俺は全てを【パリイ】する 12話(最終回)「俺は全てをパリイする」感想

いつか最終回をパリイする日が来ることを願って!

※この記事は「俺は全てを【パリイ】する12話」のネタバレあり感想です。

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全ての始まり

 瓦礫の山と化す手前にまで追い詰められていたクレイス王国。それでも民が大勢生き残り、復興へと向かう意志と力もあるため再建の日は近い。

 破壊されつくした街並みを歩くノールは、およそ救国の英雄と思えない暢気さで、「いつも通り」の雰囲気だ。そしてここから本編の7割を使っての過去回想が始まるのだから驚き。

 最終回で新展開を匂わすために新キャラを出すとか、そういう欲もなく、今回は「英雄は大変で平凡な日常へと帰っていった」という壮大なエピローグになっている。

 お前は劇場版のクレ〇ンしんちゃんか!

「最終回だから」という重圧をパリイ!

 ノール、俺はお前の帰還をパリイせずに待っているぜ!



教官たちとの思い出

 長い回想…というのはノールの回想というより、お世話になった6聖の回想の方がしっくりくる。彼らのノールへの評価は様々だが基本的に「侮っていたけどコイツはいずれ唯一無二の存在になる」で一貫している。

 隠密・調査能力に長けるカルーさんも長い間探していたと言うが、それでも見つからないってことはノールの自宅って本当に辺境にあるか、或いは結界か何かに包まれているとかそういう隠しギミックありそうなんだよね。



シグさんの回想『神速を捉える眼』

 ノールがいの一番に訪れた、ソードマンの養成所。丸1日かけて行われる厳しいシゴキにぶっ倒れる大人たちに紛れて、血豆を潰しまくってでも剣を握って離さないノールは異質な存在感を放っている。結局10日もっただけでも十分凄いのに、その後大質量の鉄球すらも骨を痛めつつ弾き飛ばした。

 ……あれ、まだパリイ覚えてないよね!? これスキルじゃなくて膂力で弾いただけだ! この時シグさんが叫んだ「骨が折れても剣を離すな」は、これまでの戦いの中でしっかり活きている事が分かって良い。涙も流さず剣を握りしめて闘志を燃やすノール。そんな彼がせがむものだから、シグはソードマンの奥義『サウザンドスラッシュ』を見せつけた。瞬時に大量の落ち葉を綺麗に両断する正確さ繊細さ、そして常人どころか本人にも追いきれない瞬速………………え、本人にすら?? おいおいそれ技として不完全では? なんて野暮なこと考えたけど、一連の動きをノールの瞳は捉えていた。

常軌を逸したタフネス、動体視力、闘志を絶やさぬ瞳。

 シグさんは目を煌めかせたが……何故か彼はそれ以外のスキルを覚える事はなかった。ソードマンとしての大成を願っていただけに残念度合いが半端ないが、それでもノールが別の道で輝くことで、彼の人生が色付く方を選べるのは人間としてよく出来ている。

 そりゃあ、こんな将来有望株逃した過去があったら、イキっていた頃のモロヘイヤにも色々想う所はあるでしょうな。



ダンタルグの回想『退かない勇気』

 ムチっとしたガタイのいい男達共のたまり場にやって来たノール(語弊過多)。レタスともやしくらいの差がある身の締まりに戸惑うも、2か月間も耐えきり、更には崖の上からの落石に腕2本で耐えるほど頑丈になった。身体強化の補助があっても、普通そんなことはしないだろうと思ったが、周りの野郎どもも普通にやってて草。そういえばこいつら、マジックアーマーを着込んだ軍勢に拳1つで特攻しかける脳筋集団だったわ。

 トラブルで巨大落石が降ってきても逃げる選択肢を選ばない、不断の勇気がダンタルグに「スキル次第では不屈の盾になる」と思わせるほどの資質。

 まあ、それが後々防御スキルのパリイで無双するなんて思わんよな……しかも身体強化したら攻城魔法のウインドブラスト直撃しても死なないアホみたいな頑丈さになるとも。(死ぬはずなんだ人間なら……人間ならば!)



ミアンヌの回想『矢ナシの名手』

ミアンヌ「あそこに投げてみて」
ノール「遠いな」←この距離で的がちゃんと見える視力

 シグ、ダンタルグの訓練をみっちり受けた後となれば、肉体的な強さはお墨付きだろう。しかしそれだけ。狩人(ハンター)に必要なのはタフさではなく正確無比の矢捌き、集中力などで、脳筋には務まらない。そこら辺をしっかり見抜いていたのか、無理難題を突き付けて出て行ってもらおうとし、結果的に投石スキルを見る事になった。

 高速の石を2度当てて的を破壊しない精密さまである。

 なのに弓を持つと、握力に弓が耐えられず握り潰される無常。ジョジョ2部にあった巨大バリスタでも壊れそうで怖い。あとミアンヌさんの顔芸とか滅茶苦茶多くて大いに助かる。

