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抽象的な請求項1と具体的な請求項2。実施例は請求項2の説明だけでいいか?【リライト版】

(Q)特許請求の範囲の請求項を以下のように作成しました。
「抽象的・上位概念の請求項1」と「具体的・下位概念の請求項2」
請求項2は、請求項1の引用形式(従属項)として記載しました。

明細書の【発明を実施するための形態】はどう記載すればいいですか?
請求項2についての説明をすれば、十分でしょうか?

(A)そうとは限りません。

明細書はサポート要件(特許法第36条第1項)を満たす必要があります。

つまり、
✔明細書(特に、発明を実施するための形態)の記載内容そのもの
✔その記載内容から一般化できる内容
これらによって、請求項の内容をすべてサポートする必要があります。

本事例で請求項2は請求項1よりも狭い内容です。
請求項2の説明で、請求項1をサポートできるとは限りません。

請求項2についての説明をしたとしても、それで十分とは限りません。

■例

いつもの野菜の例で説明します(笑)
★もっと適切な事例が思いついたら今後記事を修正します。

【請求項1】
野菜をきれいに切れるカッター。
【請求項2】
前記野菜はキュウリである請求項1に記載のカッター。

(【請求項2】は「キュウリをきれいに切れるカッター」と同じ)

この事例で、明細書にキュウリの実施例のみを記載したとします。

この発明の特徴が、野菜の形状に無関係とします。
(この場合でも、請求項2を作ることはあるでしょう。)

キュウリの実施例を見れば、すべての野菜に一般化できるとします。
この場合、キュウリの実施例は、請求項1もサポートします。

一方、この発明の特徴が、野菜の形状に関係があるとします。

例えば、細長い野菜と丸い野菜とで、実施例の内容が異なるとします。
カッターの構成や、作用や効果がそれなりに異なるとします。
つまり、キュウリを野菜に一般化できない場合です。

この場合は、キュウリの実施例だけでは、不十分です。
請求項1の発明をサポートするとは言えない場合もあります。

丸い野菜についての実施例も、記載する必要があると言えます。

■なんでもかんでも記載すればいいか?

どのような実施例を記載すれば、サポート要件を満たすか?
この判断は難しい場合もあります。

では、なんでもかんでも記載すれば、いいでしょうか?

サポート要件を満たすこと自体は簡単です。
ただ、発明の開示と保護のバランスというものもあります。

近年、出願書類のボリュームが増えたと言われます。
このことについて、やや違和感がある方もいるでしょう。
出願書類の「量」の充実と「質」の充実とは、必ずしも一致しません。
補正の根拠を多く盛り込みたいとしても、行き過ぎなものもあります。
いわゆるシフト補正のことも考慮すべきです。

特に、ご自身で特許の書類を作成するときにはご参考にしてください。

<元記事>
抽象的な請求項1と具体的な請求項2。実施例は請求項2の説明だけでいいか?(2016年05月26日執筆)

<関連記事>当ブログのリライトについて
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