“キャタツ”イノベーション②
From texas
先生たちのライブは過去に観たことがある。実はその時も“キャタツ”がステージに置いてあった。
しかし、その時は、ただよじ登って客にアピールする為だけという、“キャタツ”としてはまっとうな使い道だった。
ボーカル氏は、いつも頭に何かの袋をかぶっていて、特異なパフォーマンスをする。
英語でMCをしたり、客をいじってみたり。MCが英語なのは、そのころバンドがfrom texasってことになっていたからだと思う。
そして客をいじる。客は急に英語で話しかけられたりするもんだから、「YES!」か何か言ってその場をしのぐしかない。あのボーカル氏の急襲には、客はみんな冷や汗をかいていた筈だ。
いつも、ボーカル氏は客とコミュニケーションを取りたがった。
たしか、私が友達のせい君と最初にこのバンドを観た時は、ボーカル氏がこっちまで来てお菓子を渡してきたっけ。
*
E.YAZAWA
先生たちが「ハーフの日本人」と言う名の、アメリカの一風変わったロックバンドとライブで共演していた時だ。
その時、先生たちは、特異なパフォーマンスにより、“笑い”と“はてなマーク”を客に届けると、最後、持っているエネルギーのすべてを曲にぶつけてきた!
「うぉー!うぉー!うぉー!うぉー!うぉ!うぉうぉー!」
ボーカル氏が熱唱する。
バンドは、本当にさっきまでと同じバンドかと疑いたくなるほどのタイトな演奏をしている。
客もバンドの演奏に乗せられ、曲にあわせて拳を振り上げる。
エモーションあふれるギターとダイナミックなドラムによる、気迫あふれる演奏が、会場の皆をノックアウトする。
もしこの場に矢沢永吉がいたなら、きっとくちびるを尖らせてうなっていたに違いない。
それ位ライブは盛り上がっていた。
ボーカル氏が“キャタツ”の真ん中あたりまで登って拳を振り上げる。
「うぉー!!うぉー!!うぉー!うぉー!うぉ!うぉうぉー!!!」
ボーカル氏は、歌い、拳を突き上げながら、一段、また一段と、“キャタツ”を登っていく。
それに呼応するように盛り上がる客たち。
バンドと会場の熱気が最高潮となった時、彼は“キャタツ”の最上段にいた。
*
フライ ハイ!
彼は飛んだ。
“キャタツ”の一番上から、飛んだ。
客めがけて飛んだ。
そして堕ちた…。
着地は失敗だった。
地面は彼を受け止めてくれたが、それ以上のことはしてくれなかった。
彼は骨折した…。
*
堕ちるな危険
たぶん頭に袋をかぶっていたせいで足元が見えにくかったんだ、と私は思う。
反面教師である。
もし今後、私の人生で“キャタツ”に乗ってパフォーマンスをする事があった時は、その時は、袋は絶対かぶらないでおこうと思う。
例えば、被るのがプロレスのマスクならズレたりしないだろうが、紙袋やそのへんの袋は間違っても頭に合わせて造られてはいないから、激しく動けば視界が遮られるはずだ。
骨折するのはゴメンだ。
*
4649
これを読んでいるあなたも、注意してほしい。
もし今後、あなたがライブで“キャタツ”に登って客をあおったり、興奮のあまり“キャタツ”の上から客席めがけてダイブする様な機会があったとしても、その時には、決して袋を頭から被ったりなんかしないで!
え?
そんなことしない?!
うそ…。
へー、そうなんだ。
あなた、ちょっと変わってますね!
読んでくださり、ありがとうございます😙