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夜のクラゲは泳げない10話「推される側」感想

小さな悲劇や大きな喜劇が今日もどこかに無数に転がる世界。

前回のあらすじ

 超絶の苦悩と見る度に胃もたれを起こすどろりと嫌な感じの雰囲気が充満していた9話の地獄を乗り越えてやってきたぜ!

※この記事は【夜のクラゲは泳げない10話】のネタバレを含みます。


今回のあらすじ

「私、歌も笑顔もNGなので」



世界とまひるは進む

 JELEE解散の危機。JELEEの身バレから始まったすれ違いで、メンバー4人を結ぶ絆が急速に細くちぎれかける。……けどJELEEの視点から外した世界は、明るさに満ちている。今回、やたらとギャグ要素が散りばめられていて、前半部分のまとまりのなさは意図的・計算尽くなのか。

「色んな悲しい事は渋谷・東京、関東・日本のどこでも起きている反面、それと同じくらい楽しく愉快な変化も起きている」事実が突きつけられる感じがした。

まひるの身バレ

 花音ちゃん同様に身バレしたまひる=ヨル先生。でも身バレしたところで後ろ暗い過去もないし問題ない。花音ちゃんの言葉はショックでも、自分のやるべきことに集中できる大人って雰囲気で大変よろしい!

 あと記事の「意外とかわいい」ってなんだよアアん!!? まひるさんはかわいいやろがい!

 何者かになりたいんだと1話で力説していた友人のチエピが可愛い。「フォロワー10万人って有名人じゃん! 何者かになれてたんだね!」と言ってくれるが、どうにも今のまひるさんには響かない。誰かの承認で有名になるより、自分の実力を世に公表して有名になる方が実感沸くのだろう。

 これまで物語の中心にいたまひると花音ちゃんの登場時間を大幅に削り、木村ちゃんとキウイちゃんで頑張ることで、2人以外の世界観が時に滑稽に時に薄暗く見えてくる。そんな不思議な10話。鬱要素? 9話に置いてきたよ! 11話は多分乗り越えられるよ!



ポンコツバイト

「バイトが致命的に出来ない2人」が揃っちまった……どうしようか。

木村ちゃん:そもそも労働経験がない。メニューの事も覚えられない。花音ちゃんいないとパワーダウン。仕事中に仕事の事を忘れる。

キウイちゃん:引きこもり。「与えられた仕事しかしないんで―」と協調性が希薄。

 帰ってきて、陽キャの2人とも!!!! この職場もう駄目だ!!!!

 あ、店長さん、ワンコインおつまみ「すごくすごいからあげ」下さい! この語彙の少なさはRTTT思い出しますねえ(普通に無料で全話見れるのバグ)



たとえ楊貴妃が木村ちゃんを口説いても

 ポンコツに与えられた仕事は「配送のキウイちゃん」「ティッシュ配りの木村ちゃん」。今更だけど木村ちゃんはバイトするという事を両親になんて説明して許可貰ったのだろうか? そもそも許可とってないのか? 校則は?

 そんなことはどうでもいい! 今はティッシュを配る仕事に専念するのだ、見ろあの動きを、時を止めて瞬間移動しながらティッシュを配ろうと懸命に呼びかけているぞ!(ただの作画枚数節約)

 笑顔NGで気迫バッチリのティッシュ配りって結構大変そうだが、唯一受け取ってくれたのは、何とメロ。……メロ!? 何でここに来たの!? すぐさま気付く木村ちゃんも流石。彼女もクラゲの壁画を眺めていたのでどうにも意味深。しかし彼女の場合改心するにしても悔い改めねばならぬのよなあ……。

 世界三大美女、クレオパトラ・楊貴妃・小野小町。花音ちゃんはクレオパトラで、メロが……楊貴妃???? え、木村ちゃん……マジで言ってる? まあ裏の顔を知らねばあざと可愛いけども。この場合小野小町は誰になるんだ? まさか、2期のフラグか!? だとしたら嬉しいけど多分2期はないんだよなあこの作品。1期でカタを付けそうだから。



裏表激しいメロ

 ファンサはする。舌打ちもする。キスもする。キス!!? どういうことですかこれは! ここ最近百合要素少な目だからと唐突な供給をするというのか!? いやいやいや、要するに「売れるためならこういう事をするくらいなんでもしてきた」ことの示唆なんでしょ。多分こういう「自分に夢中になる存在」をいくらか捕まえてきたに違いない。

