』を視聴した感想
結構評判が良さそうだったので『陰の実力者になりたくて!』というアニメを見てみた。正直自分には合わないと感じたが、せっかくなのでその合わなさを考察しつつ感想を書いていきたいと思う。
この作品はノリについていける部分とついていけない部分がある。『ティアムーン帝国物語』のような勘違い系でもあるんだろうけどやってることがあまりにも大きすぎて「ちょっと無理があるのでは?」と思ってしまう。ただその無理っぽさに目をつむってノリと勢いだけ楽しむというのがこの作品なのだろう。ただノリが個人的に全然合わないのでまったく良さを実感できない。
主人公の陰の実力者でいたい気持ちやモブでありたいという気持ちがよくわからない。前者は百歩譲って想像の余地があるけど、後者に関しては本当に疑問しか浮かばない。そのため主人公があえてモブに徹しているシーンを見るとただ困惑してしまう。単なるギャグということなんだろうけど主人公の趣向があまりに突飛すぎてついていけない感じがするのだ。
もしかするとこういった系列のアニメやライトノベルを好む人たちの界隈において「モブ」という言葉自体になにかしら共有されているお約束みたいなものが含まれているのだろうか?界隈専用の文脈を理解できれば「そういうやつね」と意味が通じるというような感じで通じる人には通じる面白さなのかもしれない。
実力を隠して立ち回るという作品は多々あるが、たいていは目立つと叩かれてデメリットが大きいからということがはっきりと明示される。そのデメリットを受け手が理解し、違和感なく納得できるから共感できるのである。対してこの作品の場合、実力を隠す理由が主人公の中二病という点で説明されているのでいまいち説得力に欠ける。もしかするとそういった作品多数視聴し実力を隠す作品における文脈のテンプレが積み重なった結果として、実力を隠す納得できる理由がなくとも「そういうやつね」と納得できる人たちが一定数いるから受け入れられているのかもしれない。ただ自分としてはやはりついていけない面が大きい。
あと主人公の行動理由も納得がいかずどうしても人間味が感じられない。このアニメの主人公は一貫して中二病的なかっこよさに対しての憧れから行動する。そして終始その欲求に基づいて行動するので大きなことをしている割に主人公の葛藤がなさすぎて安っぽく見えてしまう。シェリーの父を殺したときもシェリーの前ですら飄々としているので流石に違和感がある。シェリーの父は確かに悪人ではあるが、だとしても主人公の感情がほとんど動かないのはやはり異様。少なからず人格が破綻しているという理由づけもあるのかもしれないが、だとしてもコメディ作品として見る分にはノイズが大きいと思う。
中二病要素かつコメディ的な話だけで構成されているのであればまだ面白さとしては理解できるのだが、シリアスな要素が「とりあえず入れときました!」というくらいに軽く雑な感じで差し込まれるのでどうしてもノイズに感じてしまうのである。
様々な細かい点に目を瞑ってノリと中二病のコメディ感を楽しむ作品だということはわかるけど、どうしてもノイズや共感できないポイントが多すぎて楽しめなかった。現在10話まで視聴したのでもう少し観てみようかと思うが最後まで観るかはわからない。ただ評価している人は多いのでどういった点に良さを感じているかもっと理解したい気持ちはある。わからなすぎて異文化を感じるレベルなのでこの差異をもっと詳細に理解し言語化してみたい。