大学生と老舗の瓦屋さんが"瓦を使ったペットハウス"を作ったら、値段がすごいことになった話
初めまして。大同大学4年生の所 河雅斗(トコロカガト)と申します。...あ、名前はぜんぜん覚えて頂かなくて結構ですので、代わりと言っては何ですが、もし良ければ最後までこの記事をご覧ください:) 宜しくお願いします。
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2020年、愛知県高浜市で大正二年から続く老舗の瓦屋が、大学生と産学連携で行う、あるプロジェクトを発足しました。
それが、「瓦猫プロジェクト」です。
瓦でつくる、新たな景観
瓦猫プロジェクトは2020年6月に、愛知県高浜市にある老舗の瓦メーカーである「三州野安株式会社」と、同じく愛知県名古屋市にある「大同大学」の産学連携プロジェクトとして発足しました。
参加メンバーは、プロジェクトに自主参加した大同大学3年生(プロダクト学部・情報デザイン学部)19名と、三州野安株式会社の社員数名。
共通点は、猫が好きであること。
「瓦を使った猫用ペットハウスを作る」というコンセプトを軸に、まだ誰も見ぬ最高の製品を目指して活動がスタートしました。
...が、しかし。
いきなりの窮地、コロナ渦でリモート環境に。
『Microsoft Teams』でのリモート会議風景
2020年6月頃と言えば、コロナ渦による第一次緊急事態宣言の真っただ中。発足当初は対面でのミーティング作業等を予定していた瓦猫プロジェクトも、やむなく慣れないリモート環境での作業となってしまいました。
そもそもが初めての産学連携プロジェクトで、右も左もわからない学生たちは、苦戦しつつもなんとかTeamsを使いこなし、作業を進めます。
そして、瓦の持つ可能性と機能性、また猫の習性なども考慮し、幾度かのミーティングを重ねて決定したプロダクト学生6名のデザイン案を、三州野安さんに提案しました。
実は、このデザイン案が決定する前から、同年11月に愛知県国際展示場 (Aichi Sky Expo)で開催する日本最大のペットイベント「インターペット愛知」に、決定した試作品1つを出展する予定が立てられていました。
しかし、6案を提案してみたところ「せっかく良い案が6つも出たのだから、いっそのこと全て試作品を作ってみて、インターペット愛知で人気投票をしてみてはどうだろうか?」という意見が上がりました。
確かに、それは面白い試みです。投票と同時にアンケートも実施することで、製品のクオリティを更にブラッシュアップ出来る為、まさに一石二鳥と言えます。
ただ、当初のスケジュールでは試作品1点のみの製作を予定していたので、それが6点にもなると、スケジュールに大幅な変更が加わることになります。
しかしそこは、プロダクトチームのリーダーの子が「やりましょう!」と、夏季休暇返上の覚悟で作業を行うことを承諾してくれたので、6点の試作品制作がスタートすることになりました。(内心どう感じてたかは定かではありませんが...。)
試作品をつくる
そんなわけで、まずはダンボールで模型を製作する事に。この時点で既に試作品6点の図面は完成しているのですが、ダンボール模型を作ることで、後に行う瓦部分と木工部分の製造打ち合わせの際に、完成品をイメージしやすくなるというメリットがあります。
その後、瓦部分の打ち合わせを行うため、三州野安さんの瓦製造工場にダンボール模型を持ち込んでの検討会を行いました。
図面とダンボール模型を見比べながら、実際に瓦で焼く際の問題点などを探ります。(※緊急事態宣言解除後に行っています。)
ちなみにこの時、ダンボール模型ハウスを猫ちゃんが気に入ってくれるかどうか、社員さんの飼い猫ちゃんでお試ししてみたのですが......
めちゃくちゃ気に入ってくれました。これなら、実際に瓦と木工で試作品を製作しても大丈夫そうです。よかったよかった。
さて、その後は木工部分を担当して頂く株式会社アーティストリーさんと打ち合わせを行い......
