“キャタツ”イノベーション③
Kodo
“キャタツ”の演奏法は衝撃の和太鼓スタイルだった。
バンドのギターが抜けた後釜に“キャタツ”を入れるだなんて、どうかしていると思っていたし、さらには、どうやって演奏するのかすらまったくの謎であったわけだが、私は何か誤解をしていたようだ。
自分の目で先生のバンドを観て初めて知った。
“キャタツ”の正面に仁王立ちをし、両手に2本の棒をむんずと握りしめ、まるで和太鼓のようにリズミカルに叩きまくる、というのか“キャタツ”の正しい使用方法だったのだ。
きっと。
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Typewriter
演奏に楽器以外のインストゥルメントを取り入れた曲で“タイプライター”という有名な曲がある。
1950年にルロイ・アンダーソンにより作曲されたこの曲は、「カチカチ」いうコミカルな“タイプライター”の動作音と、「チーン」という“ベル”の少し間の抜けた音色が楽曲に彩りと躍動感をあたえ、聴くものを楽しませてくれる。
ルロイ・アンダーソンは、楽曲全体に“タイプライター”という楽器以外のインストゥルメントを持ち込むことにより、ユーモラスで親しみの持てる雰囲気を曲にまとわせることに成功した。
このような芸当は、他の作曲家には、決して容易にできるものではない。
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先生たちのバンドも同様、”キャタツ”という従来のロックバンド形態には決してないインストゥルメントを取り入れることによって、他のバンドとの圧倒的な差別化を図ることができたというわけだ。
果たしてこのバンドはどんなサウンドなのか?気になった人もいるかもしれない。
簡単に説明すると、ドラムが「ドカドカ」いって、ボーカルは「アーウー!アーウー!」と叫び、さらに“キャタツ”が「カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ」とうるさい、ある意味、衝撃的なサウンドだった、とだけ言っておこう。
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環境音楽
楽器以外のモノで音楽を奏でようという試みは、日本にもある。
例えば、深夜、集団で改造バイクを乗り回すアレだ。
暴走族と呼ばれる彼らは、いつもエンジン音をリズミカルに鳴らしメロディーを奏でようとする。
誰もが知るメロディーをエンジン音でやってしまうのだから、耳を傾けずにはいられないだろう。
否、嫌でも耳に入ってくるという方が正しいのかもしれない。
一部では彼らのことを“珍走団”と呼ぶ向きもあるようだが、これから私は、彼らのことを“暴力温泉芸者団”と呼ぶことにする。
なぜかって?
なんか語呂がいい気がして…。
それに、そう呼べば、国内外のマニアックな連中が手を叩いて喜ぶのだ!
かつて東京には“暴力温泉芸者”という音楽家がいたが、彼は暴走族ではない。
彼は…、彼は“珍奏団”だ。
失礼した。
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“暴力温泉芸者団”(暴走族)の連中は意識していないだろうが、彼らはれっきとした環境音楽を奏でている。
環境音楽の大家である喜太郎氏は自然に触れることで音楽を創造するが、それは彼ら“暴力温泉芸者団”(暴走族)も同じだ。
彼らは感受性が豊かである。
彼らは月や雲を目にするたび、風を感じ星を眺めるたびに、言い知れぬ寂しさや孤独を感じるから、皆で集まって、バイクに跨がり走り出す。
そして結果的に自然に音楽を奏でてしまう。
彼らは徹頭徹尾、芸術家肌なのだ。
彼らの衝動は誰にも止められない!
彼らは自然を愛している!
音楽を愛している!
バイクを愛している!
だけど、誰も彼らを愛してはくれない。
読んでくださり、ありがとうございます😁
関西アンダーグラウンド見聞録
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