家族のことふぁむって言うの好きくない
あんまり家族とは仲が良くない。
全員性格が悪く倫理観が少しずつズレているので、長時間の会話は病みを生む。こんなにインターネットの世界で某FANY興業への文句や鑑賞マナーの悪い客にイライラして不満を垂れ流すこんなアカウントを所持している私が、「家族の中で一番マトモ」と称される程である。
父と妹とは会話を絶って2年半が経過したが、それまでにした話とか、母づてに聞いた話とかで、やっぱり変な人であった。フォロワーが御家族と仲睦まじい様子を呟いている度に、微笑ましい気持ちになると同時に家族のカルチャーショックなどを感じる。家族をお笑いライブに連れていきたいなんて思ったことがない。
もちろんこんな狂ったようにお笑いを見ている身内はおらず、全員劇場に足を運ぶこともネタ番組を録画することもない人間である。だがテレビが生活の中心のせいなのか、そこそこに皆芸人のことは知っている。「第7世代って何? 流行りについていけない」とか、「最近のネタ番組は面白い人が本当に居ない」などという老害にまでは誰一人としてまだ至っていないご様子。安心安心。
妹はやってるだろうけどアカウントなんか知らないし、両親はSNSをやってない(母は好きな成田昭次の情報を得るためだけにROM専アカウントを持っているのは覚えている)ので、こんな成れの果てのようなアカウントには辿り着かないし、ましてやnoteなんか読まないだろうと踏んで、家族とお笑いの思い出と思考を振り返ってみようと思う。ちなみに、関係性を良くしようという気持ちもあんまりない 疲れるからね
父
マヂカルラブリーがM-1グランプリで優勝した時に、「何が面白いのか分からない」「これは本当に漫才なの?」と、インターネットの議論の前にお茶の間から論題を先取りしたでお馴染みの頭でっかち。5ちゃんねるでスレ立てたのもしかしてオトン? 父の冗談は職場の上司程度の関係性なら笑えても、身内には不評である。そして基本的に、こちらからの冗談は通じない。堅物の真面目のクセに、自分にはユーモアがあると思っている。
一緒にテレビを見てる時サンドイッチマンのネタをかなり好いたようで、小さい頃にわざわざ会員証を作ってGEOまでサンドイッチマンのネタDVDを借りに行き、家で見ていたことがある。
東京03のことも好き。東京03だけは「飯塚好きそうだよなこれ」「角ちゃんはこういう役をやらせたら右に出る人はいないな」「豊本らしいな〜」などと、地元のツレみたいな口調で喋る。
無論、型破り系やパワー系、キャラ系、シュール系のネタは好かないご様子。ニッポンの社長を一緒に見た時緊張した。
タイムマシーン3号出演時のしくじり先生にて、「客に媚びる漫才師」として、自分たちを揶揄しながら、磁石と三拍子の名前を出していたのを見た後。そういえば父はタイムマシーン3号が大好きだったことを思い出した。父の部屋からネタの声が聞こえてきたことがあったから。
そんな父に、テレビでタイムマシーン3号が磁石と三拍子の名前を混じえて自分たちをこんな風に表現してたよと教えたら、「それ客に媚びてるって言うのかな? 王道が客に受け入れられやすいのであってそれは媚びてるとは言わなくないか? 悪口だと思う」と何故か私が怒られた。本人たちが言ってたんだってばよ オンバトリアタイしてないのにそんな鋭利で鬼みたいな悪口が思いつくわけねえだろい
中川家、ナイツ、パンクブーブー、磁石なども好き。漫才サミットに行ったら大喜びするんだろうな。ここまで来ると、お笑い好きな方からしたら面白いくらいわかりやすい人間だと思われるだろう。本当にそう
「笑い飯は好き?」と聞いたら「あんまり」と言われた。確信に変わった。
今年のM-1はヤーレンズが一番面白かったようで、ヤーレンズ先生の伝説のくだり「ゴスペラーズで誰が好き? 私はドラム」「ドラムなんかいない、全員ステゴロ」転げ回ったらしい。
父のネタの好みはいかにもで分かりやすいね、と言ったら、「でも俺は意外かもしれないけどEXITのネタは割と好きだよ、しっかりしててさぁ構成が〜」とドヤっていた。
父のことが好きだった時、娘が見てるネタを隣で容赦なく批判する父の笑顔とポジティブな言葉を聞きたくて色んなテレビを垂れ流した記憶がある。ゴッドタンのマジ歌選手権と、アメトークのプレゼン大会の囲碁将棋のトークが気に入ったようで、ケラケラ笑ってた時は嬉しかった。
