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『冷凍凶獣の惨殺(原始獣レプティリカス)』(1961年)

 「ラップランドの奥地で銅を求めて禁断の凍土を掘り起こす技術者達。これが語るも恐ろしい物語の始まりだった」──。
 デンマークの怪獣映画『冷凍凶獣の惨殺』(1961年)。本作にはデンマーク公開版とアメリカ公開版の2つのバージョンがある。デンマーク版のランニングタイムはアメリカ版よりも10分長い92分。配役も一部異なる。デンマーク版の見どころはレプティリカスの飛行シーン。

デンマーク公開版タイトル。
空飛ぶレプティリカス。アメリカ版ではカットされた。

 アメリカ公開版はグロテスクな描写が増えている。レプティリカスが酸のスライム(分泌液)を吐く能力はアメリカ版で追加されたもので、怪獣が民家の男性を呑み込む場面もデンマーク版にはない。

アメリカ公開版タイトル。
アメリカ版より、酸のスライムを吐くレプティリカス。
アメリカ版より、レプティリカスが人間を食べるショッキングシーン。
デンマーク版では民家の住人は巨大な足に踏み潰される。
実物大の足を使った撮影。

 劇中の説明によるとレプティリカスは7000万から1億年前に誕生した、ハ虫類からホ乳類への過渡期にある生物。大きさは約30メートルでヒトデのような再生能力を持ち、バラバラに吹き飛ばされても各1片から個体を完成させる。
 「コペンハーゲン市民にお知らせします。冷静に行動して下さい。ハッシング警察署長と軍隊の指示に従い、外出はしないこと」。
 デンマークは第二次世界大戦時、ナチス・ドイツに占領されたことがある。首都を蹂躙するレプティリカスはナチスの暗喩か。国連から来た監査役、マーク・グレイソン准将がバルジの戦いの功労者という設定も興味深い。映画のクライマックスは連合軍VSナチスの再現となった。アドルフ・ヒトラーの自殺は薬物と拳銃の併用によるものだったが、レプティリカスも1ガロンの薬で昏睡状態に陥る。ラストは海の底で再生するレプティリカス。デンマークは依然、怪獣の脅威に晒されている。

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