 それとも……木村ちゃんをJELEEメンバーと知っていて、花音ちゃんをさらに孤立させるためにNTRを図ったのか!?(それはない)

 にしてもこの場面、なんかメロにもビターながらも真っ当な道に戻るフラグ立った気がする。多分改心せずに破滅するエンドなら、暗闇のある右方向に逃げていくと思うんです。光の差し込む方に進んだ=光を求めていることの、形はどうあれ救われたいと思っている心理が見える。



フードファイターの子(パクパク馬場)

 全てを曝け出し最早銀貨系最強無敵のアイドルになったみー子もとい馬場静江。表札もデコりすぎてて草。キウイとみるやアイドルボイスではなく馬場ボイスで応対する切り替えがすごい。9話の感想記事で「馬場静江がJELEE復活のキーになる」とか予想してた私、予想は当たるか?

 ブレイクしたのが1月か2月初めだから、あれから10か月くらい経っている計算。まかないで済ませていた食事が何かグレードアップしていて……何この量?? 今日はドカ食いパーティーでもするの?? 1回の注文で¥27,852-はちと払い過ぎでは? 領収書ってことはどこか事務所が支払ってくれるんだろうけど。

 サムネイルの顔……我々はこの顔を知っている! いや、この眼差しと手の位置を知っている! 動画工房! サブリミナルで推しの子2期の宣伝をかましてくるとは姑息な真似を! そんなに、宣伝をしたいなら俺も協力してやんよ!(何故?)

14年諦めなかった生き残りのアドバイス

 花音ちゃんの現状を打ち明けたキウイ。このままでは年末新曲も、ライブも、何もかもおしまいという状況。彼女的には「リーダーがやる気ないのにどうすればいいのか分からない」と言外でアドバイスを求めている。

「やるべきだ」と即答するのは流石馬場静江(みー子)。彼女とて、妊娠や出産、世間的な眼差し、育児、背水の陣や修羅場、そういった人生の酸いも甘いも知る現役のアイドル。「自分がどうあれ。待っているファンがいる」なら、彼女の場合『やる』一択。

 ゲストに私を呼べばいいと冗談めかして言うのは「炎上コメントとか諸々つくの怖いなら一緒にやろう」と彼女なりに励ましているのだろう、多分。きっと。決して私利私欲ではないはずだ!



いつも限界アナタの後ろに這いよるオタク キム・アヌークです☆

 全ては花音ちゃんが戻ってくるヒントを掴むため。折角出会えたメロから根掘り葉掘り聞いてやろうと思っているのか、推しのためにとんでもない潜伏スキルとホラースキルでメロを追跡する木村ちゃん。恐怖で顔が、作画さえも変化する、ああ窓に、窓に!! 明かりの点いた部屋が暗くなる何か妙なスキルも発動。

 自分の正体を明かし、思いがけず「lovely weather」を生で聞くことが出来た木村ちゃん。この子が見ろバカだと知った時の反応が色々気になるが、今回はお出しされず。



雪音ピの養分

 光源に差し出されるコップの中に、多くの氷でかさ増しされた少し残っているお茶。それを見ながら「私は雪音ピの養分」だと言う。見ず知らずってわけではないけど、木村ちゃん相手にファンサとか猫被りするような場面で自分の内情を吐露しちゃう。これはもう、限界が近い事を表してますな。

 雪音ピから受けた『何者でもない自分を光の下に連れて行ってくれた』恩はあるしそれに尽くすことも出来る。でも「用済みになったらあっさり切られる」恐怖や諦めも、センターで歌う部分を花音ちゃんに取られた時・センターの花音ちゃんをあっさり追放する辺りから持っているわけで。

 自分が成りたいアイドルになるために活動しているのか、夢の生贄と知って恩人に尽くす今で良いのか。メロなりに悩みは多そうである。

推す存在

 瀬藤メロが目の前にいるのに、腑抜けて都落ちして今にも消えそうな橘ののかを心配し続ける木村ちゃんを見るメロの目はうっとうしさで溢れている。自分たちは夢見る乙女ではなく、養分という同類で、太陽に尽くす人形でしかない。「そんなことは」と否定したい木村ちゃんだけど、長らく喧嘩しあいながらも雪音ピに尽くしてきた同類故にメロの花音ちゃんへの理解度は高い。

