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ふれあい文庫との出会い

前号か前々号かの暮しの手帖で全盲の女性、岩田美津子さんの記事に出会った。

彼女は「見える」子どもを持ち、子どもたちが読んでほしいと絵本を持ってくるたびに、同じ物語を共有できないことにやるせなさを感じていた。これがてんやく絵本の始まりだ。
絵本の文字には点字を貼り、絵本の絵には絵の形のビニールシートを上から貼る。お会いした時「失礼かもしれませんが、絵に貼ったビニールシートは触って何が描いてあるかわかるんですか?」と尋ねたら、彼女はあっけらかんと「わかる時もあるけれど、わからなくて想像で補う時もある。指で触って想像した絵は見える人の見た絵とは違う可能性がある。でもそれでいいと思っている」と答えた。

目の見える人と見えない人が一冊の同じ絵本を共有できるということが、私にはとても豊かなことに思えた。私とあなたがこの絵本から感じ取ることが違うように、私と彼女の感じ取り方も違うかもしれない。でも絵本の世界はどんな感じ方も受け入れる懐の深い場所だと思う。そこで一緒に大人も子どもも見える人も見えない人も遊べることは素晴らしいことだ。

私は彼女の書いた別の本も読み、彼女の前向きなオーラに一層強く惹かれた。この人と関わってみたい。

私はもちろんふれあい文庫のサイトも訪問したのだが、ボランティアの方が20年前に作られたというそのサイトは正直わかりやすいとは言いにくかった。(とは言えそのサイトがあってくれたおかげで私はこの活動を開始できた)
メールで感想を送りたかったけれど、メールアドレスもお問い合わせフォームもなかった。
弱小Webナントカな私でも、力になれることがあるのではないかと思った。
何年ぶりかわからないけれど、私はお気に入りのレターセットを引っ張り出してきて手紙を書いた。(その意味ではメールアドレスがなかったことはいいことだったのかもしれない。気軽に言葉を伝えられる技術は素敵だけど、私の真摯な気持ちを送るにはメールは軽すぎたかもしれない)

私は目の見えない人に手紙を送るのは初めてだったので、誰かが代読してくれることはもちろん期待していたのだけど名前ぐらいは点字で送りたいと思い、点字器を買った。記憶に残りたいと思い、アロマオイルも仕込んだ。手紙は便箋6枚に及んだ。

手紙を送って3日ほどした後、彼女から電話がかかってきた。
想像通りパワフルでよく話す人だった。かといって押し付けがましいところはなく、私は彼女のことがすぐに好きになった。

つづく!

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