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夜のクラゲは泳げない1話「夜のクラゲ」感想

己の好きは隠せない。己の好きは廃れない。

※この記事は【夜のクラゲは泳げない1話】のネタバレを含みます。


今回のあらすじ

 普通であり続けた少女が、夜を照らすほど輝く少女に出会った時、隠し続けた好きが動き出した。

公式のあらすじはこちら↓


クラゲのごとく

 大きな海の中でフワフワ漂うクラゲのような毎日を過ごす、光月まひる。ネットリテラシーのない悪戯好きな妹に寝顔を公開されかけたが事なきを得た。この子の言うインフルエンサーって「憎まれ(過ぎて人生色々取り返しのつかない)っ子世に憚る」みたいでなあ……リスクありすぎて教育によろしくないからまひるちゃん頑張れ。

「人に迷惑かけたらだめだよ」

 教育に!! よろしくない、そのポーズを、ありがとうございます!(やめなさい!)

 この形、この不意打ち、このポージングの角度、どんぴしゃりで人々の性癖を破壊しにかかっている!! 妹ちゃん、もしカメラを持っていたらもっと映して、そう、そのまま、

「意外と子供っぽいよね(クラゲの靴下)」

 どこをアップしとんねん佳歩ぉおおおお!←妹ちゃんの名前

 正面に、真っすぐ、進む、それでバズるぞ! 国宝が世に放たれるぞ! こんなチャンス滅多にないんだからね!

量産型の日常

 数多くの人が持て囃す人のおすすめ化粧を付け、世間話のできる友達がいて、一見幸せな日常を送っているまひる。でも自身のイラストレーターの才能を誉められたら表情を曇らせた。才能を保存したスマホを隠すような左腕、それすら隠す右腕と、「封じ込めている」ようにも見える。一瞬だけ映した過去の回想も、自分の名を隠していた……本当は量産型ではない特異な子ではあるまいか?

盛り過ぎ幼馴染

 キウイちゃん(何かに憧れているアニメに同じ名前がいたような?)。タテキタ……多分学校の略称か。そこの生徒会長で、竜ケ崎ノクスって名前で、歌の収録にゲーム配信に動画編集が出来るとな……いやいやいや人生2つ分生きてない? 生徒会長ってだけで相当大変だぞ? そんなスーパーマンが味方にいるのでは量産型は無理だって。

まひる「本音言って否定されたら痛いし」

 変化しない理由の根底は恐怖か。周りと合わせるのも、得意な物を隠すのも、それが受け入れられなかった時の痛みを回避する術を持っていないから、衝突の可能性を避けているんだな。まあでも人間、9割体が水分のクラゲみたいに、探られたくない部分は大半だからね。

 だから酒飲んで仕事忘れてうぇーいと言う妄想に至るわけだが……まあ数日に一回なら悪くないけど、毎日は嫌だなあ……酒は美味いから飲むって酔いどれ剣士も言ってたぞ。

どっち?

「それは、人を惑わす小悪魔か。それとも、救済の天使か?」

 ハロウィンの仮装選びで迷っている内に、小悪魔を取られるまひる。どっちでもいいけどどっちを選べばいいのか分からない、「好きな物を持っている人になりたい」と言う彼女にも好きな物は確かにあるのに、それは違うと思っているのは悲劇である。

 残った天使の仮装を取ったものの、別に可愛いとか残念とか思うわけでもない。気力が足りない気がする。

異なる好き

「変な絵」自分が精魂込めて作り上げた絵だと言えば結果は勿論違っただろう。でも幼い日のまひるは、「きっと好きなはず」だとサプライズに走った。

 感性の違い、好きな物の違い、あって当然の感情を受け止められなかった彼女は、これが自分の絵だというのを言い出せず、隠した。「自分の好きは変」と心に傷を負ってしまった。

 友人2人の「人の心ぉ」な台詞に私は憤りを感じない。この2人にとっては間違いなく、色眼鏡抜きなら「変な絵」なのだから。

みー子(17)

 トラウマの元になっている絵でも、気になって仕方がないのだろう。そこで路上ライブする「最強アイドルの卵 みー子(17)」に、壁中雑に貼り付けたポスターで隠されたとあってはモヤモヤもする。

 しかし17歳……公式HPキャラ紹介には『活動歴は長く』とあるが……これは、まさかかの有名な宗派『17歳教』!? こんな所にまで!!

