先輩
我が国では先輩・後輩という上下関係が社会に浸透している。
親しい人を家族同然のように扱う国も多いので、なかなか異質な文化であろう。
学校、部活、バイト先、職場。
様々なコミュニティでそれぞれの先輩後輩関係が築かれるのだ。
不思議なことに、時が経つとこの関係性というのは変遷していく。
後輩だった者が先輩になるし、特には期限が満了してそのコミュニティを出ていかなくてはならない場合もある(OBOGという立場も存在するが、少なくとも現役ではなくなる)
例えば、大学生の僕の場合を考えてみると、バイトを始めた1年前は当然最も後輩だったわけだが、今では中堅として、幾つかの業務を20人以上の後輩に教える立場になっている。
今度は下ではなく上を見てみる。
去年お世話になった先輩方はほとんどが職場を去り、仲良くなった4回生の先輩たちももうすぐいなくなってしまう。
先日卒業メッセージ的なものを書きながら少ししみじみとしてしまった。
バイト先ですらこれである。
サークルの4回生が卒業なんてしてみろ、その切なさに耐え切れるのだろうか。
浪人してた僕にとってあの人たちはほとんどが同い年だけど、それでも1年長くこのコミュニティにいた以上間違いなく先輩だった。
初期の頃は例の感染症のせいで同期も全然いない中で本当に良くしてもらった。
一緒にサークルを立ち上げたり、遠征に連れて行ってもらったり、そのついでに観光をしたり。
同期が増えてからもそれは変わらない。
年齢的に飲みに行けるようになった。
某焼き鳥屋の狭い個室や、花火片手に川沿いにて飲んで話した。
アルコールが入るとどんな話も大声で笑えてしまうから不思議である。
今年はサークルをまとめる立場になった。
僕は表面上は何も問題のないような顔をして、裏では結構ピンチということが多い。
そこを見抜いて助け舟を出してくれた。
いつでも味方でいる、そう言ってもらえて安心したのを覚えている。
やはり今年もたくさん一緒に出かけた。
遠征に、飲み会に、競馬場に出かけた。
最近ようやく麻雀を覚えてきたので、いつか一緒に興じたい。
約3年、とにかくお世話になった。
これを今度は自分がする立場になるのだ。
いや、もうできなくてはいけない。
後輩たちがかつての僕のように困っている時、気づいて助けられるだろうか。
相談したいと思ってもらえるだろうか。
競技に関して教えることはできるだろうか。
はたまたサークルの活動とは別で、一緒に遊んで一緒に笑えるだろうか。
やはり難しい。
だいたい大変忙しい4回生の身でそんなにサークルに行けるんだろうか。
でも、
どうすればいいか教えてください、先輩。
‥なんてもう言えないのだ。
伝えられたものを、思い出して、また伝える。
自分なりにやってみよう。
こんなこと本人たちの前で話せない。
それにいざ見送る時になったら気持ちをまとめることなんてできっこないだろう。
だから今のうちに書き残しておきたかった。
年が明けた。
あと3ヶ月弱、先輩との時間を楽しもう。
自分が先輩となるために。