ノール「たまに来る鳥を食べるために覚えた」

 ひび一つ入れず盾に風穴開けるわよしたノールの、投石スキル誕生秘話がまさかの自力。ミアンヌさん本格的に何も教えてなくて草。

ミアンヌ(アンタは弓無しでもう足りている)

 矢を番える弓、限りある矢を入れる矢筒、それを構える両腕、相手を補足する瞳、狙い澄ます集中力があって初めて狩人の弓は遠距離攻撃の真価を発揮する。

 一方の投石は、そこら辺に落ちている石を拾い、片手で構えて狙い澄まして投げる実にシンプルな遠距離技。矢に比べて距離や精密さは劣るが、装備のメンテナンス・矢を揃える手間がいらない、行軍時に持っていく重量も気にせず、継戦能力はピカ一。おまけにノールの場合は熟練の狩人も手こずる鳥を落とす精密さも備えているのだから、始末におけない。



カルーの回想『不忍』

「お前が『あの』ノールか」←ちょwwwおまwww有名人じゃんwww

 忍び足……も、どうせ山暮らしの時に獲物を捕らえるため身につけたんだろう。しかもでっぱりに足をとられなかったところ、あれ、見えていた? こんな暗いところでも見えるほど目が良いのか。しかも遥か遠くの声すらしっかり聞こえる聴力。これはもう優sy

ノール「突撃ぃいいいいいい!!」

カルーの意「罠を全て回避(発見⇒解除)して辿り着け」
ノールの解釈「罠を全て回避(全部ぶっ飛ばす)して辿り着く」

 違う!! 違うんだ、そうじゃない!!

 誰がピ〇タワーばりのウルトラアクションゲームしろと言ったよ! 忍ぶんだ、もっと静かに、ああいけませんノール!! 実力以前に素質がなさすぎる!! 性格の不一致!!

 3か月後。「斥候としてダメ」だってさ。妥当過ぎて何も擁護できん! 装甲騎兵ボトムズでも隠密作戦で敵陣奇襲攻撃したバカがいた。そもそも「囮で時間稼ぎ」に行って敵陣営壊滅させた経緯を察するに、隠密任務とかノールには無理だ。



オーケンの回想『戦慄の二重詠唱』

 2か月辛抱強く待っても全然魔法が出ない。何だかこれまでの教官と違って孫とじいちゃんの距離感でほっこりする。大人になったノールが「まだ生きていたんだな」と失礼な軽口叩けるほどの仲なのはこういう事か。

 こうなればと魔力共振部屋に入れて、体の中に魔力を巡らせる基礎を付けようとするオーケン。でもその中に入ると感覚が数倍になるのか……まあ、世の中には3000倍でも生きている人もいるし大丈夫だろう。

 その中で数日間飲まず食わずで過ごせるノールの燃費の良さは半端ない。適応能力が高いのか? それとも痛覚などがイカレているのか??

 結局覚えられたのはプチファイヤーのみという残念な結果だったが、「ここまでやってプチファイヤーのみ」っていうセリフ、1話とここで全然印象が変わった。あれだけやったら何か物凄いスキルに目覚めるはずなんだよなあ……

プチファイヤー(無詠唱)⇒同時展開

 あ。しっかり化け物じみた素質は持っているんだな。老齢のオーケンですら習得に時間をかけた二重詠唱がこんなにあっさりと。リーンちゃんに見せた特大プチファイヤーも納得だ。まあそれでもプチファイヤーが2つ撃てるから強いって言うと微妙なんだけどね。



セインの回想『無尽蔵の回復』

 ノールにとってみれば最後のチャンス。儀式無しでは本来入門すら断られるセインの養成所に、飯抜きで数日立ち続けてその本気度を見せつけた。お寺の前でしばらく待ち続けるお話は聞いたことあるけど、飲まず食わずでこんなに生きることが出来るのは……筋肉量が凄い=代謝が良すぎるはずで1日でも苦痛を感じそうなのにね。

 でもセインの立場からすると「祝福ないからスキルを覚えるのは無理なので入れてもノールの時間を無駄にする」と分かっているからこの対応も間違っちゃいないんです。

 その苦難の末、身につけたのがローヒール。祝福なしで回復魔法を習得という、常識では考えられない異常事態がセインの目の前で起きた。

セイン(精霊を介さず、祝福の儀式も受けずに自ら奇跡を行使する。それは言うなれば、奇跡の力を無尽蔵に扱えるという事) 

 MP的な枠組みがないと使えないハズなのに使えるってヤバイ。ドラクエⅡの主人公が回復魔法使えるようなものだ。ここで習得したローヒールが、後に聖域並の結界を小規模とはいえ張れるくらいに成長するのだから、いかに規格外なのかが伺える。



ノールの消失

 全部の養成所で「冒険者不適格」だったことがショックのノールは帰ってしまうわけだが、あの後6聖全員でノールを探そうと躍起になっていたことが判明。後継者とか良い部下などそういう下心ありそう。

ミアンヌ「ほっとけばいいじゃない。アイツはどこでもやっていける」

 尤もミアンヌさんだけは結構ドライ。一切教えていないから愛着ないってのもありそうだが、ノールの人生の自由を尊重した言い回しも含んでそう。

シグ「俺はすぐにノールを探す旅に出る」

 マテ待てまて! 勝手に行こうとするな! 立場を考えて! この人ノールがブリューナクを舞い上げる大活躍を見て「1から鍛えなおす」とか言ってたし、見た目のクールさに反してとんでもなく熱血直情タイプだ!