時を戻そう

まひるの思うカッコよく啖呵をキレる自分はいない。救世主など現れないのだ。

「いるさ、ここに1人な!!」

 好きな絵を穢すなと言ってくれる金☆髪のマスク美人が現れた。ライブ中にいきなり怒鳴られても一切動じないみー子(17)。さすが活動歴も長いみー子(17)!

ストーカー?

 熱血少女を追いかけるまひる、こんなかわいくて毒気0のストーカーがいるわけないだろいい加減にしろ!

大ファン

「中学の時に父さんに連れられて渋谷に来て、一目ぼれした絵」

 かつて『海月ヨル』のアカウントで発信していたまひる。

光月まひる←→海月ヨル

 なるほど、空に浮かぶ月と水面に映る月。クラゲを漢字で書くのと言い、洒落の利いた名前だ。

 金髪の子がどうやって特定したかはまあ、壁画に『渡瀬絵画教室』とか書いてあったし、過去作品を訪ねたとかはありそう。

元アイドル 山ノ内花音

「黒髪清楚でファンサもバッチリ」そして顔が良い。黒髪どこよ??? 本当にアイドルだったのかイマイチ分からんが嘘を言うような子にも見えない。炎上したらしいが、覆面アイドル『JELEE(ジェリー)』として活動中とまだまだ諦めていない強い子だ。

※綴り間違っているっていうな! 彼女は真剣なんだ!

 ギター弾き語り動画を投稿しているが、サムネイルがどれもパッとしない。私も記事にサムネとか面倒で付けない性質だが、下剋上したいとかの野望持っているならサムネは欲しい。しかも悲しい事に幾つも動画出している割に再生数2ケタを超えないのは……ギターヒーローのぼっちちゃんとは全然違うのだな(なお性格的にぼっちちゃん特攻の陽キャ)

 ……という私みたいな辛らつな評価を下す人がいたとしても「これが今の私」と開き直って笑えるのがこの子の強さだと私は思うのです。

カラフルムーンライト

 サンフラワードールズというアイドルユニット時代に作曲したものらしい。この作品はとにかく「夜」「光」を強く推している。この曲にも、並々ならぬエピソードがあるに違いないと察した。

匿名

 自分をバカにした全員を自分の歌で感動させるという復讐。何て爽やかで前向きな反骨精神だ。この明るさも好きになってくる。そんな彼女から「君の絵とコラボしたい」と言われたまひる。

逃走

 並の創作ならここで即決か、「考えてみる」と言って別れるだろう。でもそうではなく、「出来ない」と拒むのは新鮮な驚きである。この期に及んでまひるは、人並みの枠から外れる事を恐れた。海に漂うばかりのクラゲのように、自分から動かないはずなのに逃げた。

「絵なんて何年も描いてない」
「人の目だって気になるし」
「平凡な女子高生で」
「好きなものだってあいまいで」
「それにこれから受験でしょ?」
「現実的に厳しい」
「皆に合わせて勉強」
「女子高生のあるべき姿」
「私みたいな何者でもない人」
「目の前の事で精一杯」
「それで十分   」

 ……それで十分、幸せ。とでも言いたかったのだろうか? 皆に合わせて量産型でいる事で満たされるのであれば、1人で、光に誘われるようにふらふらと渋谷を歩いているのはなぜ? そこにある、そこに沈めてしまった自分の大好きな物があるから、今も未練がましく泳ごうともがいているようにしか見えない。

 本当は答えなんて決まっているのに、目を逸らしている。近くにあるのに否定している。周りに散乱した「課題」をかき集めて並べ立てて、出来ない言い訳を必死に述べている。

「私は絵を描くのが好き」の一言で全て崩れる砂上の楼閣。

 本気の誘いを砂場遊びで誤魔化すまひるに、花音は残念そうに言うのだ。

「ヨルって結構、【普通】なんだね」

 そう、量産型であろうとするなら、最上級の誉め言葉だ。どうしてそんなに物憂げな表情なのだ?

