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ジェイ・シムズのSF世界──『人喰いネズミの島』(1959年)


『人喰いネズミの島』(1959年)タイトル。

 「門の外には2~300匹もの巨大なトガリネズミがいるのよ。あれは怪物よ。大きいのは50キロもあるの」。
 ジェミニ国際映画テレビチャンネルで『人喰いネズミの島』(1959年)を配信。ドライブインシアター用に作られた怪物映画で、人喰いネズミは犬にネズミの毛皮を着せて表現。2012年には続篇『巨大ネズミの島』が作られた。監督は『大蜥蜴の怪』(1959年)のレイ・ケロッグ。『大蜥蜴の怪』では撮影に本物のメキシコドクトカゲが使われている。

『人喰いネズミの島』(1959年)の広告。『大蜥蜴の怪』(1959年)と2本立て上映された。

 「人口増加の抑制さ。今現在は問題ない。だが将来的にな」。
 トガリネズミを突然変異させたクレイグス博士の不可解な実験。博士の本来の目的は生物を小さくして、人口増加を抑制することにあった。
 「24時間後にはこの島には1匹だけ残る。その1匹も飢餓で絶える。これが人口過多の行き着く先だ」。
 人口過多の行き着く先は、飢餓による全滅というクレイグス博士。食料不足を解消するため、人間を小さくするというアイディアは『ウルトラQ』の「1/8計画」を先取りするものだった。原案・脚本のジェイ・シムズは、1962年には第三次世界大戦後の世界を舞台にした『The Creation of the Humanoids』を手がけている。人口減少を背景に、人類とヒューマノイドの関係を描いたストーリーは現代にも通じる内容となっていた。この年、シムズは核戦争の行き着く先をテーマにした『性本能と原爆戦』にも参加している。

『The Creation of the Humanoids』(1962年)
ロボットは『世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す』(1956年)で使われたスーツの流用。
核戦争後のパニックを描いた『性本能と原爆戦』(1962年)。

 「俺は自分自身や、やるべき事しか興味を持たないんだ」。
 映画は「スウェーデン」出身のアンと、スローン船長のロマンスも見どころのひとつとなっている。ラストは人口過多を気にしない、アメリカ人の自由な生き様を肯定して幕。

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