それはいつかの、恋心
友達以上、恋人未満。
そんなあいつが、私を好きな事。
それを知ってて、自分からは動きを見せないの。
ある日、私あいつと一緒にはゴミ捨て作業を行っていた。
風が吹き抜ける渡り廊下。
外に置かれた業務用ポリバケツに、教室用のごみ箱をひっくり返して中身を捨てる。
ポンポンというよりも力強くごみ箱の底を叩き、中身が全部出きった事を確認する。
ごみ箱を抱え直した私は、ポリバケツに背を向けた。
隣で同じ作業をしていたあいつも私に倣い、後ろから私についてくる。
「なあ」
数歩足を進めたところで、あいつがあたしを呼び止めた。
いや、止めたつもりはないんだろうが私が勝手に止まってしまった。
「何?」
私はあくまで何の気なしに振り返る。
本当は内心、ドキドキしていた。
もしかしたら瞳だって揺れてたかもしれない。
だって、絶好のタイミングじゃん? シチュエーションだってばっちりよ。
夕暮れ、掃除当番、二人きり。
こんな、こんな三種の神器のような条件がそろってる今、告白を期待しない方がおかしい!
心臓が高鳴って、期待が全身を包んでいた。
だけどそんな感情はおくびにも見せずに、白々しくもきょとんとした風を装ってあいつの顔をじっと見る。
あいつが、息を吸ったのが分かった。
だけど、目線は私を捉えたままで。
ゆっくり、けれどはっきり告げた。
「好きだ」
と。
背後の夕日も手伝って、やけにあいつがかっこよく見えた。
正直、あれは今でもずるいと思う。