「フォロワー10万人を目指していた」と聞いた瞬間にその意図や目的まで一瞬で答えを導きだしてしまった。橘ののかへの複雑骨折したクソデカ感情の片鱗を見せた瀬藤メロ。孤独になって活動した彼女には今、ののかを愛し求める仲間がいる。

そう思ってか、今の自分の仲間に感謝するのだ。
「ありがとう。文字の皆」

己の価値

 何者でもない時の瀬藤メロが、何者かになるにつれ、ストレスや軋轢もあったのだろう。でも弱みを見せられるような仲間はいない。サンフラワードールズメンバーにも言えない、言って、それが何らかの形で雪音ピの耳に入ったら切られるかもしれない。だからか、顔も見えない掲示板に不満や「共感してほしい内容」を投稿したり、炎上ネタをぶち込んで自分の存在を他者に認めて欲しかったのだろう。承認欲求が暴走し、見ろバカとして己の価値が上がったのだと勘違いした。

 炎上ネタを好み書き込むのは、「他者を思い切り害したい」欲求を持つ者たちだ。概ね人間はそんな気持ちを持っているけど、だいたいの人間は踏み止まる。暴走して正義の使途になれるフェス。生贄に松明や石を投げ続ける祭り。炎上ネタをくれる=生贄の存在を明かし、松明をくれる人に他ならない。

 瀬藤メロは炎上ネタで承認欲求を満たしていたのかもしれないが、あれはお手軽な猛毒だ。炎上ネタをいっちょ噛みで記事投稿したり動画投稿すると閲覧数・再生数を稼げるようになるが、客層がそればかりに偏りがちになる。そこに、投稿者へのリスペクトを持つ者はいないだろう。

 だから今後瀬藤メロが見ろバカだったことを暴露された時、今まで味方だと思っていた人たちすら掌返して燃やしにかかる。仲間として付いてくれる人はいないのだ。それを多分彼女自身も理解している。あの個室トイレの場面が意図するのは、袋小路だろう。



首がとぶ

 連絡もなしに大幅に送れる配達。職務放棄してカラオケに行くティッシュ配り。

店長「クビ」

ポンコツ「「え…」」

 判断が早い上に大正解である。えじゃねえよ2人とも! アルバイトとはいえ社会人舐めんなよ!?



一方そのころ主人公は

「頭痛と腹痛と筋肉痛により早退」で笑われる花音ちゃん。久しぶりの学校もまるで馴染めない。何も知らない人たちの陰口も気に障ってしまう。家にも学校にも居場所はなく、それなのに唯一の居場所も自分で壊しかけた。人生の正念場であるが、ここで放送室を占拠し大音量で『カラフルムーンライト』を流したら気分爽快に…………ならんか。

?「何で空の箱じゃないんですか? 作品が違うからですか? 孤独な自分を鼓舞する最高にカッコいい歌なのに、何で流さないんですか? そんなの全然ロックじゃありません、ののかさんが目指していたアイドルに戻りたいわけでもないのに中途半端じゃないですか?」(沈まれ、心の中の中指!)

 ふらりと立ち寄った原点には先客がいたりする。JELEE始まりの地って言う知名度でクラゲの壁画は大盛況だ。JELEEを求めるファンの声もある。あるけど、やはり今の花音ちゃんには響かない。心が空っぽなのは瀬藤メロと本当に一緒なのかもしれない。

※水槽の男はお父さんかな?

その相方は

 花音ちゃんの窮状をキウイちゃんから知らされるまひる。親友からの頼みだが、安直に引き受けはしなかった。自分の足で、人生を切り開いた責任。自立したことが、まひるさんを強くした。自分の取った選択肢で今こうなっていると内心思う所はあっただろう、遠回りであっても「結んだ約束」により良い結果で到達するためなら、心を鬼にする。

