寛解に向けた経過観察は、まさに雪山を登るようなものだと思う。しかし、普通の人があまり歩まないルートだからこそ、顔を上げれば気づく世界があるものだと感じた。 血液検査を毎月受けては、その結果を聞き、安堵する。そして、また次の検査に向けて日々の歩みを進める。3ヶ月から半年に1回のCT検査では、再発・転移がないかの画像診断を行うため、とりわけ緊張する壁となる。 雪渓を抜けては氷壁を登り、雪庇を踏み抜かぬよう山頂に向かう。雪山登山、そのものようだ。 病理検査の結果、摘出した原発巣
「悪性腫瘍。俗に言う、ガンだと思われます。」 その一言で頭が真っ白になると同時に、砂像が波に崩れ溶けていくような感じがした。その瞬間から、これまでの日常が当たり前ではなくなった。 2023年4月8日土曜日。私は、自宅から車で10分程度の場所にある町のクリニックにいた。なぜなら、体調が優れないことと、体に違和感を感じていたから。 クリニックの先生は診察室で優しく迎えてくださり、「とりあえず、エコーを撮ってみましょう。」と案内してくれた。私はパラダイムシフトが後に待ち受けるこ