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『合身戦隊メカンダーロボ』第1クール概説

 YouTubeの【公式】メカンダーロボでリアルロボットアニメの草分け的存在『合身戦隊メカンダーロボ』(1977年)を配信。監督/新田義方。

第1話「コンギスター軍団日本大襲撃」
 「地球は今や、その95パーセントがコンギスター軍団の手に落ち、残るは日本だけとなってしまったのである」。
 オリオン星雲内にあるガニメデ星から、地球侵略を目指してコンギスター軍団が派遣された。彼らの圧倒的な科学力と戦力に、全滅目前の地球防衛軍。しかし、総司令長官山本にはたったひとつ、微かな希望が残されていた──。架空戦記的なストーリーに『宇宙戦艦ヤマト』(1974年)の「影響」が窺える。シリーズ構成は本田毅・陶山智・海堂清彦の連名。
 「やはり敵の静止衛星は小さなロボットの小型原子力エンジンにまで反応をして攻撃してくるのか」。
 原子力エンジンで稼働するメカンダーロボは、オメガミサイル対策で3分以内にパワーアウトしなければならない。海堂清彦のパイロット脚本は宇宙戦争の時代を強く意識したものとなった。

第2話「謎の戦士、ジミーオリオン」
 メデューサ将軍とジミー、母と子の15年ぶりの再会を描く。現在17歳のジミーは実はガニメデ王家の末裔だったという設定。コンギスター軍団のロボットは空母ロボと呼ばれている。
 作画監督の二宮常雄はピー・プロで動画デビュー。タツノコプロ移籍後、1972年には『科学忍者隊ガッチャマン』に参加。
 「その頃のガニメデ星は住民の生活水準はグングン向上する一方、凄まじい公害に街も山も海も汚染され尽くしていた。そしてある日、突如恐るべき公害生物ヘドロンが現れ、強大なコンピューター頭脳を駆使して市民たちを集団催眠術にかけ、謎の腹心オズメルの手で彼らの体を手術して、生体サイボーグ奴隷にしてしまったのである。公害から生まれた生物は自らヘドロン皇帝と名乗り、オズメルに命じてガニメデ星を冷酷非情に支配した。そしてまた、軍備を拡張すると精鋭コンギスター軍団を編成。公害に汚染されつつある素晴らしい星、地球の侵略を命じたのである」。
 コンギスター軍団編成の「過程」には、生活水準の向上が生み出した公害が関係していた。1973年の「オイル・ショック」は、西洋文明からの脱却を人々に求めるきっかけとなっている。
 本作を企画した東急エージェンシーは、第1次怪獣ブーム時には実写特撮『怪獣王子』(1967年)を製作。『怪獣王子』のミリタリズムや、生き別れとなる母と子のドラマは『メカンダーロボ』に引き継がれる。

『合身戦隊メカンダーロボ』オープニング
放送当時は「東急特撮」という扱いだった『怪獣王子』。

第3話「ジミー、決死のパワーイン」
 「心配するな。俺の体は地球人とは違う。一か八か、そこに望みをかけてやってみるしかない!」。
 ロボットの接続回路が灼熱メカ獣・放電レンザーによって焼き切られてしまう。原子力エンジンを接続するため、ジミーは……。脚本/海堂清彦。
 「こうして苦難をロボットと共に乗り切った時、初めてジミーたちはこのロボットに友情を感じ、メカンダーロボと名付けるのであった」。
 本話のラストで敷島博士のロボットが「メカンダーロボ」と命名される。演出の新田義方は長いティルトアップでロボットの巨大感を表現。

 メカンダーロボの弱点は、ロボットの小型原子力エンジンを狙って攻撃用静止衛星から撃ち込まれるオメガミサイル。エンジンがパワーアウトすればロボットは無事だが、コンギスター軍団に対する反撃能力は失われる。
 「いつ何時、ソ連が基地を爆撃してくるかも分からないんだ」(『第三次世界大戦 四十一時間の恐怖』・1960年)。 
 『メカンダーロボ』の制作者は原子力エンジンを「アメリカの基地」=「核の傘」に見立てている。基地があるから日本は攻撃される論は、大江健三郎の「破壊者ウルトラマン」(1973年)のテーマでもあった。大江によって前景化された「アメリカの基地」の存在は、その後のジャンル作品に様々な「影響」を与えている。東宝のメカゴジラ二部作では、怪獣が現れるのは「沖縄」と「横須賀」だった。『ウルトラマンレオ』第50話は大江健三郎に対する石堂淑朗からの返答。

