夜のクラゲは泳げない9話「現実見ろ」感想
「最後のトライアングル。素晴らしかったわ……」
(何か変な世界線の雪音ピ)
前回のあらすじ
炎上で火葬されかけた仮装ライブは仮想ライブに変化した!
※この記事は【夜のクラゲは泳げない9話】のネタバレを含みます。
今回のあらすじ(日曜劇場版)
唐突に流れる斜陽の映像
ナレーション「遂にフォロワー10万人を回収することに成功した限界会社JELEE。身バレによる炎上でJELEE株は一時急落したが、特異な映像技術と極めて芸術的なクラゲの資産を提示することで信用回復し、急騰した」
花音「私は必ず100,000人を回収する、2度と邪魔しないでいただきたい!」
まひる「本当に…絵の道を切り開くことが出来るんですか?」
雪音「出来る。年末の予定を開けてくれたらね」
メロ「メロを、10倍にしても、100倍にしても、答えは、メロです♪」
めい「あとは我が推しの、お心次第です」
キウイ「まひろに詫びろぉ!詫びろ×7 詫びろ花音ぉ!」
花音「土下座してください……やれぇえええ! 見ろバカぁああ!」
今回のあらすじ(通常版)
互いのためを思っての行動がすれ違う。絵の発展を志すヨル先生の成長と向上心と野心、それに追い縋ることが出来ずに恩を押し付ける花音。JKブランドというモラトリアムは、終焉へと向かう。
ガルクラとあまりにも対比が!!!
実は製作スタッフが裏で通じていると白状してくれた方が辻褄が合う。それくらい、ガルクラとヨルクラのストーリー展開があまりにも綺麗に対極に位置し続けていて、お互いのオンリーワン加減を増幅しあっている!
1~8話にかけてひたすらお互いに反発しあってでも歪な塊になって、徐々に研磨されて心が通い合ったガルクラの9話!
1~8話にかけてひたすら仲良く絆を深めあっていったのに、9話でこれまで見えていた微かなヒビが崩壊して心が離れるヨルクラ!
お前らいくら何でも展開が重ならなすぎでしょう!!? ガルクラのやりとりで結構癒し貰って「大天使すばるちゃん」を眼福としていたら、こっちは複数台の冷房でターボかけたみたいな冷え込み具合で温度差が酷い! 極寒! 朝からこれは胃もたれとその日1日中響くデバフ貰っちゃうわ!
そんな気分で書く9(苦)話感想です!
在りし日の思い出
サンフラワードールズ。元々4人ユニット……ではなく、最初は3人。後に花音を加えて4人になって、そこから暴力沙汰を起こして3人に戻った。
崇敬する母の望むがまま、小学生時代は茶色だった髪を黒く染め、天性の歌声を惜しむことなく費やし、母に尽くし、サンドーを引っ張ってきた。
きっと手綱を握られていた花音ちゃんは凄まじい才能を間違いなく発揮できていたのだろう。迷いのない花音ちゃんがどれほど驚異的存在感とアイドル性を持っているのかは、1話から追い続けていたら嫌と言うほど分かる。
だからこそ、結成1年で「急遽ねじ込んだ」にしてはあまりにも破格のフェスにトリを飾るに至ったのだろう。
……と思っていたのだが、どうやら幸運ではなく反則技だったようで。それが明らかになった瞬間
ののか「この屑がああああああ!」
みたいなセリフあってもおかしく無い形相でぶん殴ってしまった。後先考えずに速攻で行動に移しちゃうのやはり花音ちゃんですわ。この性分、2年経過しても一切治らなかったがために、今回の末路に繋がってしまう。
自分のオール(ALL)を他人に渡す
そんな過去がある花音ちゃんだが、今はJELEEとして10万人(過去回想で出た数字の2倍)フォロワーを達成した。身バレ問題を経てもそれをプラスに転じて一気に伸びた。
個々のメンバーの地力、何より花音ちゃんのアイドル力(ちから)が遺憾なく発揮されていた。10万人という決して少なくないファンを迎え入れて、これから何をする?
