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たんぼびらきって、なんぞや。

日照り、台風、獣害に続いて
大雨の中かけ干しが倒れたりと、
今年も沢山の困難を
乗り越えて、
おかげさまで
2024年の田仕事を
無事仕舞うことができました。

山の神さま、水の龍神さま、
集ってくださったみなさま、
年間契約でつながって
伴走してくださるみなさま、
集落のみなさま、
動植物たちに家族のみなさま、
本当にありがとうございました。

夏〜秋と
季節をまたいでの
今年の稲刈りは
今までより一番長く感じて、
心身ともに堪えました。
が、集ってくださった
みなさんにガッチリと
支えられて、
完走できたことに
感謝しかありません。


朝霧の中に掛け干された稲束たちを
見ると金色の龍がいるみたいで、
いつかの夢を思い出しました。
(今度書いてみよう)

我が家は
年間契約とたんぼびらきという
スタイルで
お米を育てて
販売している
兼業農家でもあります。
(田仕事の様子はこちら→
IG@eritokura
https://www.instagram.com/eritokura/
(FB/とくら家のたべるもの)

農法というものはないと思っていますが、
肥料も農薬も使わない
自然栽培で、
美しい景色を作りながら
太陽や風の力を借りて
ゆっくりと干しあげる、
昔ながらのかけ干しをしています。

かけ干しを見ていると、
この過程で稲からお米(種)に
ゆっくりと時間を伴いながら
変化していく様を感じます。


田仕事を始めた当初は
おおいた OrganicMarketに毎月出店をして
(IG @oita_organic_market
対面での販売をメインにしていました。
この期間に学ぶことが本当に沢山あって、
お客さんや出店者の皆さん、そして主催の後藤あっこさんにも
農家としても育ててもらったと思っています。

さらに言うと、
この時出会ったお客さんや出店者のみなさんは
いまやかけがえのない友人達です。

お客さんや出店者のみなさんと
話す時間を沢山もつことができたおかげで、
田仕事や日々の暮らしなどを
伝える方法を模索していく中で、
当初は地域の人に
講師になっていただくワークショップを
2年間開催したりもしました。
そのうち参加してくれた四人家族が地域に移住し、
単身で参加していた男女がカップルになってスピード結婚、
のちにふたりの子供を連れて移住、現在は農家に。

移住者が増えたり農家が増えたりと、
過疎と後継者不足という
集落が抱えていた問題に
大きな実りももたらすことができましたが、
ワークショップという形態は
当時のわたしたちにとっては
お祭りのようなもので、
準備におおわらわ、
25人を定員にしていたので
全員と話すことも叶わず、
全員の名前もわからない、
そして終わった後は
とてつもない疲労。笑



当時、目標のうちのひとつだった
「過疎と集落の後継者不足に抗う」という
大きな目標はひとつ叶いましたが、
次の段階に行きたい、
自分たちが見たい世界が
別にあることを感じました。

うちは専業ではなく、兼業農家で、
移住前からしている各々の仕事も続けています。
わたしはカメラマンや制作の仕事を、
夫は時々映像の仕事を。
山の谷間のような里山に暮らしているので
元々農地が少ないという
環境条件ももちろんありますし、
そのおかげで
作りすぎる、と
いうことがない
せいもあるかもしれません。
更には他の仕事で得るいろんなものが
息づいているからやもしれません。

田仕事を始めて、
朝起きて
いきなり
多幸感に包まれて
涙が出る、ということが
1年のうち、数回あります。

「この世界があってよかった。生まれてきてよかった。ありがとう」と
いきなり涙が出る。
こんなことあるんだ、って自分でもびっくりします。
いままで生きてきて、
こんな状態になることがなくて
自分でも戸惑いましたが、
田畑にいると胸が熱くなって
急にいろんな思いが込み上げてきて、
涙が出ることがあるのです。
はたから見たら
とっても
情緒不安定な人でしょう。笑


ひとによって
スイッチが違うのだと思いますが、
わたしにとって、
田畑が近くにあって、
里山に暮らすということが
幸せを感じられる状態に
目覚めさせてくれるのだと思います。

昔、結婚する時に
母に
「徹くん(夫)に幸せにしてもらってね」
と言われた時に
ポカンとしてしまったのですが、
(え?幸せってそういうことだっけ?)
でもじゃあなんなの?って自分に問うた時に
わからなくて、
(望みが叶うこと?)
(不安がなくなること?)
長い間言葉にできなかったことを
一瞬で理解するようなことが
田畑にいるとあるので
なんとも不思議です。

言葉が降りてくるような、
忘れていたことを
思い出したような。


わたしはこの
農が導いてくれた感覚を
シェアできたら素敵だなとも
思っていて、
更には
土と水を併せて
身体を使うことで、
日々の瑣末なことから解放されて、
自分の手から
たべるものが育まれる感覚を
思い出す場所にもなれればと思っています。

ワークショップから試行錯誤、
あらためて自分が農を通して
どんな世界を見たいのかを自身に問いながら、
状況の変化もあって、
ワークショップではなく、
2017年から
日々の田仕事をご一緒していただく
たんぼびらきを始めました。

友人農家からは
「素人を圃場に迎えるなんて」と
言われましたが、
うちの田仕事は
昔のお百姓さんの暮らしに
あったようなもの。
大きな、高価な農機具も使わず、
昔ながらの手仕事を残した仕事なので、
素人でもできることが沢山あるのです。

定員は作業にもよりますが
3〜7人くらい。
全員で食卓を囲んで話せる人数。
もちろん顔も名前も覚えて、
一緒に体と手を動かして
話すので
人となりもわかる。

ワークショップの時のように
時間に追われることもなく、
その日の田仕事を一緒にしていただいて、
同じ釜の飯を食う、
そんな時間を
ただただ共有することが
肚の底に何か収まる感じがするのです。
現代社会では
エヴィデンスを求められることも多いかと思いますが、
わたしは
この、
「気がする」ということを
大事にしたいと、
とても大事にしたいと
田仕事をするようになって改めて
思うようになりました。
この、
「気がする」が、
人間が忘れかけていた
動物的な感覚のひとつでもないかと思っていて、
時々は頭ばかりでものを
考えるのをやめて、
ポカーンとして農作業をしていると、
前述したようなことが
度々起こるのです。


更には
田んぼの話をしたり、
時には選挙の話もしながら、
ふたりで田仕事するよりも
ずっと楽で楽しい!
田仕事が楽しい!

農家として本当にやっていけるのか
わからなかった不安が
どんどんなくなっていきました。
楽しい!と思っていると
やりながら
もう来年のことを考えているのです。
田仕事が楽しい!

そりゃ時にはやさぐれる時もありますが、
概ねたのしい!で
充分だと思います。

最近は
おなじように
農園開きのようなことを
はじめた
農家の友人達もちらほらいます。
概ね楽しそうです。

近代化によって
農業は家族経営でなくなった部分もあると思います。
しかし農の魅力の一部は、
人と手仕事を共有することにも
あるように思います。

この日だけは
大きな家族になって
同じ釜の飯を食う。
そんなことをしながら
田仕事をしています。

たんぼびらきについて、
軽い気持ちで書いてみたら
ながくなってしまいました。

年間契約のお話は
またの機会に。




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