第4話「見よ! あれが空中要塞都市だ」
 「この空中要塞都市はコンギスター軍団の心臓部だ。もしこの要塞都市を破壊したら、コンギスター軍団は一瞬のうちに崩壊し敗れ去るだろう」。
 空中要塞都市を叩くため、偵察作戦を行うジミー。北米ネバダ州付近までの距離は1万2000キロ。だが、メカンダー1は増槽タンクを付けても1万500キロの飛行が限度だった──。「艦長(↑)」のイントネーションなど、東急SFのミリタリズムが横溢したエピソード。今回登場するのは「キングコングみたいにでっかいメカ」、キングコンガー。1976年にはリメイク版『キングコング』が封切られている。
 ヘドロン皇帝の作った空中要塞都市は100万の人口を持つ都市で、その中ではヘドロボット兵の製造から巨大な戦闘用ロボットの製造まで出来るという。「つまり、何百年も物資の補給を受けずに自分で兵器を作りながら高速で移動する巨大な要塞」。コンギスター軍団はこの空中要塞都市に乗り込んで、到着までに15年かかる地球に向かって大遠征の旅に出発した。

第5話「大輸送船団を死守せよ!」
 「宇宙の悪魔コンギスター軍団に追いつめられた地球防衛軍は、今や戦略上最も重大な危機が迫っていた。それはコンギスター軍団により世界のほとんどの地域が占領され、最後の砦となった日本に世界各国から避難民が流れ込み、食料も、エネルギー源である石油もほとんど底をつき始めていた」。
 食料と石油を確保せんと、マレー半島で大輸送作戦を展開する地球防衛軍。航続距離の短いメカンダーロボをマレー半島まで持っていくため、敷島博士は空母キングダイヤモンドを出撃させるが……。地球防衛軍に潜入するコンギスターCIA部員KJ2。本エピソードでは諜報戦の要素も採り入れられている。
 脚本は『科学忍者隊ガッチャマン』の企画を手がけた陶山智(すやまさとし)。陶山は竜の子プロに在籍する前は日活の企画部に所属。SFものはほとんど作らなかった日活だが、そこで培われた方法論は他社のアニメや特撮に生かされた。
 「いよいよ君の力を発揮する時が来たぞ。グワンダ」。空母キングダイヤモンドを操縦するグワンダは黒人という設定。1977年は黒人を主人公にしたドラマ『ルーツ』が話題となった年でもある。

第6話 「出撃! 空母キングダイヤモンド」   
 「コイツさえ叩いてしまえばメカンダーロボの帰るところがなくなり、武器の補給や修理も出来なくなる」。
 メカンダーロボの秘密基地、キングダイヤモンドを叩くコンギスター軍団。敵のロボット・ニュードムは「タコのお化け」と呼ばれている。
 敷島博士の言う秘密兵器とは、レーダーに反応しない妨害電波のこと。『メカンダーロボ』はレーダーを無効化することで、目視による戦闘に説得力を与えている。本作が『機動戦士ガンダム』(1979年)のルーツと言われる所以。
 「スパイを見つけ出さなくちゃ、こっちの作戦は全部筒抜けよ。勝てる戦いも勝てなくなる!」。
 前回のグワンダに続いて、今回はミカとユータの姉弟、そして五郎兵衛がスパイ探しで活躍。脚本/陶山智。

第7話「コンギスター軍団ハワイ全滅作戦」 
 「神様。弟を、弟のトビーを助けて下さい。いいえ、トビーだけでなく父や母が愛したハイビスカスとランの花を助けて下さい」。
 マウナケア火山を一度に爆発噴火させて、ハワイ島全体を海の底に沈めようとするコンギスター軍団。ジミーオリオンは子どもたちを助けにハワイ島へ向かう。巨大ロボット・トカスダー登場。武器は溶解液。
 「私なら陽動作戦で行く。メカンダー2と3でミッドウェイ島の前進基地を攻撃するわ。その間にメカンダー1がハワイ島に向かうのよ」。
 今回、ミカは作戦立案で能力を発揮。彼女のバックボーンは第9話で描かれる。将軍の地位を狙うザボ中佐。彼はガニメデ星人でありながら、自ら進んでヘドロン皇帝に協力していた。「今のワシはガニメデ星人というより、ヘドロン皇帝陛下の忠実な部下だ!」。

第8話「叩け! オメガミサイル」
 「博士。正直言って俺はオメガミサイルが怖い! ジミーや竜介のように、平気ではいられねえんだ!」。
 矢島小次郎はオメガミサイルへの恐怖から、メカンダーロボを危険な目に遭わせてしまう。脚本/陶山智。
 「昨夜入った地球防衛軍の情報によると、コンギスターのオメガミサイルの攻撃を恐れて運転を止めていた、茨城県と愛知県にある原子力発電所の原子炉とその付属装置が、ほとんど同時刻に何者かによって運び出された」。
 オズメル大将軍の作戦は東京駅で原子炉を作動させ、それをオメガミサイルで攻撃し、東京を灰にしようというもの。激突メカ・ムカデラー1号2号登場。オメガミサイルを撃ち出す静止衛星は7つあることが判明。

