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失恋して目の前が真っ暗なあなたとわたしへ


わたしもあなたと同じです。そして、同じ誰かは山ほどいます。あなたはひとりじゃない。わたしも、誰もひとりじゃない。

別れて3日目、やっと家族以外と会う気になった。別れる前から相談に乗ってもらっていた小学校からの幼なじみ。彼女はちょうど1か月前に失恋をしている。わたしと同じような内容だ。

お互い吐き出すように会話をして、笑って、泣いて、悔しんで、怒って、手の届かなくなった相手に思いを馳せている。
客観的に見ればそれはもう絶対に痛い光景だし、自分が第三者なら相当イライラしてしまう内容だったと思う。

「こんな風に引きずるべきじゃない」
「向こうが求めたくなる頃には別の幸せを掴んでるはず」
「もうあのときの幸せは戻ってこない、絶対に」
「こっちから願い下げって思わなきゃいけない」

わたしたちは全部を分かっていた。

それでも、それでも彼じゃなくちゃいけない。
"今"は。

大事なのは、今。
こんな風にみっともなく過去に縋って前を向けずにいるわたしたちも、今、そうであるだけで、極論10年後にはとっくに忘れているはずだ。100%、絶対に。

それなら今なにを考えていてもいいと思う。明日、来週、来月、来年には少しでも変わっているのであれば、今この瞬間は何を考えていようといい。だって仕方がない。

わたしたちはただ、人をせいいっぱい好きになった。

愛して愛してたまらなくて大好きな人を失った。

3日や1ヶ月でどうにかなるほど簡単な愛じゃなかっただけだ。今引き摺っていることの何が悪い。何も矛盾してない。

だからわたしたちは、今のわたしたちを受け入れることにした。

「こんなになるまで人を好きになったの、わたしたちすごいよね」
「こんなに可愛くて一途で大事に思ってる彼女を捨てるなんて向こうが損してるよね」
「周りにどう言われようとまだ好きだし戻れないかって思うよね、だって大好きだもん、今も」

そうやって素直になって受け入れることでわたしたちは自分を否定せずに済んだ。自分だけは自分の味方であるべきなのだから。一人ではきっと気づけないこの答えに、彼女が一緒に辿り着いてくれた。数年ぶりに二人で会うような彼女だけど、この時間をくれたのは彼との別れがあったからだ。少しだけ、その事実に感謝した。

彼と付き合っている時には視野が狭まって気付けなかった周りの大事な人たちの、優しさや暖かさや大切さ。"恋は盲目"、の言葉は悪い意味なんだとわたしは今になって分かった。
彼に夢中になっていた一年半は決して無駄じゃないし輝いていたし、特別な幸せの中で生きていられた。けれど、その分わたしは何かを見落として、見ないふりをして、気付けずにいたんだと。そしてそれは彼と同じくらいに大切で貴重であることに。
後から気付くような間抜けなわたしを、「もう遅いよ」なんて言わずに暖かく迎えてくれる家族や友達に、心からありがとうを思った。

わたしは彼と一緒にいたいがために、今年の夏、休日を合わせようと転職をした。前職は子供の頃からの夢である職業だったけど、それを捨てて、今は興味も楽しさも感じられない仕事に就いている。彼と過ごす週末のために自ら選んだ道が、今はわたしを苦しめている。

けれど、前職で出会った大切な人たちは、こうなったわたしのために時間を使おうとしてくれた。会いたいと思う人がたくさんいた。わたしが前職で過ごした時間は無駄じゃなかった。自分が手放した居場所だけれど、その人たちは決して変わっていなかった。

彼との別れで失ったものは大きい。
それはもう、目眩がするほどに大きい。毎日目が覚めれば死にたくなるし、涙に耐えて仕事をして、退勤をすれば泣きながら家に帰る。楽しみすら全て失われた気がして、生きる気力もなくなる。それくらい、彼のことが大切で、わたしのすべてだった。

それでも、今、わたしが得ているものも大きい。
呆れながらも「おかえり」をくれる家族が、いつだって連絡をくれてそばにいてくれる友達が、話を聞いてくれる大人も前職の仲間たちも、今の職場の先輩も。
この状況だからこそ得られたありがたみや愛おしさは、もしかすると、失ったものよりも大きいのかもしれない。

別れは苦しい。けれど、それだけじゃないと知った。

この経験が復縁に繋がるのか、はたまた彼を捨てて新たな幸せへと繋がるのか、今の私には分からない(し、何なら100%復縁に繋がって欲しいと思ってる)けど、ただ、今はこの中で生きていくしかわたしにはない。

生きるなら、少しでも疲れない生き方がいい。

まだまだ悩むし落ち込むし泣くし、弱音も泣き言も数え切れないほど零すだろうけど、それでもわたしは1秒1秒生きている。確実に、歳を重ねている。

そんな事実だけでふと息がしやすくなることが、あるのかもしれない。


そんなことに気付いた3日目の夜だった。



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