ブラック・メイデン:第一話 バレントバカボンド
「旦那さま、何かありましたか?」
一等席の個室席で、オレの斜向かいに座るオレの秘書が気まずそうにこちらを見た。先代の領主である親父が死んで、早半年。その跡を継いだオレはまだ部下の信頼を得ていない。まだ二十四の若造ってこともあるだろう。オレの人生計画では大学院で研究するはずだったのに、思ったより早く、親父は死んだ。人生はそんなにうまくいかないものというのは真である。まあ、アレコレ考えるのはよそう。信頼をもらっていない若造は、あまり自分の機嫌を表に出さない方が良いに決まっている