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その1【IPO準備チームの実際】

まずはIPO準備中の会社にとっての大きなテーマである、IPO準備チームについて、当社が実際どんな体制だったのかを紹介したいと思います。
合わせて、いつどんな人を採用すればよいのか、どういう人がチームにいるとよいのか、採用の失敗について周りから聞くことがあるが、起こりうる失敗にはどういうものがあるのか、などの論点についても触れてみたいと思います。

このテーマで記事を書こうと思った理由

ーー今回このテーマで記事を書こうと思ったのは以下3点からです。

①IPO準備全般について、ナレッジがまだまだ世の中に出回っていないと考えられる中、組織面についての話は特に外にでている情報が少ないこと。(特に、教科書にない「実際どうだったか!」という話。)

②スタートアップの採用において、過去の職歴/スキルセットでポジションを埋める採用をしたことで失敗が起きているとお聞きする中で、IPOにおけるチーム体制・人材戦略が重要なテーマだと思ったこと。

③自身の経験から「スタートアップの管理業務」や「IPO準備」は一般的で言う管理業務とは、もはや異なる職種だと思っていて、それに伴って考えるべき人材戦略の論点を伝えていきたいと思ったこと。

特にチーム・組織については会社それぞれで最適解が異なるところがあり、普遍的な正解を提示できるとは思っていないですが、いろんなケース、その時何を考えたか、振り返ってどう考えたか、を共有することで、ある種の化学反応が生まれてIPOに関与する人(IPO準備企業の中の人、これからIPO準備企業にJoinを検討している人)にとって少しでも役に立つといいなと思っています。

それでは、以下1問1答形式で記載してみます!

IPO準備チームはN-3~N1期でそれぞれ何人いた?

ーーまずN-3期はIPO準備チームというよりは、「管理部」ですが、当社はN-3期は最小人数で運営されていました。

フルタイムでの管理部門メンバーは1名で、N-3期途中から当時GR(Government Relations)業務メインの弁護士が一部サポート、業務委託だった私が会計・財務関連業務についてサポートを始めていた、という体制です。

N-3期夏にシリーズBの調達も実施していたことを考えると、少人数の体制だったと思います。。

note_その1 【IPO準備チームの実際】

ーーN-2~N-1期ですが、IPO準備が本格化してきます。

N-2期初のCFO入社とともに、会計業務等の内製化、上場企業水準の業務フロー構築を進めるため、IPO準備チームが以下のような体制となります。

人数としては、4名で、当時の社員51名に対して概ね1割程度の体制となります。(当社では管理部門メンバー=IPO準備チームメンバーでした。)

note_その1 【IPO準備チームの実際】 final

ーーN-1期~N期ですが、以下の体制です。

労務の専任が1名と、元々開発サイドにいたデザイナーがジョインしました。デザイナーのジョインは、シリーズC調達、目論見書作成、ロードショーマテリアル、成長可能性資料等、投資家向け資料の作成において各種資料のクオリティを大きく向上させ、当社IPOチームの特徴にもなっていると思います。

当社ではビジュアルはもちろん、構成・メッセージ等からデザイナーががっつり入って作成しています。

弊社の各種IR資料:https://spacemarket.co.jp/ir/presentations

note_その1 【IPO準備チームの実際】 N-1 final

そして、審査・申請・上場承認までこの体制で進みました。


チームの特徴は?

ーーIPOチームの特徴

上記スライドを見ていただくとわかるのですが、IPO準備経験は当然として、管理部門業務も未経験のメンバーで構成されるチーム、という特徴があります。

未経験メンバーで構成されるチームだったので、監査対応・証券/取引所審査対応、開示資料作成、その他上場企業としての業務フロー構築にあたっては、正直試行錯誤しながらという部分がかなり多かったです。

そんな中、IPOを当初スケジュール通りの2019年に達成できたのは以下のようなメンバーがそろったチームだったからだと思います。

ーーメンバーの特徴

note_その1 【IPO準備チームの実際】 _メンバー

①ですが、IPO準備では「やるべきだけど、担当が決まっていない。」業務が山のように発生してきます。そんな中当社のチームは自分の担当業務にこだわらずにあらゆる業務を拾っていけるメンバーで構成されていて、会社の課題を1つ1つ解決していける体制でした。

備品管理やワークフロー導入、アカウント管理をはじめとした情シス業務、コンプライアンスチェックなどの業務は時期によって、チームで手分けして取り組んでいました。

管理系職種は、プロフェッショナルな人が多くいるなかで、担当・専門領域以外の業務に、課題ベースで取り組んでいけるか、という点は非常に重要だと感じました。

②について、IPO準備では、予想外の事態が発生してきます。予想外の事態が発生したとき、その予想外を業務負荷とだけとらえては面白くないので、新しいチャレンジと捉えて楽しみに行くのはとても大切なマインドだと思います。

③IPO準備は書類だけ、管理部門だけで進むものではありません。全社で一丸となって進めるべきパートが多数ある中で、管理部門の論理のみで動いてしまうとうまくいかない部分が多数ありすし、書類はできても実態(全社の業務)が伴わないと意味がありません。

そんな中、当社チームはカルチャーフィットするメンバーで構成されていたことで他部門としっかりコミュニケーションして業務を進めることができたのが特徴だと思います。

組織・チーム作りは会社によって正解は異なると思いつつ、①~③はIPO準備チームの体制作りでは普遍的と言える部分も多いと思うので、ぜひ考えてもらえるといいポイントかなと思っています。

また、当社はN-2期の体制からほぼ退職者なしで承認まで進んだことも特徴だと思います。

CFO・管理部長の入社時期は?

