人情味あふれる老舗せんべい店
お話しを伺った方
盛岡せんべい店 佐々木俊幸さん(2023年取材)
オリジナルのプリントせんべい
昭和28年創業の盛岡せんべい店は、昔ながらの南部せんべいに加えてクッキータイプも販売する老舗の名店。
今回は大通店にお邪魔して、佐々木夫妻と長女の幸(ゆき)さんにお話を伺った。
同店ではスタンダードなゴマの南部せんべいと、クッキータイプのピーナッツやピスタチオのせんべい、そしてこの店ならではのプリントせんべいが特に人気を集めている。
10年以上前から販売しているプリントせんべいは、可食性のインクでイラストや写真を印刷した商品。
盛岡の風物詩であるチャグチャグ馬コやさんさ踊りはもちろん、バレンタインやハロウィンのほか、岩手山や石割桜などの柄も揃っている。
「一年を通して人気が出るのは、クリスマスのものと翌年の干支を描いたせんべいです」そう教えてくれたのは、接客を担当している幸さんだ。なかには社長の俊幸さんや、次女が描いたイラストもあるという。
プリントせんべいはオリジナルの柄で作ることもできるため、商店街や企業などからの注文も舞い込む。
さらに一つの柄に対して12枚から対応できるため、「盛岡らしさのある個性的な贈り物がしたい」という個人客からのオーダーを受けることも可能だ。(2週間以上前に要予約)
プリントせんべいを始めたきっかけを俊幸さんに尋ねると、「新しいものに挑戦するのが好きなんです」と、照れくさそうに教えてくれた。
贈る人の思いがこもった個性あふれるせんべいを、「食べるのがもったいない」と飾っておく人も多い。
楽しい思い出作りのために
そんな盛岡せんべい店の店先には、擬宝珠(ぎぼし)を模した観光案内所の目印があり多くの観光客が訪れる。
おすすめの観光スポットや周辺の飲食店など、どんな質問にも対応できるよう店内にはさまざまなパンフレットが常備されていた。
「観光される方は事前に調べていても、地元の人に聞いてみたいという気持ちがあるようで『冷麺がおいしい店はどこですか?』とか、『徒歩で観光するにはどんなルートがオススメですか?』などと質問されることが多いです。ご希望を伺った上で、マップを見せながら案内しています」
こうした細やかな心配りの背景には、「せっかく来てもらったんだから、楽しい思い出を作ってほしい」という温かい人情があった。
一年を通して人気の体験メニュー
さらに盛岡せんべい店といえば、盛岡手づくり村で行っている「手焼き体験」がある。
こちらは国内外を問わず人気があり、取材時にはハワイから20名近くの団体客が訪れていた。
一行は東北各地を巡っていて、雪景色を見ることがツアーの目玉の一つ。
盛岡手づくり村ではうず高く積まれた雪の山を眺めつつ、佐々木社長から熱心に話を聞き手焼きせんべいにチャレンジしていた。
手焼き体験はせんべいの型に生地を挟み、火の上で30秒ずつひっくり返しながら両面をじっくりと焼いていく。
これを6回繰り返すのだが、話しているうちに何度目か忘れてしまうのは「手焼き体験あるある」なのだそう。
焼き上がったせんべいはアツアツで、ツアー客は「熱い!でも、おいしい!」と言って喜んでいた。
ちなみにハワイでは、おいしいを「オノ」、ありがとうを「マハロ」と言うそうで、参加者に教えてもらった取材班は覚えたての言葉を連発して、なんとかコミュニケーションを成立。たとえ言葉がわからなくても、笑顔は万国共通なのだと実感した。
大切な思いをこめて作り続ける
取材を通して、盛岡せんべい店では昔ながらの商品を販売するだけでなく、人と人との心のつながりも大切にしているのだと感じられた。
だからこそ多くの人が訪れ、ここでしか得られない体験とともにお土産を買って帰るのだろう。
佐々木社長は「これまでいろんな商品を作ってきたけれど、大切にしているものは変わりません。その変わらないものを、これからもお客様に提供し続けていきたいです」と語ってくれた。
撮影:佐藤到
盛岡せんべい店
●本社
岩手県盛岡市本町通2-16-2
TEL:019-622-6593
●大通店
岩手県盛岡市大通3-2-30
TEL 019-654-1355
●フェザン店
岩手県盛岡市盛岡駅前通1-44
TEL 019-652-2047
★手焼き体験はこちら★
盛岡手づくり村内 盛岡せんべい店
岩手県盛岡市繋字尾入野64-102
TEL 019-689-2562
※手焼き体験は盛岡手づくり村内の店舗で、土日祝のみ行っています。