 励まし支えるばかりが友達ではない。信じて待つこともまた、友達なのだ。それで心が折れてしまうのであれば、それまでのことである。

 まひるさん滅茶苦茶カッコいい。



「なんだお前、橘ののかのファンか?」

木村ちゃん「友達です」

 なので決してアイドルの出待ちではありません。木村ちゃんは諦めない。

 メロの推理そのままを伝えると「すごいね、めいはそんなことまでわかっちゃうんだ」分かっていたのはメロなんだ……しかも聞いてすぐ理解してたぞ。お前ら本当は仲良かったんじゃないのと疑っちまう。

お母さんみたいになれた

「橘ののかでない自分に価値などない」と思っていたからアイドルをやって来た花音ちゃん。でもあっさり切られた時に「私の人生を自分の人生のために使いたかっただけ」と悟ってしまったこと。そんな酷薄な人間のために尽くしてきたことをキズとして心に刻み込まれている上、もう一度見て欲しい子供の心もある。

 それで心を壊された自分が、先日まひるに「自分の人生に組み込みたい一心で罵声を浴びせた」ことが、相当応えてしまったのだ。煌めくお母さんの模倣は出来ず、嫌いなお母さんのようになった自分に嫌気がさしている。

 このままではJELEEのメンバー全員に同じような想いを抱くだろうから、「JELEEは解散するしかない」と言いきっちゃった。JELEEはもう、おしまいです。お・し・ま・い・デッス!



重大発表の日

満ちた月が出ていた

 机の下にめっちゃ本を積み上げて位置調整しているのジワる。ここは馬場静江の配信部屋。TOのアリエルちゃんもいつもの服で応援中だ。良いのか? アイドルというよりバラドルみたいなこの路線変更はありなのかアリエルちゃん、このままでは確実に太るぞ!

 どうやらJELEEのライブ配信の前座として爆食しているらしい。本当にコラボしているのか、成長したな馬場静江……腹もでっぷり肥えてまあ……。

 パクパクコラボ なんて可愛い名前なのにこの場にJELEE=花音ちゃんはいないしまひるも多忙で不在。木村ちゃんとキウイちゃんのみという変則的な配信。そういえばここ最近(20240602~0606)現実のXでも、呟いていたのこの2人だけだった。

重大発表

 Vtuberを長らく推す人にとって思わず対ショック防御態勢を強いられる文言。重大発表というと結構明るい話題が多いはずですが、Vtuber界隈だと「引退」等のネガティブな話題が多い不思議。なので「暗い話題じゃない」とわざわざ言わねばならないのを苦慮する人もいるらしい。

 で。今回は例に漏れずネガティブな話題をお届けだ。パクパクコラボなんだからもっと明るい話題出せよと思ったけどさ、花音ちゃんから解散を告げられたらもうどうしようもない。こんな時にするべき配信は……

「そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ!」とかやる? これ以上食うと馬場静江がドカ食い気絶部に転向してしまう!

マイクを奪え

 解散告知に青ざめるファン(ベッドの上にいる子)もいる。最後に取った集合写真(カソウライブ終了時)を大事にしている木村ちゃんもいる。

 これで最後と、絵も歌もタイトルもない曲を流しておしまいにしようとするキウイちゃんだが、木村ちゃんは当然納得しない。こんな終わりで良いはずがない。世間から総すかんにされていた推しをそれでも信じ続けた木村ちゃん(花音ちゃんをきっかけに得た愛称)。「彼女にまだ歌ってほしい未知の曲は山ほどある」のだ。最後など認められるはずがない。彼女の居場所であるJELEEを失う事だけは絶対に許されない。

 それを守るためなら笑顔も、歌も、NGチェックを外す。全世界に音痴の恥も晒す。そしてそれを恥と思わない。ここの木村ちゃんのメンタルは、キルラキル3話の鬼龍院さつき様のようで素敵。



心意気を無下にするな

「行って!」とキウイに強く呼びかけた馬場静江。キウイの奥にある「やめたくない」「誰かに何とかしてほしい」という根柢の願いは前回の接触時に理解していたのだろう、今がまさにその時なのだ。花音ちゃんがこのまま水底に沈むかどうかの瀬戸際。木村ちゃんの覚悟と絶叫を無駄にするのは、大人の対応じゃない。時にカッコ悪くても人としての振る舞いをする。すぐさま花音ちゃんの家に着いた……速くね?! と思ったけど木村ちゃんが何度も歌っている可能性もあるか。

 因みに歌詞に起こしてみたかったけど聞くに堪えん音痴で無理だった! 思いは熱いけど歌唱力は全然なのだ!

