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『ボルテスⅤレガシー』超電磁リスペクトTV版シリーズ前半概説

 2024年11月12日〈火〉より、東京MXで放送開始。フィリピンで放送された全90話を全20話に再編集。
 「「ボルテスV」は、おそらくロボット物では初めて社会的テーマを正面にすえた作品であろう。戦争を少年時代に経験した私にとって、それは切実なテーマでもあった。戦争を知らない世代に、戦争の持つ、また生み出す非劇を、人が人を差別する事の不当さを伝えたかったのである。自らの命を投げ捨てても、そうした悲劇をなくすために、圧に立ち向かうラ・ゴールの姿は、「ダイモス」にも、「ベルサイユのばら」にも通じるものがある」(長浜忠夫/『ROMAN ROBO ANIME CLIMAX SELECTION コンバトラーV・ボルテスV・ダイモス』・1980年)。
 『ボルテスⅤレガシー』は1977年に放送されたロボットアニメ『超電磁マシーン ボルテスⅤ』を実写でリメイクしたもの。『ボルテスⅤ』が描く「社会的テーマ」は、フィリピン人にとっても切実なテーマとなっていることが窺える。

第1話「宇宙からの侵略者」
 「各国が死力を尽くしていますが、戦力の差があり過ぎます」。
 ボアザン帝国が地球への侵略を開始した。現状、地球側の軍隊は敗北しつつある。ロビンソン司令官は最後の切り札、ボルテスⅤに望みを託す。
 ボルテスチームはスティーヴ・アームストロング、マーク・ゴードン、ビッグ・バート・アームストロング、ジェイミー・ロビンソン、リトル・ジョンの5人で構成。ボルテスⅤの制御はスティーヴが行う。
 ボアザン帝国の兵器、ビーストファイターとはAIを搭載したロボットのこと。超パワーと超スピードでどんな敵であろうと倒せるように設計されている。ビーストファイターの呼称は地球側が付けたもので、ボアザン側ではペットと呼んでいた。ボルテスⅤの戦いがこれから始まるというところで、シリーズの第1話は幕を降ろす。

第2話「父フロスガーの秘密」
 「侵攻から遡ること20年前。自由のために戦うヒーローたちの物語はここから始まる」。
 アームストロング兄弟の父、ネッドのボアザン帝国時代を描いたエピソード。その頃のネッドはフロスガーという名前で、帝国の科学大臣を務めていた。
 「既にお気付きかもしれないが、ボアザン星人には頭に角のある種族と、角のない種族があり、いつの頃からか角のある種族が角のない種族を支配するようになったのです」(『超電磁マシーン ボルテスⅤ』第28話)。
 『ボルテスⅤ』における「社会的テーマ」のひとつに、「人が人を差別する事の不当さ」がある。皇帝の寵愛を受け、その後継者とされたフロスガー。しかし、彼の頭には角がなかった。角のない者は貴族の奴隷としてこき使われ、惨めな一生を送るしかない。労働階級に落とされたフロスガーは、流刑地の鉱山へと送られる。
 「お前たちに約束する。牢奴を解放しに必ず戻ると。絶対にだ!」。
 鉱山には圧政と戦う反乱者たちがいた。彼らの希望となったフロスガーはボアザン帝国を脱出、辿り着いた地球でマリアンヌと出会う。プリンス・ザルドスのザルドスとは「強き者」という意味。
 「ロザリア、気を強く持ちなさい。自分の目でしっかりと見て確認をするまでは分からないのだから。フロスガーが死んだなどと信じるのはまだ早いわ」。
 オリジナルと異なり、序盤で明かされるフロスガーの過去。カトリックの「影響」が強いフィリピンでは、事実は「目」で見たものの中に存在する。

第3話「父ネッド・アームストロングの秘密」
 「あなたは強いわ。銃で撃たれても平気だった。脱出して生き延びて、この星に辿り着いた。だからそれを表せる名前がいいわよね。名前から想像出来るように」。
 地球に辿り着いたフロスガーはネッド・アームストロングと名前を変える。アームストロングは銃で撃たれても平気な強い腕から。ネッドはマリアンヌの死んだ父の名前。ボアザン帝国との戦いに備えて、戦闘用ロボットの開発がスタートする。
 それから「8年後」。ネッドとマリアンヌの間には2人の子どもがいた。マリアンヌは現在3人目を妊娠中。しかし、ネッドは仲間との約束を果たすため、ボアザン帝国へと戻っていく。
 「10年後」。ボルトイン型の超電磁マシーン、ボルテスⅤが遂に完成。同じ頃、プリンス・ザルドスは皇帝ザンボジルから初任務となる地球の征服を命じられる。「フロスガーなどを匿い、この私の怒りを買ったことを地球の奴らに後悔させてやるがいい!」。
 そして物語は第1話へと繋がる。