「花音ちゃんて特別じゃん。自分が嫌いとか思ったことないでしょ」

 自信に満ち溢れている人間っていうのはきっと、自分の魅力以上に、自分の醜悪な部分をしっかり見つめて「これも私」と受け入れることに成功した人だと私は思うのです。更にその過程で幾度も幾度も、自分を嫌いになるのだと思うのです。

「私は、ヨルの絵が好きだよ」

 自分が否定して、水底に封じた好きを掘り起こされそうになった。まひるにとって、真っ向好意を向けられるとダメな部分に光を差し込もうとする花音。まひるは、逃げた。

 折角の入浴シーンなのに色気ないんですけどぉお!? さっきまでのカラフルムーンライトな世界はどこですかああ!?

橘ののか 暴行事件

 花音がかつてサンフラワードールズだった頃。メンバーを殴って炎上……という事実を認識するまひる。確かに黒髪で、笑顔だったら清楚っぽく見えなくもない。

「瀬藤メロと確執」ということは、殴られたのはメロって子でしょうね。黙秘を貫こうとしたが、雪音プロデューサーと聞いて声を詰まらせる。何があったのか現時点ではまるで分らん。本当に殴ったのか、殴るよう仕向けられたのか、それとも全く違う事実なのか。

ハロウィンで小悪魔と

 人を惑わす小悪魔に瞳を奪われたまひる。性懲りもなく壁画の前でライブをするみー子(17)。小声ながらもまひるが「私の好きな歌を」って反抗したってことは、多分この歌が『カラフルムーンライト』。ネタ曲っていうのはどういう意味かさておき、流石にこんな邪魔されたら相手も怒って

みー子(17)「じゃあ気を取り直して、カラフルムーンライト!」

 嘘だろ!!!!!!!!???? 強制ストップかけられたのに、一応目の前に止めた本人らいるのに、おっぱじめやがった! 何だこの精神力、絶対に17歳じゃない!! 今日に至る道の中で、情人なら心を散々折砕かれ引退を決意する程の逆境にあっても、それでもここにいるのだ、生き残りである。

 例えるならVtuber界隈……2018年から爆発的に広まり、個人勢も相当数デビューして、1年どころか半年も持たずに引退する者が多い中、5年以上個人で続けている人がいたとしたら、その人は登録者数を抜きにして、「化け物」と認定していいでしょう。みー子(17)はその化け物に該当すると私は思うわけです。

花音「私は負けて、私じゃなくなるのが嫌」

 自分という蕾に大輪を咲かせたい。その心意気のまま

乱入 シン・カラフルムーンライト

「申し上げます! ライブ中に新たな挑戦者が現れました!」
「だにぃ!!?」

 流石にライブ配信中に乱入は胆力レベチ!

花音「私、ヨルのクラゲの前で歌いたいな」
 
「申し上げます! 渋谷に高濃度の百合反応が現れました!!」
「だにぃ!!?」
 
 みー子(17)が貼っていた大きな1枚のポスター、その奥にある夜のクラゲ。このポスターが、まひるが施したスキの封印そのものだとするなら、何と脆く容易いものだったのだろう。ほんの少し勇気を出せば、簡単に剝がしてしまえる程度。月光と、花音の眩いほどに輝く熱意に照らされて、ここはまさに、カラフルムーンライトである。
 
※それはそれとして、ポスターを剝がしたまひるはみー子(17)に怒られた。当然の帰結である。
 

謎の覆面アイドル

「ん、銀行強盗する」←違
 
 落ちた量産型の口紅。「私たちは」と巻き込んだ花音。逃げるように、まだ見ぬ明日に駆け出した2人。クラゲに魅せられたまひるは言う。
 
 クラゲは一人じゃ輝けないけど、外から光をため込めば輝ける。

 まひるは量産型であることを捨て、己の信じる好きに突き進む道を選んだ。2人の物語は今、始まったのである!
 
 ああ……満足感高い1話でした! オリジナルアニメだから先が読めない! 次回もきっと、楽しいはずです!


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音霧カナタ
サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。