見出し画像

「育てにくい子育て」は、存在する。

 お子さん一人ひとりがみな違うように、お母さん、お父さんも一人ひとりみなそれぞれ別の人間です。得意なことも違うし、気になることも違うでしょう。あるお子さんをAさんという人は楽しく愉快に育てるかもしれないし、Bさんのという人は苦行のような毎日になってしまうこともあるかもしれません。でもそれはもちろん、AさんよりBさんがさんのほうが良い親、ということではありません。

 私がお話をさせていただくお母さんたち、だいたい皆さん疲れ果てていて寝不足です。面談で多くの方から聞くエピソードはだいたいこんな感じです。

職場から急いでお迎えに行って保育園に着くと「いや!まだ遊ぶの」となかなか帰ろうとしない子どもを大泣きさせながら車に押し込んで家に連れて帰る。急いで洗濯物を畳んだり食事の支度をしたりして、さっさとお風呂に入れたいが、子どもは動画を見ていてお風呂に入らない、ご飯も食べないから片付けも進まず、自分のお風呂もそこそこにようやく寝かしつけようとしても子どもは寝ない。人から絵本を読むと良いよと言われたけど、読み聞かせをしようとすると全然聞かないで走り回る。そこから2時間かけてようやく寝たはずなのに、やっとこちらが寝付く夜中の1時、2時に急に起き出して、泣いたり叫んだり動き回ったり。そこから子どもはどうにかこうにか寝かしつけても、自分は目が冴えて眠れない。朝が来て、重たい身体を布団から剥がすようにして支度をするも、今度は子どもは起きない、食べない、着替えない知らない間にうんちを部屋の隅でしている。そして「行かない!まだプラレールで遊ぶ。行かない!保育園嫌い。行かない!ママがいいの」……それをなんとか園に連れていき、ようやく先生に託して職場に向かう。


画像1


 そんな戦いを、毎日繰り返しているお母さんたちの多いこと……

 いつ終わるともわからないそんな日常を綱渡りのように乗り越えながら、お母さんたちはその中でもイライラして子どもをうっかり叱りつければ「また叱ってしまった」「私はだめな母親だ」「愛情が足りないのではないか」と我が身を責めているのです。そして「でもね、子どもの寝顔を見るとかわいいし、また明日もがんばろうって思うんです」とおっしゃる。私の目の前にいる子どもたちは本当にキュートで、お母さんの言葉も心からのものだと思えます。

 反面、私も支援職の端くれですから、話をしてくれるお母さんたちが皆さん本音や事実をそのまんま語っているわけではないこともわかります。それでも、そのお母さんの能力やコミュニケーション力が高いのとは関係なく、心からお子さんを大事に育てていることとは関係なく、「育てにくい子」と一緒の毎日は本当にしんどい。
 そして今度はそれをようやく言葉にしても、

・子どもなんてそんなもんだよ
・男の子なんてそんなもんだよ
・うちもそうだったよ
・かわいいのは今のうちだけだよ
・愛情かければ子どもは応えてくれるよ
・がんばんなさいよ、子どもにはお母さんだけなんだから
・あなたの小さいときはもっと大変だったわよ …… …… ……

 みたいなことを言われる。こういう言葉で愚痴を言う気持ちに蓋をされてしまったような気持ちになる。心配するのもだめ。安心するのもだめ。子どものためにがんばらないのはだめ。だとしたらどうすれば良いのよ、と思ってしまう。

 「育てにくい子育て」は、存在する。「育てにくい」「しんどい」と声に出して言うことは、あなたがだめな親だからということではないのです。

 この社会には、まだまだ「私は大変です」と言えない人、言うことを許されない人がたくさんいる。でも、「私は大変です」→「だからなんとかしたい」というところを出発点に、知恵を出し合い、励まし合うことができたら、それは大きな力になるんじゃないかと思います。
 そのためにも子育て真っ只中の人たちがもっと「大変だよ」「無理だよ」「困ってるよ」と言えるように、子育てなんてみんなそんなものでしょ、と言わないでほしいなあと思います。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?