 コメント欄に「下手」「やめちまえ」等。自分に向けられえた悪意の言葉が目に留まったがそれでも歌う。あの日花音ちゃんが受けた誹謗中傷に比べたら、わけない。鬼気迫る全力の歌唱、馬場親子が息をのむほどの気迫。何を言いたいのか、誰にこの歌を捧げているのか、そんなことは言わずともわかる。

 木村ちゃんにとって太陽のように眩く輝き、色褪せぬJELEEの思い出は、コメント欄で塗り潰せるほど柔じゃない。

『泳いで 泳いで 月と太陽手に明かりを灯した クラゲの歌声 明日の君に聞こえるように』(ところどころ間違っているかもしれない)

 最後の歌詞だけ何とかうっすら理解できたこれは、自分という存在を受け入れたうえでの楽曲? まひるに酷いことを言う前に作った歌詞か? 明日の君にという部分が、「今の君に」ではないのが花音ちゃんの不安を表しているようで少しキュッとなる。



解釈違いも甚だしい

 もう隠す必要もないだろう、「ののたん」と普通に呼ぶし、「ののたんが大好きです」と聴衆の前で告白もした。

 私の知っているののたん=橘ののか ではない。

 ののたん=山ノ内花音の文脈になっている。

めい「喋り方もおしとやかで可愛くて下品な事も全然言わなくて控えめで、そんなの私が好きなののたんじゃないです!」

 これは、木村ちゃんが愛したサンドー時代の橘ののかそのもの。

 2話で散々「橘ののか」を追い求めていた木村ちゃんが、JELEEとして活動していくにつれ、橘ののかではなく花音ちゃんをののたんと認識していた。

『橘ののかではない花音に価値を見出した』のだ。

めい「私の好きなののたんは、自分勝手でガサツで、ファッションセンスが合わなくて、私とは似ても似つかない無茶苦茶な女の子で」

 歌っているときは涙腺が動かなかった私だが、このセリフで涙がにじんでくるし、聞く毎に愛の大きさに打ち震えられる。直後に「特大に好きな所」も言ってくれるのですがそれは本編を見てくれ。見てくれ(懇願)。見てくれ(土下座)。

めい「私を好きにさせた責任、とってください!」



全てが不安に満ちている

 何で歌うのか。母親のように誰かの人生を潰してはしまわないか。身バレしてバカにされ続けるのか。まひるとはこのまま喧嘩別れしてしまうのか。

 花音ちゃんの中には今不安がいっぱいだ。

 立ち上がる気力すら先ほどまでなかった。

 それでも、熱烈に愛してくれるファン・友達が1人命を懸けて告白している。ファンを絶対に一人ぼっちにはさせないポリシーを掲げる以上、ここで退くことはあり得ない。

 よろよろの足で立ち上がって、上を見る。真っ暗だ。母も振り向いてくれない。それでも「もう一回歌いたい」その気持ちが、橘ののかではない、山ノ内花音としての新しい目標であり進路。

 そこに理由はなくとも行き先がどこであっても「どこでもよくない?」と励ましてくれた誰か。今の気持ちを最優先に走る。見通しは甘く、計画性もなく、気持ちに従い行動し、みんなを振り回し、迷惑もかけるし、勝手にしょげて、どこか子供っぽく振舞うだろう。今後も花音ちゃんはそういう女の子であり続けるだろう。

 だが、それでいい! それでこそ、皆が愛する花音ちゃんなのだ。

 復活した! 母に求められた橘ののかではない、ファンが求めた山ノ内花音が。JELEEちゃんが。ライブ配信を聞いていたまひるさんもこれには笑顔。強いまなざしを捨て、穏やかで芯の強い海月ヨル先生が、吹っ切れた気持ちと共にクラゲを描き出す。

 開け放たれた扉(心の穴)が、閉じた。妹ちゃんが見ていたのかな?



次週はキウイちゃんの清算会

 全員身バレしたことで、キウイちゃんも数々の嘘が露見するだろう。ファンからの失望も買うかもしれない。誰かのコメントに心をざわつかせていたが、彼女は問題なく立ち上がれるだろう。最後はカッコよく決めてくれると信じているから。


サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。