IMAGINE PEACE 〜1981年、オノ・ヨーコからのメッセージ
WDRAC(戦災復興支援センター)アドベント・カレンダーに寄せて
この季節になると、毎年必ず繰り返し聴く曲がある。
ベタで申し訳ないが、ジョン・レノンの「Happy Xmas (War is Over)」だ。
僕はクリスマスソングというジャンルが大好きで、「カセットテープ」の時代から毎年クリスマスソングを集めたオリジナルベストを作るほどだったのだが、このジョンの名曲は、毎回そこにリストアップされていた。
そして今年、2022年。ロシアがウクライナに侵攻を開始してから初めてのクリスマス。今年ほどこの歌の意味を反芻する年はないだろう。
ジョン・レノンと結婚したばかりのオノ・ヨーコのふたりが“WAR IS OVER “IF YOU WANT IT”(あなたが望めば戦争は終わる)と、世界11都市のメディアにメッセージ広告を発信したのは1969年。そしてこの曲が発表されたのが1971年だ。僕がまだ小学校に上る前のことなので、当時のことは当然覚えていない。ただ「ベトナム戦争」という言葉は家族がよく口にしていたのを覚えている。
昭和2年生まれの僕の父は長崎育ちで、原爆投下の頃には熊本の旧制高校の寮にいたため直接の被爆は免れたものの、原爆投下の数日後には自宅に戻って街の惨状を目にしたという。幸い家族に死者はなかったが、父の妹は全身にガラスの破片を浴び、また小学校以来の親友を含む多くの友人を亡くしたという。
そんな話を子供の頃から幾度となく聞かされていた僕は、50余年の人生を通して色々と支持する政党や政策は変わっても、「反戦」という想いだけは一貫して持ち続けている。だから、中学生になってようやく先述の曲(中学生でもわかるシンプルな言葉で書かれたストレートなメッセージ!)に出会ったときのインパクトは今も鮮明に覚えている。
オノ・ヨーコは、そのメッセージ広告以降、何度かメディアを使ったメッセージを出している。1998年(コソボ紛争の頃だろうか)にも同じ「WAR IS OVER “IF YOU WANT IT” 」のビルボードを出しているし、そして今年2022年3月にも世界7カ国のデジタルスクリーンをジャックして「IMAGINE PEACE(平和な世界を想像してごらん)」のメッセージを発信していた。
しかし、僕個人の記憶に一番深く残っているオノ・ヨーコのメッセージは、1981年1月、ジョンが亡くなった20日後に世界の新聞に出した「感謝をこめて」というメッセージ広告だ。僕は中学3年生。それまで「元ビートルズの有名アーティスト」に過ぎなかったジョンが、僕の中で特別な存在に変わった瞬間だった。
夢物語とも言われそうなジョンとヨーコの描いた理想は、15歳の僕の心を捉えた。
写真は、実際に僕が保存してきた新聞の実物だ。実家が取り壊されるまでの10年以上の間、ずっと自室の壁に貼ってあったのでめちゃくちゃ変色している。その後、結婚して子供が生まれても捨てられずにずっと押入れに保管してきた、ちょっとした僕の「宝物」だ。
僕の会社クラウドボックスでは「デザインで、もっと愛と感謝を(想いを伝えることで、愛と感謝の循環を広げていく)」というミッションを掲げている。この「愛と感謝の循環」というイメージは、今思えば、この新聞広告から始まったのかもしれない(と、今この文章を書いていて思い当たってしまった)。
この原稿を書いているのは12月7日。あと4時間もするとジョンの命日の12月8日を迎えることになる。
あれから42年。人類はまだ「それぞれ一人の人を愛するだけ」を手に入れることができず、諍いを続けている。狂気に陥ることを防げないでいる。
クリスマスが来るというのに、まだ爆音に怯えて眠れない夜を過ごしている人がいる。家族に会えない人がいる。憎しみの連鎖は拡がり続けている。
15歳の僕が言う。
みんなが、それぞれ一人の人を愛するだけでいいのに。
あれから42年も経ったのに、どうしてそんなこともできるようになってないの?
本当に誰かを愛していたら、必要なのは憎しみではなく、
争いではなく、愛と信頼だということがわかるはずでしょう?
いつまで人間はこんなことを繰り返しているの?
War is over!
If you want it
War is over! Now!
誰もが、大切な人だけを想って
安らかに過ごせる日々が、いつかきますように。
Merry Christmas.
この文章は、WDRAC(戦災復興支援センター)の2022年アドベント・カレンダーに寄せるメッセージとして書かれました。
WDRACは、「支援する人を支援する」というスローガンで、【戦災の現地で危機的状況にある人たちを一人の市民として支援している方々】を支援する団体です。特定の国家・思想・信仰に偏らずに、市民から市民へ、顔が見える支援を続けていることが特徴です。徳永は、そのウェブサイトやポスターを制作するというかたちで活動に関わらせてもらっています。
興味を持っていただけた方は、ぜひ、ウェブサイトを御覧ください。
WDRAC 戦災復興支援センター
https://wdrac.org/
WDRACアドベントカレンダー2022
https://adventar.org/calendars/7686
(この原稿を書いている時点でまだ公開はされていませんが、もしかするとWDRACメンバー・トパさんのアドベントカレンダー投稿とネタまるかぶりになるかもしれません…すみません…)