第4話「宇宙からの侵略者Ⅱ」
 「この宇宙は彼らに大きなものを用意している。彼らは宿命を背負って生まれてきたんだ。それはボアザンから来たネッドと同じさ」。
 訓練をしていないリトル・ジョンが「決められた運命」に従い、ボルテスチーム5人目のメンバーとなる。担当はロボの管理。ラストのボルテスⅤ対ドクガガ戦では、マークが得意の超電磁ストリングで活躍。
 「マーク、君もよくやった。自慢に思うよ」。
 家族のいないマークに、声をかけるスミス博士の友情。マリアンヌの口癖は「健やかに、勇敢に、安全に」。

第5話「苦闘への前進」
 「やはりありました。地球人は秘密基地を作っていた。我々の攻撃に備えてね」。
 地球侵略を一気に進めるため、ザルドスは訓練中のビッグファルコンを襲撃。スカールークを見たスミス博士、「ドクロ……死の象徴か?」。戦いの中でアームストロング兄弟の母・マリアンヌが命を落とす。ボルテスバズーカ初使用。
 「あのバリヤ、我々の技術を模倣して作ったものと思われます」。
 『ボルテスⅤ』の世界では、フロスガーの亡命によりボアザン帝国の「技術」が地球に流出している。戦闘用ロボット・ボルテスⅤも設計したのはフロスガーだった。この回からエンディングに日本語の曲が付く。

第6話「魔のシャドウ必殺剣」
 「あのビーストファイターは刀を振り下ろす時、一瞬だけど隙が出来る。そこを突いて仕掛けるんだ。その時に使うのは胡蝶返しだよ」。
 侍と同じ動きをするビーストファイター・ガルドに、ボルテスⅤは「胡蝶返し」で対抗する。「胡蝶返し」はビック・バートが預けられた寺で、僧侶から教わった技のひとつ。マークの母親が失踪した真相が今回明らかに。マリアンヌの墓の隣にはネッドの墓も建てられている。

第7話「戦艦ミカサが危機を呼ぶ」
 「それが過剰な自信だったなら違います。ボルテスⅤのパイロットたちは力がついたと勘違いして、次の戦いでは油断することでしょう。その油断を利用して、立て直す隙を与えず一気にケリをつけるのです」。
 ボルテスチームを油断させるため、あえて撤退を命じるザンドラ。ダイネーグは2体のビーストファイター、ダイガとネーグが合体したもの。ボルテスチーム6人目のメンバー、オクト・ワン登場。

第8話「ボルテス合体不可能!」
 「更にこのビーストファイターが持つエネルギーは、機体の合体を妨害します。つまり敵が合体して最終兵器の形になるのを阻止できるのです。それだけではありません。敵の戦闘機と搭乗しているパイロットのエネルギーを吸収してしまえるのです」。
 ボアザン帝国はボルテスⅤの合体を阻むビーストファイター・ナマズカを開発。だが、スミス博士には隠し玉・ウルトラマグコンがあった。設計者はネッド・アームストロング博士。リトル・ジョンの頭脳は父親譲りだったというエピソード。

第9話「帝国殿下のプレゼント」
 「父さん、質問に答えてくれないかな。父さんはどこから来たの? どうして今、帰ってきたんだよ?」。
 ネッド・アームストロング博士が地球に帰ってきた。だが、息子であるスティーヴは彼を偽者と疑う。
 「地球人の心は脆い。そして簡単に他人を信じる。更には家族、特に自分の親を大切に思い敬う」。
 家族を敬い、愛することは弱点にしかならないとザルドス。彼にとって父親とは憎むべき相手でしかなかった。スティーヴの誕生日は2002年8月16日。ビック・バート2004年5月8日、リトル・ジョン2012年9月10日。

第10話「謀略の父が地球を狙う」。
 「スパイ活動で情報を得て、パイロットの父親に似せアレを作った」。
 地球に戻ってきたネッドは、ザルドスが作った偽者(アンドロイド・フロスガー)だった。アンドロイドはスミス博士を殺害し、ボルトマシンに爆弾を仕掛ける。
 「彼は友人だ。よく知っている。それに、一緒にいて落ち着ける相手なんだ。だが今のネッドはどうしてなのかは分からないが、一緒にいると落ち着かない」。
 「一緒にいると落ち着かない」という理由で、ネッドを怪しむスミス博士。事実、オクト・ワンのセンサーはアンドロイドのバイオメカ信号を感知していた。「目」で見ただけでは分からないものが、この世界には存在する。スミス博士の場合、スキャン装置の故障や、監視役の失踪も根拠となったようだ。
 スミスの死に対するマークの反応は、第4話でのやり取りを踏まえたもの。家族のいないマークにとって、博士は「一緒にいて落ち着ける相手」の一人だった。

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