片想い
いつも笑顔の君だけど
今日はなんだか曇り空だね
少し脱力した鼻声で
濡れた前髪を整える君の手が
まだ僕の知らない君が
そこにいることを
突きつけてくるんだ
みぞおちの拳がギュッとして
無防備な君を守ってあげたくなる
新しい君を知っていく度に
今までの僕を失っていく
君に出会えたことを
大切に思う度に
君に出会ってしまったことを
後悔してしまう
恐怖と夢想の
もどかしい渓谷の狭間を
僕は上ったり、下ったり
そして、また
下ったり、上ったり
交差点を行き交う一足の音のように
紛れて
色づく樹冠の一枚の葉のように
ひっそりと
もし君に見つかってしまったら
尾根にゆく番い鳥に嫉妬しながら
僕はこの渓谷から落ちて
滔々たる川に流されてしまうだろう
渓谷から空を飛ぶ覚悟ができるまで
もう少しこのままで
君の眼差しの行く先を
僕も一緒に眺めていたい
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最後までお読みいただき有難うございました!😊🙏