あと、おニャン子クラブのモノマネが父にウケたことがある。似てはない。似てはないけど、悪意がこもってるから面白いらしい
母
びっくりするくらいのパリピ人種だった上に綺麗な母の根底にはルッキズムがある。「顔が生理的に無理」という理由でトークやネタを見る前に拒絶をする人間である。
とはいえ、テレビで「ブサイク」「顔面イケてない(令和特有の言い回し)」と揶揄される人間を遠ざけているのではなく、本人の審美眼で考えているらしい。ダイアンのことはこの上なく気に入っている。宮下草薙のことを、「パート先の若い子に似てて可愛い」と言ってなんでも褒めている。
そして母の特徴として、想像を絶する女王様気質が挙げられる。小さい頃、「世界でいちばんかわいいものは?」と聞いたら、「あたし」と答えられたことがある。「あんたと妹で2番争いをしなさい」と言われた。パンがなければケーキを食べればいいのにと言わんばかりで、「高校に行きたくないなら舞妓さんにでもなればいいのに」という突拍子のない提案をされたこともあった。
さらば青春の光にハマったことを、恥ずかしそうにカミングアウトしてきたことが記憶に新しい。そういうネタが好きだと思われるでしょ、と、やっぱり失礼な人間だった。
ボキャブラ、オンバトと呼ばれる番組は単なる視聴者として見ていたようで、そんなコンビ知ってるんだ、という単語が飛び交う時がたまにある。
あとは、私が小学生の頃に「お笑い男子校を買ってくれ」と頼んでたことから中身をうっすらと読んで、普通の人なら知らない単語がするりと出てくることもある。
オカン「夢であんたに彼氏ができてたんだよ」
アタイ「ほぉかえ 悪かったね現実にはいなくて」
オカン「その彼氏、コマンダンテと吉田たちのファンで、デートにロングコートダディの単独行くって言ってたよ」
アタイ「連れてきてくれやそんな彼氏」
⬆️実際にあった悲しい会話
でも、面白いものを面白いと言ってくれるのは有難い。
つまんないものはつまんないと言うが、父と違って素人審査員にはならない。
今年のR-1はどくさいスイッチ企画さんとテラセンがお気に召したようだが、かりんとうの車の理解に辿り着かなかったらしい。
M-1はヤーレンズだったらしい。いぇーい。次には? と聞いたら、「シシガシラ! ハゲ! ハゲは本当に面白い」と、切り取り方ではまた炎上になりかねない感想を教えてくれた。
母には感想をインターネットに呟くという概念がないのでホッとしてるが、万一呟くタイプのSNSの使い手だとしたら、1日に3度は炎上していた筈だ。デブ、気持ち悪い、あの人◯◯やってるってネット記事になってるよ……etc、誰も見てないnoteにすら書くのを躊躇われる言葉を無造作に言うが、家庭内の話なのでご容赦願いたい。民事不介入だよ〜
そんな母と、ママタルトを初めてテレビで見た時は息をのんだ。「何この人」という、予想していた言葉が帰ってきた。「隣の眼鏡もかなり(かなり)」という、まさかの飛び火まで来た。ネタも頭に入ってこなかったそう。ショボン。
───と思ったら、M-1グランプリ2023の敗復を母ちゃんとリアタイしてた時。ママタルトがロングコートダディを負かしたあの伝説の瞬間に、私と同じくらいガッツポーズをして喜んでくれた。
え? と、普通に驚き。女王様気質の母に、「娘が好きな芸人だから一緒になって喜んであげよう」という思想は無論ない。
「どうして喜んでくれたの」と聞いた。ロングコートダディのことも嫌いじゃないのは知ってたので(兎さんの顔にも絶句したらしい)(まぁ忘れられない表情する時あるもんな)どうしたのかと聞いたら、「マジで見た目キモいと思ったけど、アメトークのデブ芸人でいちばん面白かったから好きになった」とのこと。前半の厳しいコメントは気にならないほど、ありがたい言葉。イメージが変わることあるんだ。嬉しい。
でも、キモい芸人は生理的に無理と言いながら、キモおじさんとして名を轟かせるななまがりがだーい好きな母。母の唯一の趣味は御朱印巡りなので、ななまがりの単独ライブのグッズに御朱印帳があることを教えると「なんて素敵なコンビ!」「センスがいい、ネタにも溢れてる。それが」と歓喜し、たまにネットで見つけたななまがりのライブ情報を私に教えては「行かないの? 囲碁将棋も出てるよ」と言ってくる。
