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旅ログ068 東長崎〜中野坂上

南へ向かって歩き始めた。
寒いよう。
今日着ているジャケットは、毎年のごとく布地の間に鳥の羽毛を詰め込んだものではあるが、首元のファスナーをぐっと上げると、ちょうど耳のところにふさふさした毛があたる。
襟巻きも耳当てもいらない優れものだ。
歩き続けていると、体温も上がって寒さが和らいできた。
趣のある階段を下ると、川を越えることになった。

川は大好きだが、この川は真冬だというのに小さな羽虫が飛び交っていて、私の頭にもまとわりつくので、逃げるようにわたって離れた。
そこからすぐのところで、私はとうとう「環状6号線」に出会った。

メトロポリスの核に、そこにあるはずの王の城に、また近づいたというわけだ。
私は今、旅に出てからもっとも東にいるのだろう。
6号線の内側はどんな土地なのだろうかと、ドキドキしながら進んだところ、「中野区民活動センター」という建物があり、心地よく休憩をさせていただいた。

期せずして、旅を始めてから「中野区」に抱いていた負の感情はかなり緩和された。(旅ログ038/054)
しかしこの季節は、心地よいからと言って長く休むのは良くない。
せっかく温まった体が冷えてしまう。
区民センターの脇にある急な坂を下ると、また川だった。

これまで何度も出会った神田川だ(旅ログ039/054)。
川沿いの歩道がきれいに整備されているのもあり、上流へ向かって歩くことにした。

「環状6号線」の内側だからといって、そんなに景色は変わらないのかもしれない、と思いながらそこそこ長い距離を南へ進んだ。
すると、急に見たこともないほどの高い建物がいくつも現れた。

…なるほど。
これぞメトロポリス、いわゆる摩天楼と言われるものか。
「淀橋(よどばし)」という、少し怖い言い伝えのある橋にたどり着いたあたりで、左膝が痛み始めてしまった。

神田川沿いは歩きやすく、もう少し南へ進みたかったのだが、仕方ない。
区民センターの脇の坂道を降りたときに痛めたようだ。
ちょうど年の瀬だし、来年は日頃から足腰の調子を整えて、旅に挑むことを抱負にしよう。
「中野坂上(なかのさかうえ)」の鉄道駅で旅のログを終えた。

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