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小さなお話

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1記事に収まる長さの短編(童話)をまとめました。 短編(一般文芸)はマガジン「短編万華鏡」をご覧ください→ https://note.com/toko_shimotsuki/m/…
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記事一覧

童話「ぶーにゃんのおふとん王国」

「いってきまーす!」  もえはあわてて玄関を飛び出した。ドアはお母さんが開いた状態でおさ…

霜月透子
3週間前
10

童話「空の星、海の星」

 ある夜のことでした。  海の底では、ヒトデの子がずうっと上の方をながめていました。 「…

霜月透子
2か月前
17

童話「ひつじのモコ」

1.ゆかちゃんのモコ 「いる、いらない、いる、いる……うーん。やっぱいらない」  ゆかち…

霜月透子
3か月前
16

童話「ねこのリンネと9つの実」

 子どもの背丈ほどの小さな木の下に、一匹の白ねこが眠っていました。丸まった背中には、茶色…

霜月透子
3か月前
15

童話「猿ノ怪」

 山に入ってはいけない。  里にすむものなら誰でも知っていることでした。とくに月のない晩…

霜月透子
4か月前
25

童話「羽衣伝説異聞」

 にゃあご。にゃあご。ふぎゃあお。  人が寝静まった江戸の町で猫が呼び合う声がします。ほ…

霜月透子
5か月前
12

童話「波にゆれる小舟」

 海に小舟が浮かんでいます。磯太郎の小舟です。  磯太郎は浅瀬まで舟をこいでくると、ひざまで海に入り、舟をおして浜にあげました。 「きょうはたくさんつれたなぁ」  磯太郎は満足げに、つりざおと魚かごをかかえて歩き出しました。  すこしいくと、浜に人だかりができていました。見れば、波打ち際に人魚がたおれています。どうやら打ち上げられて海に帰れなくなったようでした。 「なんの話をしているのだ?」  磯太郎がきくと、 「どうやって運ぶのかを相談しているのだ」 「人魚の肉を食べれば

童話「夏の庭と火回りの華」

 あるところに、ある王国がありました。  暑くもなく寒くもなくとても過ごしやすい国です。…

霜月透子
6か月前
21

童話「地獄脱出大作戦」

肝試し 大谷隼人、小学校6年生。  オレは苦手なものがあまりない。  食べ物の好き嫌いも…

霜月透子
6か月前
13

童話「真火の舞 科戸の風」

真火の舞 科戸の風  チリン――。  あの人がほほえみました。それがわかるから、わたしは…

霜月透子
6か月前
13

童話「おばけにだって悩みはある」

1. おばけ屋敷のヒカル  日が暮れてきました。  今にも崩れそうな古いお屋敷に、ちょう…

霜月透子
8か月前
20

童話「クヌギとライオン」

 ずっと一緒にいようね。  ずっと仲良しでいようね。  なんども約束したのに、きみはいな…

霜月透子
11か月前
13

童話「砂ノ術師」

   ・゜゜・:.。..。.:・:゜・:.。. .。.:・゜゜・* さらさら…… さらさらさら…… 小さ…

霜月透子
11か月前
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童話「梅とウグイス」

 今は昔。  たいそうよい香りを放つ梅の花がありました。やわらかくあまい香りがあたりにただようのであります。枝ぶりも細やかに曲がり、とても趣があります。  若い梅の木は姿も香りもすばらしいので、虫や鳥たちがたえまなく訪れ、我こそは梅の姫と親しくなろうと、舞や歌をおしみなく捧げておりました。  蝶が美しい模様の羽を優雅にはばたかせます。 「梅の姫。わたくしの舞をごらんください。わたくしこそ、あなたのまわりを飛ぶのにふさわしいとは思いませんか?」 「あら、そうかしら」梅は枝の