🍶ひとりではしご酒🍺 2023年6月8日御前酒　全量雄町宣言！in TOKYO

会場となった「とっとりおかやま新橋館」

2階に上がった「ももてなし家」での開催

　2023年6月8日にとっとりおかやま新橋館で開催された、岡山県真庭市の辻本店さんの「雄町全量宣言‼︎」イベントへ行ってきました。
　正直、岡山県の酒蔵さん、未開拓です。

　御前酒という銘柄おそらくフルラインナップ（確認するの忘れました）が試飲し放題という、贅沢なイベント。参加費は1,000円という破格のお値段でした。

　今回、辻本店さんで造っている日本酒全て、2023年に全量雄町化を達成したというお披露目の会。
　姉弟でもある、七代目蔵元の辻総一郎さんと杜氏の辻麻衣子さんのお二人が揃って出席しているのは、当然ではありますが、自信溢れた発表会なのだと思いました。

　2019年に全てのお酒を雄町で醸す事を目指して「全量雄町化」を宣言して、今年23年に実現。
　今度は、全量菩提酛仕込みを目指すと宣言されています。

これから1時間のセミナー

　また、1時間のセミナーでは、貴重なお話を社長と杜氏から聞かせていただきました。抜粋した内容は以下のとおりです。

【なぜ、岡山県で菩提酛？】

　菩提酛造りは奈良県の専売特許のようなものであるといった凝り固まった考えが払拭されました。
　1980年代初頭にロンドンの骨董商をしていた、七代目蔵元の伯父さんが、酒造りについて記載されている『日本山海名産圖會　第一巻』を発見し、先代の杜氏である原田さんの手元に。
　そこに記述されていた菩提酛造りのレシピを参考に1984年から全国に先駆けて再現、製造に取り組んで、1986年に全国初の菩提酛復刻酒を販売したことが、蔵で菩提酛造りを始めるきっかけに。
　その後、試行錯誤の結果、古文書通りではなく、麹を入れたものが一番安定的に乳酸菌がわくということがわかり、それ以降、辻本店さんは、水と麹でそやし水をつくる製法にしたそう。

　なぜ、菩提酛にこだわるのか、という疑問は、そやし水とそやし水と同じ酸度に調整された速醸酛に使われる醸造用の乳酸で作られた水を飲み比べをさせてくれたことで、自分なりの答えが得られたように思える。そやし水は明らかに味の深みが違っており、様々な味わいを引き出せる可能性を感じた。一方、乳酸はただ酸っぱいだけの水で、味わいというものが全く感じられなかった。

　今まで、菩提酛造りって、どの日本酒も酸味が強く、クセのあるものだと思い込んでいましたが、そうじゃないという事が今回、社長・杜氏の話を聴きながら試飲してみて、良くわかりました。
　菩提酛造りは、あくまでも、作りの一つであって、味を決めるものではないという事が。いや、目から鱗でした。まだまだ勉強が足りません。

　今回出品されていた「GOZENSHU 9」のように、確かに綺麗な味わいの菩提酛の日本酒があって、言われないと気がつかない事に驚いた。
　菩提酛らしさといった味わいにこだわる必要はないし、また、単一の原料と単一の製法の中で、なるべくバラエティをつけていろんな味わいの日本酒を出していきたいという蔵元の力強い宣言は、今後楽しみにしたいと思う。

　そして、今現在も、そやし水を濾過して、菩提酛らしさを消した試験醸造を行っているという。
　来年2024年は、蔵220年、菩提酛造りをスタートして40年の記念の年ということで、菩提酛へのオマージュとして古式菩提酛、酵母無添加の菩提酛、もろみにそやし水を使う3部作を来酒造年度に発表するという。今度こそ、手に入れて、味わいたいと思う。

【テロワールに挑戦】

　雄町の産地違い3部作を始めたきっかけは、以前、龍力の本田社長から、「うちは山田錦の産地別のお酒を作るから、お前の所は雄町の産地別のお酒を作れ！」と言われたから。
　瀬戸地区の赤磐雄町、雄町米発祥の地と言われている高島地区の高島雄町、酒蔵がある真庭市で作っている雄町を使った、3部作。砂状地である田んぼの瀬戸地区は、端正な味わい。粘土質の田んぼである真庭地区は、雄町のふくよかさ、ジューシーさが一番引き出された味わい。高島地区は2ヶ所のお酒の中間の味わいでバランスの良い味わい。と、それぞれ全く異なる味わいに仕上がったということです。

　残念ながら、私は3部作の存在を知らなかったので、呑んだことがありません。ただ、龍力の田んぼ（産地）違い3部作は、手に入れて飲み比べてみたが、味わいが明確に違っていた事に衝撃を受けた事がある。

　御前酒が掲げている全量雄町の酒造りをするために、7箇所の農家さんに雄町の生産を依頼しているそうです。だからこそ、全ての等級のお米を余すことなく使い、誰が呑んでも美味しい日本酒を作るという辻さんの意気込みには感動しました。
　これこそ、龍力の本田社長が話をされていた、酒蔵は酒米を作っている農家さんが農業だけで稼げるようにしてあげなければならない。そうでないと、お米の作り手がいなくなってしまうんだという事にも繋がるのかなと思いました。

　これから、注目して、応援もしていきたい酒蔵さんです。