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金田啓治特撮監督論


1963年公開『泥だらけの純情』より。

 日活映画における「特殊技術」は通常、「合成」のことを指す。日活ではこの「合成」を金田啓治が手がけていた。金田の「特殊技術」について、竹内博はこう説明している。
 「いわゆる大じかけの特撮映画と違い、一本の映画の中にさりげなく数カット使用されているケースが多い。例えば窓外の月を合成で入れこんだり、セット内に建てた一階家を作画合成で二階家に見せたりとか」(『元祖怪獣少年の日本特撮映画研究四十年』)。
 金田の「合成」で多いのは、離れた場所にいるヒトやモノをひとつのフレームに収めることだった。1959年の『世界を賭ける恋』では、出会う筈のない生者と死者がひとつの画面の中に存在している。 
 金田特撮においては、時に時間的な隔たりも「合成」の対象となる。『ひとりぼっちの二人だが』(1962年)では、現在と過去の同居が「特殊技術」によって表現された。

『世界を賭ける恋』(1959年)より、死者との会話シーン。
気絶した浜田光夫の脳裏に甦る子どもの頃の思い出。『ひとりぼっちの二人だが』(1962年)の合成カット。
『光る海』(1963年)より、合成による会話シーン。二人は実際には遠く離れた場所にいる。

 1972年、金田は『サンダーマスク』の特撮監督を担当。第1話の立ち廻りは郊外から都心へと、場所を移しながら展開されるというものだった。離れて存在するものがシームレスに繋がる感覚を、金田はここでも採り入れている。

『サンダーマスク』第1話より。

 続く第2話では高低差のあるセットでヒーローと魔獣の戦闘が繰り広げられた。

『サンダーマスク』第2話より。高い所にいるサンダーマスクと、低い所にいるタイヤーマを同時に捉えたショット。

 地上から上空の敵に向けて放たれるサンダーシュート。金田の特撮演出では、すべての空間はひとつながりのものとしてある。

サンダーシュートの一連

 第7話「地球の油を食いつくせ」より、ミニチュアセットの上を飛ぶサンダーマスク。日活映画の「合成」よろしく、あらゆる要素がひとつの画面の中に描かれる。

『サンダーマスク』第7話

 離れた場所にあるものを、ひとつにまとめる金田特撮。彼が作った『サンダーマスク』は現在、ファンの手の届かないところにある。

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