大宮セブンに大ハマりしてたのも知ってたからか、タモンズとGAGと囲碁将棋のニュースも教えてくれる。
ヨネダ2000の愛ちゃん、SMAPが大好きなんだよと伝えたら、「もうファンになった。すごい可愛く見えてきた」と突飛な態度を取り、「調べたら愛ちゃんサックスも吹けるの!? 大好き! サックス吹く人!」とよく分からないことを言っていた。
かなり昔、レッドカーペットを見てた時にパッション屋良で母が家が揺れるほど大笑い、固まる家族に気付いてから一言も話さなくなったことがある。触れるな、と言わんばかりに。
あと、アメトークの「体当たりシュミレーション」を見てる時の母はほぼデスゲームのゲームマスターになる。オホホホって笑う。
今構想している、母との次の課題は「対オッパショ石」。今年はめちゃくちゃネタ番組に出て頂いて、我が家に耐性がつくようになって欲しい。荒んだ家庭にはオッパショ石の明るいパワーが必要。
妹
相席スタート山添さんの顔ファン。
マツモトクラブさんのR-1のストリートのネタ、2700の右肘左肘、ハナコの「女心」、シソンヌの「タクシー」を完コピしている
祖母
無論、お笑いなど見ていない。
女王様気質の母を産んだ人間である祖母は、もはや宰相。
「あたしがいないと街の灯りが消えたみたいになるわ」という名言を残したことがある。とても若々しい思考かつ、やはりプライドが高いため、いわゆる「年配の方が好きなもの」を毛嫌いするきらいがある。
なので落語なども見ない。笑点に新メンバーが入った時だけ見る。
近所に住んでるため。会う度に笑顔で声を掛けてくれる。
宰相「お出かけ? 可愛いカッコして」
アタイ「お笑い見に行く」
宰相「アハハハ! お笑い、お笑いね! いつも通りね! ウフフ!(肩を叩く)お気をつけて!」
⬆️月イチくらいで開催される会話
趣味があるならいいんじゃない? と、あんまり芸能事には興味が無いそう。
相撲と昼ドラが好き。どんなドロドロとしたドラマもまるで「はなまるマーケット」を見ているかのように笑う。
タワマンもない、デパートもないところに住んでるのに、祖母は自分の家と周辺のことを「ビバリーヒルズ」と呼んでいる。その自己肯定感の高さは、きっと出井先生も恐れをなすことだろう。
叔母
新宿の近くに旦那さんと娘と住んでいるので、「新宿夜ライブあんなら泊まりに来なよ」と優しくしてくれるため、よくご厄介になっている。
お笑いのことは別に好きでもないが、友人等の影響を受けているためオタク文化に造詣がない訳でもないらしい。
お笑いライブにたくさん行くことをなぜか応援してくれていて、大学時代は長期休みの際に「こっち泊まってなんかお笑いライブでも見て帰れば? 新宿? 渋谷? なんか調べてみなよ」と、ライブに連れて行ってくれた、足も向けられないような優しい御家族である。
ただ、まったくお笑いには興味がない。マヂカルラブリー、聞いたことあるかもとは言ってた。中川家か博多華丸・大吉なら見に行きたいらしい。
お笑いライブの後に、叔母の家に行くと大概夜。迎え入れて頂いたあとに二人でお酒を飲みながら色々お話をするわけだが、「今日は誰見たの?」と聞かれ、「えーっと……」という会話を毎回繰り返している。
叔母様「誰を今一番推してんの?」
アタイ「や……ヤーレンズ」
叔母様「ヤーレンズ? 知らない」
アタイ「あん時言ってたコンビ、M-1で準優勝したんだ」
叔母様「えー! あん時の!や、や……」
アタイ「ヤーレンズ」
叔母様「ヤーレンズwwwwそうだそうだ」
⬆️コンビ名が面白い、という局地にいる
「キュウ」がダントツで面白いらしい。「え? カタカナ? 英語? 漢字? キュー?キュウ?」「カタカナでキュウ」「w w w w w w w w」理不尽な会話
どんなライブなの? 写真撮っていいんだ、いいね、ファンレターとか書くの? 出待ちとかしないの? 同じネタ何回見てもやっぱ面白いの? ライブ会場にそういう同じものが好きな友達がいるんだ、今日も誰かいるの? 何喋んの? なんて名前で呼びあってるの? そういう友達ってどこで見つけんの? ウケんね!
