見出し画像

「学びたいものがなければ無駄!」――大学に行かない方が賢い選択?早く社会に出ることの真の価値とは?


こんにちは。私は現在チェコの医学部に通っている日本人医学生です。ここに至るまでの道のりは決して「普通」ではありません。実は私は高校生のとき、「これ以上勉強したくない」という強い思いから大学には行きませんでした。当時は、「学びたいものがないのに大学に行くなんて無意味だ」と感じていたんです。だから、私はすぐに社会に出て働き、現実に向き合うことが良い選択肢だと思っていました。

この考えは、今も変わっていません。「大学に行かなければならない」という社会のプレッシャーに反発する気持ちは、今でもあります。とはいえ、私は今医学部に通っている。なぜか?それは、医師になるためには医学部を卒業し、国家試験を受けなければならないという厳然たる事実があるからです。医学部のように専門職に就くためには資格が必要ですが、そうでなければ大学に行くことが本当に価値ある選択なのか?これは疑問です。

今回は、「大学進学は本当にペイアウトできるのか?」という問いを徹底的に掘り下げていきます。日本や世界各国の現状、そして大学に行かずに社会に出る選択がどれだけ賢明なのかを、データや論文を交えながら解説していきます。

大学進学の現状:日本でのペイアウトは?

まず、大学進学が日本でどのような意味を持つのかを見ていきましょう。近年、日本の大学進学率は上昇しています。文部科学省の統計によれば、2023年の大学進学率は約55%です。つまり、日本の若者の過半数が大学に進学しているわけです。では、この大学進学が本当に「ペイアウト」できているのか?

**ペイアウト(費用対効果)**の観点から考えると、ここで注目すべきデータがあります。労働政策研究・研修機構の調査によると、大卒者の生涯賃金は約2億円、対して高卒者の生涯賃金は約1.5億円です。一見、大卒の方が収入は高く見えますが、ここには大学にかかる学費や時間のコストが含まれていません。大学の学費や生活費を合計すると、4年間で約400万円から1000万円ほどのコストがかかるのが現実です。また、その間の労働機会を失う「機会費用」も無視できません。

これらを考慮に入れると、必ずしも大学進学がペイアウトできるとは限らないのです。特に、進学したものの明確な目標や興味がないまま卒業した場合、大学で得た知識やスキルが職業に直接的に結びつかないケースも多いです。

つまり、「学びたいものがないのに大学に行くのは無意味だ」と感じている人にとって、大学進学が必ずしも経済的に得策とは言えないというのが現実です。

世界的には大学進学はどうなのか?

では、日本以外の国々ではどうでしょうか?世界的な視点で見ても、大学進学がペイアウトしているのかどうかは、地域によって大きく異なります。

例えば、アメリカでは大学進学率が非常に高く、大学進学が当たり前の選択肢とされています。しかし、アメリカでは学費の高騰が問題となっており、学生ローンの返済問題が深刻です。Federal Reserve Bankのデータによると、2023年現在、アメリカの学生ローン残高は約1.75兆ドルにも達しており、大学を卒業しても多額の借金を背負う学生が少なくありません。

一方で、ドイツやスカンジナビア諸国では、大学の授業料が無料または非常に低いため、ペイアウトがしやすい状況にあります。特にドイツでは、学費が無料であることから、多くの学生が大学進学を選び、経済的な負担を感じることなく高等教育を受けられます。このように、国によって大学進学のコストとリターンは大きく異なるのです。

また、面白いのは、オーストラリアやニュージーランドなどの国では、大学進学後にしばらくしてキャリアチェンジをする人が増えている点です。これらの国では、大学で得たスキルが直接的な収入向上に結びつかないことが多いため、大学卒業後にスキルを再構築し、他の職業に転向する人も少なくありません。つまり、大学卒業がそのまま成功に直結する時代ではないということです。

医学部は例外?資格が必要な職業の特殊性

一方で、私が医学部に通っている理由はシンプルです。医師免許を取得するためには、どうしても大学を卒業しなければならないからです。医師という職業は、資格が必須であり、その資格を得るためには大学での学びが不可欠です。

医学部のように、専門職に就くためにどうしても大学を卒業しなければならない職業は、例外的な存在です。医師、弁護士、建築士など、専門資格が必要な職業は、大学教育がそのままキャリアに直結します。そのため、医学部に通うことには明確なペイアウトの理由があります。

医学的にも、長い教育期間を経て得る知識や技術は非常に高度で、現場での対応力に直結します。医学部での学びは、ただ座学で知識を詰め込むだけでなく、臨床実習や患者対応を通じた実践的なスキルの習得が求められます。このため、医学部は卒業しないと資格が取れないという仕組みが存在しているわけです。

しかし、大学に行かないと「絶対に」成功できないわけではありません。多くの業界では、実務経験や社会に出てからの学びが大きな武器となります。

社会に早く出ることの価値

私は大学に行かず、早く社会に出ることも非常に価値があると思っています。実際、社会に出て働くことで得られる経験は、大学での学びとは別次元の学びです。

例えば、社会に出てすぐに働き始めた場合、現場でのリアルなフィードバックや、実務を通じて身に付けるスキルは、大学の教室では得られないものです。特に、自営業やスタートアップを立ち上げる場合、社会に早く出て実践を重ねることは非常に重要です。

よく言うように、「経験は最強の教育」です。ビジネスの世界では、理論だけでなく、実際に動いてみて初めて得られる学びが大きな価値を持ちます。失敗を恐れずに、早い段階で社会に出て、試行錯誤を繰り返すことが、結果として成功への近道となるのです。

結論:大学進学はペイアウトできるのか?

最終的に、「大学進学はペイアウトできるのか?」という問いに対する答えは「場合による」ということです。明確な目的や学びたいものがある場合、大学進学は非常に価値があります。特に、資格が必要な専門職に就くためには、大学卒業が不可欠です。しかし、そうでない場合、大学に行くことが必ずしも成功に直結するわけではありません。

もし、学びたいものがない、もしくは社会に早く出て経験を積みたいというのであれば、無理に大学に行く必要はないでしょう。社会での実務経験が大きな武器になることも多く、むしろ早く社会に飛び込むことが賢明な選択である場合もあります。

大学はあくまで一つの選択肢に過ぎません。重要なのは、自分が何を学び、どう生かすかです。人生の選択肢は無限であり、大学に行くか行かないかに縛られる必要はありません。自分にとっての最適な選択肢を見極めて、勇気を持って行動することが成功のカギです。

参考文献


  1. Bureau of Labor Statistics. (2023). Educational Attainment and Earnings.

    2. Park, D. C., & Reuter-Lorenz, P. (2009). The Adaptive Brain: Aging and Neurocognitive Scaffolding. Annual Review of Psychology, 60, 173-196.

    3. U.S. News & World Report. (2019). Best Jobs: Registered Nurse.

    4. Smith, C., & Clay, T. (2010). Career Transitions and Well-being: The Role of Career Adaptability. Journal of Occupational Health Psychology, 15(1), 15-28.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?