木工部分の製作をして頂きました。非常に綺麗な仕上がりで、プロダクトの担当学生は「これがプロの仕事か...」と、感銘を受けていました。
その一方で、瓦部分も作業を進めており、三州野安さんの元で試作品6点の瓦が順次焼き上がることとなります。
......と、順調に事が進めば楽なのですが、実際は本来の瓦の製造との違いから、作業は難航しました。
主に焼きあげる工程での縮みが原因で、木工部分とのズレが生じるという問題です。この際、いくつかの部品は、何度かの焼き直しを行う事になりました。大変ですね...。
と、まあ紆余曲折ありつつも、なんとか完成した瓦部分のパーツを、木工部分と組み合わせる作業が行われる事に。
この際、組み合わせる為の部品(瓦・木工)は、試作品のために作られた一品物なので、万が一にでも壊れたりすると、取り返しのつかない事になります。そのため、作業はプロダクト担当教授である舟橋准教授の指導の元、慎重に行われました。
そんなこんなありつつも、なんとか全ての試作品を完成させることが出来ました。(※写真は1点だけですが合計6点が完成しています)
あとは、展示会に出展して、お客さんの反応を確かめるのみです。
一方、デザインチームでは。
と、少し時間を巻き戻しますが、実はプロダクトチームが展示会に向けて試作品の製作が進めているその裏で、デザイン学科の学生で組まれたデザインチームが、展示会に向けての別の準備を進めていました。
というのも、この展示会(インターペット愛知)は、まだ世間に知られていない『瓦猫プロジェクト』の存在が、初めてお披露目される機会となります。なので、お客さんの目をパッと惹きつけるような、キービジュアルが必要になります。
そんな訳で("~な訳"で使いがち)紆余曲折ありながらも、完成したキービジュアルがコチラ。
どうでしょうか?中々いい感じになってると思います。
解説すると、まず中央の「瓦る(かわる)」というコピーは、「瓦ない生活が、変わる」という駄洒落混じりのコピー案があり、それを短くした結果、「瓦る」となりました。もちろん、本来こんな読み方はありません。
そして、右に写っている怪しげな猫のイラストですが、これは学生が参加しているプロジェクトという事で、「何か面白いことをしてやろう」という、学生のたくらみを表現したものになります。
最後にキーカラーですが、学生が関わっているプロジェクトとしての賑やかさから連想して、黄色に決めました。
さて、その後はキービジュアルを元に、パンフレットやポスター、展示会で使用するパネル等のデザインを行いました。
学校の課題などではなく、実際に使用する販促物をデザインするのは初めての経験である学生が大半であった為、作業はそれなりに難航しましたが、なんとか展示会までにすべての販促物を制作することが出来ました。
いざ、展示会へ。
いよいよ迎えた展示会当日。コロナ渦の影響もあり、最初は本当に開催されるのか不安な部分もありましたが、無事に開催されてホッとしました。
例年に比べると、若干来場者さんが少なめではありましたが、それでも多くの方に瓦猫プロジェクトのブースを訪れて頂くことが出来ました。とても感謝しています。
そして、当初の予定通り、展示会では試作品6点の人気投票も行いました。その結果、3点のペットハウスが市販化されることになりました。
......ちなみに、当初の予定では、1位に選ばれた試作品だけが市販化される予定でした。ところが、三州野安の社長さんが「せっかくいいものができたのに、このまま見過ごすのはもったいない」とおっしゃったので、3つ市販化することになったわけです。本当にこういう事あるんですね。
という訳で、ここから先は、実際に市販化が決まったペットハウス3点を、順番にご紹介していきたいと思います。
1.かまくら
『かまくら』はその名の通り、雪で作るかまくらをイメージした猫用ペットハウスです。木工部分が無く、全面瓦で製造しています。
ねこの「狭い所を好む」という習性に合わせて、内部の高さはねこが入るのにちょうどよい高さに設定しています。また、入り口を大きく取る事で通気性を良くし、ねこちゃんにとっての快適な環境を確保しています。
かわいいね。
2.Tilely Cat
『Tilely Cat』は、小テーブル程の大きさの猫用ペットハウスです。一見、ペットハウスに見えない様なデザインをしていますが、実は猫が好む特殊な仕掛けが2つ施されています。
