失恋彼女に片思い
お願いだからすぐに来て! と呼び出されたので駆けつけてみたら、顔を見るなり号泣された。
一体何事かと思い、俺は焦って彼女に駆け寄る。
とりあえず座ろうと促して、二人でベンチに腰掛けた。
不明瞭でたどたどしい説明を辛抱強く聞いてる内に、だんだん話が見えてきた。どうやら失恋したようだ。
心配をして損したと少し不満に感じたけれど、こんな状況で頼られるのは悪くない。
「あたし、もう絶対に恋なんてしない!!」
夜空の星が奇麗に見える公園で、泣きながらそういった彼女の振る舞いはまるで子供のようだ。
「そんな可愛げのない顔すんなって。それじゃあ男が寄ってこねえぞ? 今度はもっと良い出逢いが待っているかもしれないぜ?」
例えばほら、目の前に。
とは、言えるわけもないが。
俺の言葉を聞いた彼女が、大きく頬を膨らませる。
「いいわよ、誰も寄ってこなくったって。あたしはもう、一人で生きて行くわよ! 男なんかいるもんですかっ!」
そういって泣きながら、俺の目を見て鋭く睨んだ。
「……不細工な顔」
ひどく傷ついてるその眼差しに、そんな言葉が口をつく。
本当は濡れた瞳に見惚れたくせに、口では真逆の事を言う。
言ってしまって気が付いて、流石に焦って言葉に詰まった。
いくら素直になれないからって、天邪鬼にも程がある。
こんなつもりじゃなかったと、慌てて機嫌を取ろうとするが何を言っても後の祭りだ。
「あんですってぇぇぇ~~~!!」
その一言に、当然烈火のごとく怒り狂って。
彼女はすくっと立ち上がり、目を吊り上げて、俺を容赦なく殴った。
「怒んなよ! 俺はただ真実を……。」
「わぁぁぁぁぁー!」
奇声と共に、あまり痛くも無い拳が無数に降って来る。
「やっやめろって! おい!!」
「ばかぁぁぁぁ! このぉぉ!!」
子供泣きで顔をぐしゃぐしゃにしながら殴ってくる姿は本当に子供だ。
でも、可愛く思えてしまうのは何故だろう?
「おい! やめろって!」
何処のどいつだか知らねーが。
こんな可愛い女を捨てるとは何て馬鹿な男だよ。
ま、お前なんかにゃこの魅力。永遠にわかりゃしねーだろうケド。
なあ、どうしたら俺はお前に意識してもらえる?
それが未だに分からないから友達の座に甘んじてるが、いつか振り向かせて見せるから。
幸せにするから、待っていて……。