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蜜蝋バターができるまで

父から日本みつばちの巣箱を受け継いで早4年。
ずっと商品化したいと願い続けてきた蜜蝋商品が完成しました。
なんにでも使える万能ワックス「蜜蝋バター」のご紹介です。

蜜蝋ってなに?

蜜蝋(みつろう)とは、みつばちが巣を作るために花の蜜を材料にして体の中で作り出す天然のロウのこと。
浸透力・保湿力・殺菌力に優れ、栄養面では花粉由来のビタミン、鉄分、カルシウムなどミネラル類が豊富。
はちみつの10分の1程度の量しか作られない、とても希少な天然素材です。

はちみつを採取した後に残るのが蜜蝋(みつろう)

蜜蝋って、実は食べられるんです。
巣蜜(コムハニー)といって、巣ごと切り取って巣と蜜を丸ごと食べる食べ方があったり、フランスの伝統菓子カヌレは蜜蝋を型に塗ることで表面のカリッと感を出すんだそうです。

古くから趣味で養蜂をされてる方の中には、普通のビン詰めのはちみつより巣蜜の方が好きだという方も多くいらっしゃいます。
蜜蝋の中にある豊富な栄養分が人気の理由のようです。

巣蜜(コムハニー)

食べられるほど安心安全で栄養豊富な天然素材、蜜蝋。
そんな希少な蜜蝋を、捨てることなく商品化したい!
ただ、採れる量がとても少量なことと、ゴミや不純物を取り除く精製作業が大変なことが重なって、いつかいつかとずっと後回しにしてきました。

でも後回しにしてきたおかげで、父の時代から毎年ストックし続けてきた蜜蝋がついに冷凍庫パンパンになるほど溜まり、量の問題はある程度クリア。

あとはどれだけキレイに不純物を取り除けるか。
あーでもない、こーでもないと試行錯誤しながら精製を繰り返して、やっと原材料としての蜜蝋が完成。

ゴミや不純物を取り除いた蜜蝋。
採った巣箱によって色合いが異なります。

精製作業中に驚いたのは、今まで嗅いだことのあるどの香りとも違う、なんともいえない芳醇な香り
思わず食べてしまいたくなるほど美味しそうな甘くて深い香りに、心身ともに癒されました。

蜜蝋がアロマキャンドルとして高い評価を受けている理由がうなずけます。


クリームかワックスか問題

蜜蝋を使って作りたい商品は、クリーム、ワックス、キャンドル、石鹸と、いくつもありました。
キャンドルにするとかなり高価な商品になることと、石鹸はまだハーブの自家栽培が実現できていないので、まずはクリームとワックスから着手することに。
そして悩ましい問題にぶち当たることになります。

ラベル表示義務のことなど詳しく調べていると、クリームという商品はハンドクリームやボディクリーム、リップクリームなどの化粧品の分類になることが発覚。
お肌に直接つけるものは全て化粧品に該当し、化粧品としての規定をクリアする必要があります。

化粧品認可基準には「原料の高温加熱滅菌処理」というものがあります。
原料を高温加熱して滅菌し、安全性を高める処理ですが、日本みつばちの蜜蝋は熱に弱く、融点は62~65℃。

つまり化粧品としてクリームで販売するということは、高温加熱滅菌処理により蜜蝋の天然成分が大きく損なわれてしまうことを意味しています。

家具や革製品用のワックスなら、お肌に直接つけるものではないので雑品として販売でき、蜜蝋の天然成分は損なわれずに商品化することが可能でした。

んーーー、なんて悩ましい。

クリームとして販売しているものと、ワックスとして販売しているもの、どちらを手に取りやすいかというとやはり、クリームを手に取る機会の方が圧倒的に多いように感じます。

私自身、年齢を重ねる毎に冬場の乾燥がひどくなっていて、保湿力は高いのにベトベトしない天然成分のみのクリームが欲しくてたまらなかったのです。
蜜蝋の主成分は天然のロウ(ワックスエステル)ですが、実は人間の肌にもワックスエステルが20~30%含まれているんだそう。
お肌と同じ成分だからこそすんなり馴染んで浸透力が高く、負担も少ない。

しかも、日本みつばちはプロポリスを作りません
プロポリスとは、みつばちが巣を外敵や細菌などから守るために、植物の新芽や樹皮などを原料に自ら作り出す天然の抗菌物質
プロポリスには刺激性があるため、プロポリスを含まない日本みつばちの蜜蝋はお肌にとても優しいのです。
日本みつばちの蜜蝋だからこそできる商品をお届けしたい、そう願って進んでいました。

日本みつばち

品質を落としてもきちんとお客さまに届く商品か、品質はそのままだけどお客さまに届きにくい商品か、どちらを選択するか随分悩みましたが、一番大切なのはより売れる商品を作ることではなく、日本みつばちの蜜蝋という希少な天然素材をなるべくそのままの形でお届けすること

