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R.E.T.R.O.=/Q #2

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ズドン!

男が宙空のポータルから三点着地した。クレーター状の着地痕が生じている。
私達は踵を返して走り出す。

早い。《評議会》がこちらの動きを察知するにしては、あまりに早すぎる。これは一体どういうことだ。奴らもターゲットを捕捉、いや、抹殺する為に座標を割り出していたというのか。だがそれにしてもこのタイミングはまるで……

「あの扉だ!飛び込むぞ!」

エドが私の手を掴む。この街で私達が使える能力の一つ、《跳躍》だ。特定の扉は少し離れた別の扉へとリープする「門」となり、扉を閉めれば「門」は消える。これを繰り返すことで追手からの距離を引き離すことができる。
だが、今は……今だけは!

「エド!」
「わかっている!」

何処かにいるはずの、この世界のいち住人に過ぎない適合者。その人物を確保してから撤退しなければならない。奴が先に見つけてしまえば、易々と殺してしまうだろう。
《跳躍》を繰り返し、逃げながら探すしかない。無数に行き交う人々。志穂(シホ)の遠隔察知と念波ナビゲーションだけが頼りだが、いまだサインは無い。

……バタン!……バタン!……バタン!

《跳躍》に使える扉は私達にだけ光って見える。
空中庭園を、逆様の階段を、オフィスの廊下を、住宅の中を、全力で駆け抜ける。

……ドゴォン!……ガシャァン!……ズドォン!

後方から凄まじい破壊音と悲鳴が断続的に聞こえてくる。追手が(おそらくは拳の一撃で)遮蔽物と通行人を無差別殺戮破壊しながら追ってきているのだ。ということは、奴もターゲットを発見できていない……? 既にターゲットが巻き込まれて死んでいる可能性については、この際考えないことにする。
次の扉は……前方数メートル!

その瞬間、行く手の床が爆砕した。瓦礫と粉塵が舞う。ほとんど垂直射出に近い勢いで飛び出したその男は、空中で前方回転すると、轟音とともに私達の前に着地した。

《永久平和評議会》評議員、コンスタンティン神無月。

忘れもしない、その呪わしき名。

神々しい白スーツに白ネクタイ。正確無比に撫で付けられた漆黒の七三分け。あれだけの破壊を繰り返してなお、その容姿には一分の乱れも無い。

「久しぶりですね、オレンジ・毘沙門……そしてエドゥアルト・ホワィ・ワーラーナーバークー。」

奴の握った拳がメキメキと音を立て、昏い双眸が私達を射抜いた。


【#3へ続く】

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