その後のノールの特訓

明けてから夜まで素振りをします。
周囲に人はいないので自活しています。
パリイを打ち続けます。
病気になっても猛毒に侵されても日課を欠かしません。
猛毒料理を好んで食べ続けます。
これを規則正しく、毎日、十数年間、やり続けます。

 狂い。

 時間をかけて育てれば物凄い人に成るとセインさんは言ってたが、まあ、その見立ては間違っちゃいない。自分で決めたスケジュールを延々こなし続けるって本当に難しいのに、やり切るどころか「毒を食う」みたいな苦行も自ら足すなどなあ……むしろ6聖で育てるよりのびのび育って良かったかもしれない。



実に濃い1日

 思えば5話の毒ガエルから12話に至るまで、作中時間がたった1日しか経過していない事実に驚く。濃すぎません? 結構色んな奴と戦っていたよね?

毒ガエル→死人のザドゥ→厄災の魔竜→軍勢と兵器→超兵器→ボール遊び

 本当に濃い1日だった。これだけの連戦だ、いくらパリイありとはいえ受けたダメージも半端なかっただろう……DPS筆頭はリーンちゃんのウインドブラスト? ちょっとよくわからないですね……。

マスター「服焦げてるぞ?」
ノール「色々あった」

 あれらを「色々」でまとめて良いものか……でもノールは自分がやったことの重大さをまるで理解していないし、まあ、良いか!!



ガレキソード

 1日で英雄譚が出来そうなノールの大活躍を支えた、謎に包まれた超頑丈な黒い剣。そんな剣は今、

 がれき撤去のスコップとして扱われている。黒い剣に意思があるなら「どうして……」と、心震える強敵との戦いを思い返しているかもしれない。諦めろミステリアスな剣。君の持ち主はノールなのだ。ドブサライソードよりも、ガレキソードの方がなんかこう、カッコいいぞ!

 しかし主を変えようにも、ノール以上の存在がいないのも事実だし。残念だけど君の活躍は2期まで保留で。



『全て』をパリイする漢の物語

 魔導皇国の保有していた高純度の魔石。それは神聖ミスラ教国の手引きがあった可能性が高いとクレイス王は読んでいた。つまり、あのまま予定通りリーンちゃんをミスラ教国に送っていたとしても、何らかの手段で暗殺されていたか、傀儡とされていた可能性が高い。マー族のロロを国民として迎え入れた事で、物語はまた大きく動くのだろう。

 数々の陰謀が蠢いていたクレイス王国の危機をいち早く察知し、国滅ぼしの魔竜を屈服させその背に乗って敵地に乗り込み、戦争を終結させた英雄。

 そんな英雄が今何をしているかというと、破壊された国の復興作業に追われている。「必要とされている場所がある」。なりたかった英雄譚の冒険者にはなれずとも、今が充実している。ノールにとってそれはとても大事な事なのだろう。

 パンを配るロロも、街中で救助活動や復興作業に勤しむ6聖たちも、そして生き残った兵士が家族と対面するささやかな奇跡も、1つ1つが国をいやしていく。

 ノールは今回の戦いで得た褒章の殆どをロロにくれてやったが、1つだけ。リーンちゃんが配っていたパン1つ。「ちょうど空腹だった」ノールを癒すそれが、最高の報酬だった。

ノール「今は取り敢えず、ここで役に立ってくれ」

 相棒の剣にそう伝えると、英雄は市民たちに紛れて、困っている人のために歩き出す。新たな被害を出しそうなガレキにパリイを仕掛けて、何事もなく去っていくのだ。

 まさに「全て」をパリイする漢、ノールの物語はまだまだ続く。



総評

 気持ちのいい登場人物たちの、爽やかで愉快な物語。そして作画の崩れもなく丁寧に作り込んでくれた制作陣営の皆様にも敬意を表します。

 何やかんやタイトル時点で「一発ネタ作品」と高を括ってはいましたが、1話を見て評価が一転。ノールという愚直な主人公に魅せられてからは毎話毎話が楽しみでした。

 最終回でパリイするのも、強大な敵とか最終回に相応しいラスボスだの、そういうのではない「降ってくる瓦礫」というのがまたいい。地味な活躍もする英雄の締めくくりに丁度いい。

 規格外の強さゆえにシリアスなギャグをやり切っていて面白かったです。あとコミュニケーションが世の中大事なんだと再認識させられました。

 ロスを味わっていると同時に、本当に爽やかだったので「このまま2期無くてもいい」気持ちと「絶対欲しい」気持ちがせめぎあっている。ニジガク1期で味わった気持ちと一緒だこれ。

 ひとまず私は原作小説でこの続きを楽しもうと思います。以上で、感想記事を終わります、読了ありがとうございました!


サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。