マギアレコードFinal SEASONネタバレ感想・考察①「黒江はいったい何者だったのか考えてみる」
前置き
どうすれば良いんだこの感情を。
今回はネタバレを含む上、あまりポジティブな内容ではありません。黒江というキャラについて語るのみです。
きっと何者にもなれない少女
具体的にどうしたいのかを決めることが出来ない。黒江はその時々に応じて立場が変わる。それは自分が正しいからそうしたいと思っているわけではなく、ただ「何となく○○だから」という刹那的な感情が起因。
組織を裏切ったりしたのも「イロハさんが間違っているとか言っているし何となく不味そうだから」で。
魔法少女になったのも「何となく好きな男の子と仲良くなりたいから」とフワフワしたもので、結局は好きになってくっつくまでの過程をすっ飛ばしたからすぐさま冷めて関係を自分から絶ってしまった。関係を繋ぎ止める理由を形成できなかった。
魔法少女として戦う中、自分に好意的に接してくれた名もなき魔法少女、力になってあげたかったが「何となく積極的すぎて嫌」と放置した。恐らくアニメ版マギレコ1話の魔女はこの子ではなかろうか。
こうしたい、ああしたいと軽い欲ならあるものの、その先、一歩踏み込んだ先に進めない。進もうとしない。「なんか違う」「なんか嫌」動機が軽いから、決意も軽く、楽な方に逃げたいと思っている。だが続けない理由も特にないから、軽い感覚だけで投げてしまう。
魔女化
漆黒の鳥変貌前、完全に飛ばず、黒く粘性のある体液をゆっくり噴射して空高く登っていく様は「結局どこに行くことも出来ずにここにいた」ことの左証でしょう。翼を持って自由になりたかったとしたらなんとも哀れな姿ではないですか。自分だけでは飛ぶことすらも出来ずに死んでいた。
いろはという、眩しすぎるほど正しい存在なしには何も出来ずに名前も貰えず、画面の端でメインの魔法少女が眺める犠牲者として朽ちる定めだったのが黒江だ。彼女は「強くない魔法少女」の代表だ。正しく魔法少女であろうとするいろはや、その仲間たちの輪に入れるほど強くないことも自覚している。
だからこそ踏み込むという勇気を、パズルの1ピースほどの小さな勇気のかけらすら、黒江は持つことが出来なかった。だから魔女になった。
QBの最高傑作
脆い。 弱い。 そして何の攻撃性もない。 ただ光を、 自分が求める光を、 何の光か知らない光を追い求める。 ただ焦がれて、 飛んで、 散る。 堕ちる。
黒江はQBにとって最高傑作、理想とも言える魔法少女であり、理想に最も近い魔女だった。QBに表情や感覚があったなら、喜悦の笑みと絶頂を味わっていたかもしれない。
深い絶望によるエントロピーもさることながら、攻撃性のない「逃走」の魔女で回収も簡単。無意味に人間という資源を無駄にしないからクリーン。鉄壁とも言える精神力のいろはすら絶望に叩き落とす程の結末で彼女の真っ白な心に黒点を落とした。
どうすれば彼女を救えたのか
彼女自身が「弱くて」「惨めで」「何者にもなれない」「気弱で」「薄情で」「哀れな」自分を責め過ぎなければ良いだけ。
そういう思いに囚われている内は、傷をなめ合うように依存するべき対象がいなければ、この世界に生きてていいという楔のような物なしに存在するだけの浮遊物体になってしまう。
だから傷を治そうと、頑張ろうと、自分の弱さを【思い知らせ】てくれるような存在は毒でしかない。
ういは黒江を「最初に救う存在」とし、いろはも救おうとした。だがこの姉妹は何もわかっていなかった。光(白)は闇(黒)と混ざらない。世界の彼方に追いやるか、飲み込むか、それしかない。
【何者にもなれないから生きてはいけない、なんてことはない】。生きて何者かになる一歩を踏み出す黒江の世界線は、今後あるかわからない。しかし今度はきちんと、光に負けて、自身の闇をどこか遠い場所に追放できたならその時こそ、いろはとのコネクトが出来ることを祈っている。
でも更に哀れなのは……
最終回で3分以内で絶望から立ち直ったいろは。ああ、存在は忘れられていないけど、最後の攻撃に黒江も加えようとしたのは余計可愛そうかもしれん。だって3話の特殊エンドで「決まった!!」とガッツポーズしたと思われる黒江が、4話3分くらいでいろは絶望から復帰&「お前も逃さん」とトドメにぶつけられるというね。
死んだことに対するカタルシスの時間さえも与えられないなんて可哀想すぎません? もう少し、せめて10分は失意と絶望に立ち向かってほしかった。なんやねん、黒江が報われん、正しさに仕留められて余計惨めになってそうで。ここまで24話分引っ張ってきた黒江が最期の最期にこんな扱いとは……
まとめ
黒江はQBの最高傑作で、自己肯定感が極端に低く、正しい人間の正しい言動に引いてしまい、踏み出す勇気は薄弱で、魔女になっても何も出来ない
救うためにはその弱さを肯定してくれる相手が必要で、いろはは正反対だった。
可哀想だけど、魔法少女モノとしての適性が全くない。
時間をかけて絆を育まない限り彼女が表舞台に立つのは難しいが、魔法少女になった時点で袋小路。OP映像はいろはの願望入っていたのかもしれない。いろはから見る黒江は決して端役やモブキャラではなく、ああいう距離感だった。やちよさん同様に隣で手をつなげる友人だった。それを受け入れることが出来なかったのである。
救われる結末を求めてやまなかったが、しかしこれは外伝とは言えまどマギ……再び視聴者に拭いきれない煮え湯を飲ませる鬼畜の所業である。
今回はここまで。次回は【ワルプルギスの夜】についてです。