第9話「最後の戦線 南シナ海」
 「父に一度戻って貰いたいの。母の病状は酷くなるばかりなの」。
 リリーの父、ライアン大佐の戦っている第27線区は連絡が途絶えて数日が経っていた。大佐のことを確かめに、ミカは危険地域の27線区へ行く。脚本/海堂清彦。
 ミカは3年前、ワシントンの国連士官学校に入学。山岳訓練ではリリーとパートナーを組んでいた。その時、ミカはリリーに命を救われている。
 台湾の玉山を中心にある第27線区。ライアン大佐はそこでタイガー師団を率いていた。  
 「敵は救出作戦だけと安心しておるが、民間人の救出が終わり次第、タイガー師団は反撃作戦を展開するぞ」。
 地球の平和を守るため、大佐は病気の妻に会うことを拒否。看護婦となったリリーは、軍人の父に複雑な感情を抱く。「私は、あんな立派な父でない方がよかった……」。
 親子のすれ違いを描くとみの喜幸演出。作画監督の小国一和は湖川友謙の変名。アオリ構図が特徴的。

「まだパラシュートは使えない。残った1機に発見されたら元も子もないわ……」。本エピソードは戦場での駆け引きも見どころのひとつ。
湖川友謙のアオリ構図。

第10話 「危し! メカンダーマックス」
 「どうだメデューサ? メカンダーロボとあの得体の知れない奴らの移動基地を一気に叩くには、今言ったような陽動作戦しかないであろう」。
 オズメル大将軍の罠にはまり、メカンダーマックスは前輪が吹き飛ばされた状態で丘の中腹に墜落。メカンダーは脱出を試みるが……。ハンドレーロボ登場。
 今回、地球防衛軍は東京からクレタ島まで、直線距離で1万キロ以上となる史上最大の大空輸作戦を展開。脚本の陶山智はジミーとメデューサ将軍の関係に改めて言及している。

第11話「必殺! メカンダー・フェンサー」
 「遠出をした臆病者は、一日も早く家に帰りたいものだ。奴らは必ず最短距離を通って日本に帰る」。
 クレタ島で大空輸作戦を支援した空母キングダイヤモンドは日本への帰路につく。だが、来た道をそのまま帰れば、必ずどこかでコンギスター軍団の罠にはまる。正義と勇気と知性を武器に、ジブラルタル海峡に向かう敷島博士。陶山智の脚本は「急がば回れ」がテーマとなった。
 「我々のようにサイボーグ化された者は、強烈な電磁波とオーロラを作り出すプロトンに弱いということを、オズメル大将軍も十分承知の筈。それと同じく、ガニメデ星の機械の元素はオーロラの電磁波とプロトンを浴びると縮んでしまうのです」。
 ガニメデ星の機械はオーロラの電磁波とプロトンに弱いことが判明。また、今回のオメガミサイルは大気圏への突入角度がズレたために、電磁波による作用で自爆する。新鋭ギアロボットの奇妙なデザインが見もの。

新鋭ギアロボット。
「コンギスターめ、また奇妙なロボットを送り込んできたもんだ」(敷島竜介)

第12話「謎のビッグハリケーン」
 日本の約半分が暴風圏内に入るという超大型台風が発生。地球防衛軍はジェット観測機中隊をマリアナ海に急派したが、1機として基地に帰ってきたものは無かった。
 「もしも超大型台風の日本列島直撃と同時にコンギスター軍団に攻撃されたら、地球防衛軍はそれこそひとたまりもありません」。
 目的を持った生き物のように、一直線に東京を目指す超大型台風。観測に当たったメカンダーロボは、台風の目の中にコンギスターの巨大ロボットを発見する。脚本/陶山智。
 山本長官は敷島博士のことを一貫して「ミスターX」と呼んでいる。メカンダーロボのことは地球防衛軍内部でも軍事機密となっているようだ。メカンダーにしても、キングダイヤモンドが空母であることは博士から聞かされてはいなかった(第6話参照)。

第13話 「幻の大西洋艦隊を救出せよ!」
 「もしメカンダーロボと連合艦隊が救援に来てくれるなら、万に一つのチャンスはある」。  
 手持ちの食料が一ヵ月分を切り、大西洋艦隊は日本の地球防衛軍との合流に出撃する。決戦は遅くとも明日の午後3時。ところが、メカンダーロボは現在修理中であと3日はかかるという……。脚本/海堂清彦。
 コンギスター軍団が出撃させる巨大ロボットはニュードム、コマンダー、キジュウダー、キングコンガーの4機動部隊。オズメル大将軍の狙いは、メカンダーロボを一気に叩き潰すことにあった。この回から次回予告のナレーションがジミーに交代。合い言葉は「スイッチ・オン!」。


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