これ全部、会う度に交わす会話。全部の質問の回答に対する返事が「ウケんね!」とのこと。ウケるらしい
アクスタを見た時は爆笑していた。「皆でこれで写真撮るの?」「これ持って写真撮ってる女の子カフェでよく見るよ」とメッタ刺しである。ケビンスのアクスタを持ってカフェなんか行かないよ。極めつけには「なんか小さいぬいぐるみとかあんじゃん。お笑いにはないの?」と聞かれた。それ、どの事務所が一番最初に作るかな。
げメのチェキを見ても、「この芸人、有名な人?」と聞き、私が首を斜めにしてたら「いつか売れるかもしれないから何枚もツーショットで撮っておくといいね、なんで一人のやつばっかなの?」という、新視点の意見を頂戴した。好きな芸人が売れまくった時、メイドの写真が横行するのはどうなのだろうか……面白そうだね
親戚の女の子
3歳くらい。この世でいちばん可愛い存在である。
お笑いという概念を知らない。そりゃそう。布教なんかしません
私がスマホを見てる時に覗き込んできて、ヤーレンズの写真を見て「だあれ」って聞いてきたので、「これから(ライブで)会う人だよー」と適当に返したことを覚えていたようで、その次にまた写真を見た時には「◯◯ちゃん(アタイ)を連れ去る悪い人」だと言っていた。ごめんやで……私があなたの遊びに来る日に限ってヤーレンズのライブに行ったりしてたからね……しょっちゅう……無論、ライブ会場のことは「◯◯ちゃん(アタイ)を遠くに連れ去る場所」である
そんな3歳となる、芸能人など興味があるわけもない女の子と叔母が私を泊めてくれて、翌日昼からナルゲキに繰り出す私をナルゲキ前まで送ってくれた日があった。日曜だったからか、エントリーライブか何かでとにかく沢山の出場芸人さんがナルゲキ前に沢山いて、私はスローブ下に向かう。
そこで、まるで私がこの後出演するんかくらい叔母と女の子が「じゃあねー、楽しんでねー」とずっと手を振ってくれた。手を振ってくれるが、私は待機場所にいるだけなので周りの視線は永遠にこちらに突き刺さる。大丈夫! こっちは大丈夫だから!と必死に言ってたら、名も知らぬ出場芸人の方がそのやり取りを見て、3歳の子に笑顔で手を振ってくれた。「ばいば〜い」と言って。人見知りするその子も、一瞬怯みながらも手を振り返していた。その日から、ナルゲキは「◯◯ちゃん(アタイ)を連れ去る場所」ではなく、「なんか優しいお兄さんがいるところ」になったらしいそうな。
ちなみにこの手を振り返してくれた方、眼鏡をしてなくて私はどなたかが本当に分からんかった(衣装でもなかったような)んだけど、送ってくれた叔母が後に「なんか手振ってくれた人、かっこよかったね」と言っていた。マジで誰だったんだろ、気になる 教えてあげたい このエピソード あと伝えたい 感謝
不思議な家族の話をしたが、十分伝わっている通り、家族は皆好きなお笑いの方向性が違う。そのくせ全員口が悪く思想が強いので、絶対に自分の意見を曲げない。
でもほんと数年前までは、家族四人全員で賞レースを見てた。そこでその年の話以外も、私がリアタイ叶わなかった(お笑いが好きという自我がなかった)頃のM-1回の話などもして、色々聞いたところ、こんなにベクトルの違う家族が全員共通して好きだと言っていたネタがいくつかあった。
①シソンヌ「タクシー」 KOC'2014
②サンドイッチマン M-1'2007、KOC'2009(どれも好きらしい すごい)
③バイきんぐ KOC'2012 (これは、家族がみんな爆発した)
④笑い飯 「鳥人」 M-1'2009(笑い飯は形が云々御託を並べてた父が黙るしかないほど面白かったようで、思わず唸っていた)
⑤中川家 M-1'2001(文句の付けようがなかったとのこと)
⑥ミルクボーイ M-1'2019(この年は印象がこれしか残らなかったという)
あと、家族揃ってキングオブコメディのことは大好きだった気がする。ロバートの忍者のやつも。そしてなんと、ここにヤーレンズが追加されそう。へえ、ふふふ