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とくぢ通い雑感(2023年5月号)


月輪寺薬師堂(国指定重要有形文化財)

山口市地域版広報紙にて連載中の「とくぢ通い雑感」
「maru旅遊社」丸本さんが徳地を訪れて感じた様々な思いや魅力を、
ふるさととくぢに寄稿されたものです。


 今月は、私が徳地へ通うようになったきっかけの最初のところを、少しお話ししたいと思います。実は徳地には親戚も友達もなく、ほとんど訪れたことがありませんでした。4年前までは。
 4年前の4月、当時山口市役所に勤めていた私は、人事異動によって文化財保護課という部署に配属されました。そして配属されてすぐの頃、まずは市内の指定文化財を知るために、先輩がそれぞれの場所へ連れて行ってくださいました。
 ちなみに徳地地域は、指定文化財、それも特に重要とされる国指定の文化財が市内21地域のなかで大殿地域に次いで多いところです。
このため徳地地域の指定文化財を1日で回りきることはできなかったのですが、その日、徳地の美しい情景とともに私の心を奪ったのが、出雲神社の「二の宮の大杉」(市指定天然記念物)や月輪寺薬師堂(国指定重要有形文化財)でした。
 当時、月輪寺薬師堂は、かやぶき茅葺屋根の葺き替え工事を終えたばかりでした。期待に胸を膨らませながら石段を上り、そろりと楼門をくぐりぬけると、眼前に広がる光景に一瞬、時間の感覚が狂ったような錯覚に陥りました。ひんやりと澄み渡る空気、左右対称に正しく葺き上げられた真新しい屋根の下では、どっしりと重厚な木造建築が圧倒的な存在感を放っています。
「おおっ」思わず声を漏らしながら、これまで訪れてきたどの建物にも似ていないこの薬師堂に出会えた喜びに満たされるとともに、同じ市内にいながら名前すら知らなかったことを、ひどく後悔しました。
 帰路の左手には島地川の夕景が光り、私は先輩に「山口の観光は、徳地ですね。」と言いました。先輩が何と答えたかは内緒にしておきますが、あれから幾度となく訪れても、月輪寺薬師堂は毎回新鮮な印象を私にもたらし続けてくれます。

(出典:山口市地域版広報紙2023年5月号「とくぢ通い雑感」)

https://yamaguchi-city.jp/details/ca_gatirin.html


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