化粧品としての認可は取らず、家具や革製品用のワックスとして販売することにしました。

商品名は自由に決められるので、あえてワックスという言葉は使わずに「バター」と名付けることで、蜜蝋の豊富な栄養分をイメージしやすくしました。

食べられるほど安全な天然成分のみで作っていますが、美味しくはないので食べないでください。
そして製品製作の行程上、お肌への使用は自己責任でお願いいたします。


オーガニックホホバオイルとの相性

蜜蝋とどんなオイルを合わせるかは、慎重に選定しました。
蜜蝋そのものに豊富な栄養分が含まれているため、あまり過度な内容にならないよう気をつけました。

ホホバは、砂漠で自生する非常にたくましい植物で、乾燥した過酷な土地で生き延びるために地中深くに根を張り、表皮をロウ状の物質で覆って内部の水分を蓄えるのだそうです。

また出てきましたね、ロウ。
ホホバオイルは「オイル」と言われていますが、実はオイルではなく、植物オイル15,000種の中で唯一の「液状ワックスエステル」。
蜜蝋と合わないわけがありません。

ホホバの実

フランスのオーガニック認定機関「エコサート」の認証を取得した原料を使用し、国内製造100%ナチュラルなオイルです。
精製したクリアホホバオイルを使うことで、蜜蝋の天然成分を存分に生かしながら、伸びがよくベトつかない、サラッとした使用感に仕上げました。


こだわりのパッケージ

実は一番大変だったのは、パッケージデザインでした。
プラスチックフリーで極力ゴミを出さないパッケージにしたいという思いが最初からあったので、デザイナーさんと相談しながら候補に上がったのが「シードペーパー」。

シードペーパーとは、紙ゴミとなった古紙を再生し、さまざまな花の種を漉きこんだ、古紙100%の環境にやさしいリサイクルペーパーです。
ひと晩水につけて土に埋めると、数日で発芽し、やがてお花を咲かせます

漂白材や染料は不使用。
種子はNon-GMO(非遺伝子組み替え)、非消毒種子。
発芽率は75%以上。

使い終わったパッケージが、ゴミにならずに土に還る
やがて芽が出て花が咲き、蜜源としてみつばちに還元されていく。
そんな商品ができたらなんて素敵だろうと、夫と2人で興奮しました。

けれど、シードペーパーは種を漉き込んでいるため少し厚みのある和紙で、加工や印刷範囲などデザインと折り合わないことも多く苦戦しました。

シードペーパー部分を小さくすればデザインの自由度は上がるけれど、それではみつばちや環境への還元率が下がってしまう。
何度も何度もデザイナーさんに修正してもらいながら、最終的に全面シードペーパーを使って包むデザインで決定しました。

サンプルを見せた家族からは、「高級菓子みたい」との感想を頂きましたが、あちこちから「よくここまで考えたね」「ムダが一つもなくてすごい」と高評価をいただいています。


ジャーマンカモミールの種

蜜蝋バターのパッケージに漉き込まれている種は「ジャーマンカモミール」です。

ジャーマンカモミールの花

ジャーマンカモミールは、高い抗炎症効果をもつハーブです。
アレルギーの薬と呼んでいいほどのパワーがあり、炎症が起きている肌を鎮めるのに役立ってくれます。

春、秋に種を蒔くことができ、5月頃に開花し始めます。
風通しが良く乾き気味の環境で日当たりのいい場所を好みますが、夏の暑さには注意してください。

詳しい育て方はこちら。


リユース割引

蜜蝋バターのアルミ容器は、捨てずに再利用をおすすめしています。
空になったアルミ容器を郵送くだされば、リユース割引いたします。

初回購入時に届く梱包材をそのまま再利用していただくため、宛名ラベル等は全て再剥離シールを使用しています。
きれいに剥がれますので、ご注文後、切手を貼ってポストへ投函してください。

【リユース(Reuse)とは】
一度使ったものをゴミにしないで何度も使うことです。
限りある資源を大切に使い、ゴミの量を減らすことで自然環境への負担を抑える取り組みの一つです。


調和する商品作り

初めてゼロからの商品作りを経験しましたが、いや~大変なものですね。
楽しいけど。
嘘やろ?みたいなトラブルが何度起きたことか…。
全然思った通りに進みません。

けれど、上手くいく事も、いかない事も、最後にはピタリとハマるピースのように調和する商品作りを目指して進めてきました。
もうこれ以上ないくらい、ピタリとハマった気がしています。

ここでご紹介した事以外にも、まだまだこだわった部分はありますが、全てを言葉にしてしまうのは野暮なので、是非手に取って感じてみてください。



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