一つは、片側の壁が全面開放式扉になっているので、猫が内部に入る際によりスムーズに入ることが出来るという仕掛けです。また、地面に接する部分はねこがケガしないように、角を丸める加工も施してあります。
もう一つは、内部に仕切りを設ける事による狭所空間で、かまくらと同じく、猫の習性に合わせた設計になっています。
かわいいね~きみたち。
3.じぶんち。
『じぶんち。』は、伝統的な日本家屋をイメージした猫用ペットハウスです。「ねこちゃんにも”自分の家(=じぶんち)”があったほうが良いんじゃないか?」と考えた学生によってデザインされました。
付属の表札も、飼い猫ちゃんの名前でオーダーメイド出来ます。素材も、瓦と木のうち、お好きな方を選んで頂けます。めちゃくちゃ本格的です。
お住まいになっておられる。
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という訳で、上記の3点が人気投票を勝ち抜き、市販化される運びとなりました。(※画像は大学で行われた表彰式の様子です)
3点とも非常にクオリティの高い製品に仕上がっていて、実際に展示会で来場者の方に見て頂いた際にも、品質の高さは勿論のこと、学生がデザインを行っている事に対して驚いている方がとても多かった印象です。
気になるお値段について
さて、ここまで『瓦猫プロジェクト』の変遷についてお伝えしてきたのですが、実は、もう既にこちらのペットハウスは、オンライン通販サイトBASEにて、販売予約を開始しています。
で、気になるお値段なんですが...
かまくら:¥ 39,600(税込)
と、なっております。
まあ、正直、ほんと~~~~に正直な感想ではあるのですが、学生である自分からすると「なるほどですね...」と言わざるを得ないお値段になっているなあ、と、思っています。
......が!これは本当に、何とか色々と手を尽くして頑張った結果であるという事を、皆さんにはご理解いただけると嬉しいです。と、三州野安株式会社の瓦猫プロジェクト担当者である犬塚さんがおっしゃってました。(猫に関するプロジェクトなのに、名字に”犬”が入ってる方が関わってるのちょっと面白いですよね。)
実際、これでもだいぶお求めやすい値段になっているんですよね。自分が最初に聞いた時はもうちょっとお高かったので...。本当にご苦労様です。
ちなみに、『Tilely Cat』と『じぶんち。』は、まだ正式に価格は決定していないのですが、どちらも十数万を超える想定になっています。かまくらと違って木工部分がある為、その分価格もお高くなっている感じです。こればっかりはもう...どうしようもないですね。
販売サイトについて
発売が決定した3商品のうち、『かまくら』は、先にBASEで販売予約がスタートしています。2021年6月22日より、順次発送予定です。
『Tilely Cat』と『じぶんち』の発売時期は未定ですが、決まり次第瓦猫プロジェクトの公式HPで告知する予定です。気になる方は是非チェックしてみてください:)
おわりに
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!普段こういった文章は書かないので、伝わりにくい所や日本語がおかしい部分も多々あった事かと思います。 ......いやー、ライターさんって凄いんですね。改めて尊敬します。
本当は、もっといろいろと書ける事があるのですが、あまり長くなってしまうのも良くないなと思いましたので、出来るだけ端折って飛ばし飛ばしでプロジェクトの流れを説明させて頂きました。
また機会があれば、その時に更に詳しい所まで説明など出来るかなと考えています。その時は宜しくお願いします。
ちなみにですが、この記事も瓦猫プロジェクトの活動の一環として書いています。一学生の日記という訳ではないので、その辺りはご了承ください。
また、今後、瓦猫プロジェクトの新しい動きに関しての記事を出す可能性もありますので、もし興味ある方が居ましたら、ユーザーのフォロー等して頂けると嬉しいです。宜しくお願い致します。
あと、良ければ記事の”いいね”もお願いします。泣いて喜びます。
それでは、さようなら。
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