ーーN-2期初のCFOジョイン

当社ではN-2期の期初にCFOが入社しています。

当社の場合、管理系業務・ファイナンス・人事まで管掌できるCFOだったため、ジョイン直後からCFOが管理部長ロールを担っていました。

N-3期中はCFO・管理部長はおろか管理系専任のシニアクラスもいなかったのは少し珍しいのではと思っています。

CFO・管理部長の入社時期によって何に影響があった?

ーー「資金調達」と「3年後を見据えた業務設計」

シリーズAについては、CFO・管理部長がいない状態で実行される会社が多いと思いますが、当社はシリーズBについてもファイナンス系の社内メンバーがいない状態で実施しています。詳細は別回で書きたいと思いますが、非常に大変な調達でした。

また、N-3期中に社内での経理体制整備が進められなかったため、N-2期以降に会計制度の整備に時間と労力を要しました。。

この点からは、(時期だけを考えると)やはりN-3期中にはCFO・管理部長がいてほしいなと強く思いました。

CFO・管理部長の入社時期によってどう影響する可能性がある?

ーーこちらは一般論2点記載してみます。

一般論になりますが、資金調達に関して言うと、調達内容や社長の負担について大きく変わるところだと思います。

バリュエーションなどの大きなところもそうですが、契約の細かい箇所、次ラウンドやIPO時に影響する条項等は専任のCFOがいないと、なかなかケアしずらいところだと思います。当社ではCFO不在の調達を既存・新規のVCの皆様にかなり助けていただきました。

また、調達は検討開始からは半年~1年弱程度かかることもあり、社長がメインで動いているとかなりマインドシェアをとられるので、社長が事業に頭を使うためにもCFO・管理部長がいてほしいところです。

もう1点は、IPOや上場を踏まえたスケーラビリティのある業務フローを構築するという点で、こちらもCFO・管理部長の入社時期に影響されると思います。

その時に「必要な対応」ができることと、フェーズが進むと必要になってくることを踏まえて「業務設計」ができることは異なるため、フェーズが進んでも対応できるスケーラビリティのある業務設計ができるかどうかがCFO・管理部長の入社時期によって影響されると思います。

人材戦略がスケジュール延期や中止の要因となるケースはどんなものがありえる?

ーーよくお聞きする&肌感のある採用の失敗は、以下です。

①職歴・スキルのみを見てポジションを埋めた結果、IPO準備にあたって生じる予想外に事象に対応できなくなってしまうこと。

②スキルはあるものの、社内の他の部門とのコミュニケーションがうまくいかなくなり、書類は整うが実態が伴わないという状態が発生すること。

この2つは、職歴・スキル面だけをみて採用を進めるケース、カルチャーフィットについて検討が不足するケースで発生すると思われ、IPO準備中の会社のあるあるケースだと思います。

この観点では、当社の場合は妥協しない採用でCFO・管理部長の入社が遅れ、苦労した部分は正直大きかったですが、実は最善の道を進んでいたのかなと振り返って考えています。

メンバーについても同様で、未経験者中心のメンバー構成のスタートで苦労した部分は多かったですが、焦って採用するよりはるかにいい結果を生んだと思っています。

自分でもう1回IPOに関与するなら、チームの人数が少なくてしんどかったとしてもカルチャーフィットには妥協せずに採用活動すると思います。

人材・リソース不足にはどう対応した?

ーーそうはいっても人がいないとどうにもならないときはどうするのか。

そんなに目新しい答えではないですが、業務委託でのリソース確保で対応というのがセオリーだと思います。

手前味噌ですが、自分自身も当初は業務委託で関与しており、予算策定や管理会計領域を中心に一定貢献したと思っていますし、その他当社では、会計の体制構築、開示資料等各種資料作成などで(通常の税務顧問、顧問弁護士等とは別に。)最終的に合計4者のパートナーに協力していただき、リソースと経験値の不足を補いながら準備を進めてきました。

上手く業務として切り分けられる部分、自分たちが不得意としている部分の整理を行うことで外部パートナーが有効に機能する場面は多いと思います。

内部統制の初期ドキュメンテーション、内部監査、開示資料の初期ドラフトなどは特に有効なのかなと思います。

経歴や職歴を超えて、社内外の垣根を超えて、全社一丸で向き合う“チーム戦”

IPO準備においては、知識や経験があることも重要ですが、管理部門だけでなく、他の部門や外部のパートナーも巻き込みながら進めるという点を改めて認識することが大事だと思っています。

そして、短期的に必要なスキル、ポジションという観点ではなく、全社で取り組む3-4年単位のチーム戦であるという目線で考えることで結果として強いチームを構築できるのではないかと思います。

当社ではコーポレート部のメンバーを大募集中です!興味ある方はお気軽に問い合わせください!!

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