花音「目標か……ね。まひるはどうしたい?」
そこで明確な目標を打ち立てられないのは、やはりまだまだ。守りに入ってしまっている。こだわりを感じない。水族館を建てるという目標のために動くとすれば、次は年末ライブ。それに向けた準備をしていくのがまあ筋だろう。
尤も、花音ちゃん以外の全員受験を控えている身なので、年末にかけて大忙しなのはかなりハードスケジュールであることに変わりない。
まひる「絵がもっと上手くなりたい」
花音「いや、それまひるの目標だね」
花音ちゃんの影響から突っ走った先に絵と向き合い、真剣になって好きになっているまひる。一度は封印してしまった才能の芽吹きを今度こそ形にしたいと燃えた。しかしこの真摯でマグマのように熱い向上心を、花音ちゃんは感じ取ることが出来ない。
「次は100万人の観客で渋谷中にクラゲを作って水族館にする」等の大言壮語をぶち上げていたらこの後の展開も違ったのだろうが、それが言えるとしたらきっと「全ての迷いを振り切った」状態のアルティメットシィング花音ちゃんでしかありえないのだろうな。
自分の軸がまるで定まっていなくて、年末に何か大きなことをするというフワッとしたことしか言えない。
現実的な夢
そんなどこかフワフワな花音ちゃんに切り出されるまひるが受けた
まひる「お・し・ご・と」→「いらっしゃっせぇえ!!」(違)
在りし日の素敵な母。「自分の描く夢のために利用され、最後は捨てられた」事実が重くのしかかっている。それ故に「おすすめしない」と言ってしまう。
「絶対やだ!」とわがまま言える子供に成り切れない。かといって真相を言うことも出来ない。何より「私のまひるが私を裏切ったりしない」と、確証のない安心感で自分の心を温めている。
因みにこのお仕事がきた事を最初に打ち明けた相手はキウイ大明神。小学生以来の大親友、喧嘩も乗り越えた仲だから何でも相談できる。この安心して何でも話せる間柄に花音ちゃんはまだなっていない。セーフティーラインが掴めず、超えちゃいけないラインも分からないから会話には慎重さが求められたりする。
クリエイター殺し 現れる雪音P編
私含め、何事かを作り上げる人間は大なり小なり、
「他人から『』高く評価される」のが大好きだ。『』の中に入る言葉は、例えば『真っ当に』でもいい。人により絶妙にニュアンスは違う。私も好きだ。だからこの記事が良かったらいいねも欲しいしコメントも欲しい(強欲RUSH)
ましてや数々の後ろ暗い噂(木村ちゃんが手短に教えてくれました)含めて凄い人から、自分の燃え上がる野心を理解し、それをぶつけ、世界に羽ばたく舞台を用意してくれる。
花音ちゃんが言った「渋谷に水族館」に近い夢を提示してくれるのも、親子って感じだ。
こんな訳わからん絶好の大チャンスを逃すことは出来ない。クリエイターは「自分の仕事を高く評価し」「それに見合った報酬をきっちり与えてくれる」ならば文句はないだろう。……勿論、花音ちゃんの話題を出すとまるで関係ないように「ああ、ののかのことね」と言いきっちゃうのは冷たいどころか酷いと思ってしまうけど。
こんなに海月ヨル先生の心を鷲掴みに出来る人心掌握術。勿論タネがあります。6話でJELEEが顔バレ=他メンバーも微バレしているので、ヨル先生のことも調べはついているんでしょう。どっかの探偵事務所にでも頼んだのかな?
雪音ピ「最後のトライアングル。素晴らしかったわ……」
こっちだと心はつかめなさそう。
心壊れた乙女
(これは完全に私の妄想)
元々3人で頑張っていた。そこにフッと現れた敏腕プロデューサーの娘。コネだろうとバカにしたが、その実力は確かなもので、到底自分には及びもつかないと分かってしまう。奪われるソロ、センター、この大切な居場所を取る憎い奴。譲れ。譲れ。そこから、ここから、いなくなれ。
(妄想終了)
実力で黙らせる。
かつてのサンドーは、橘ののかという超新星を獲得してスターダムにのし上がった。その実力に全員が黙った。
例のサイトが出来上がった経緯、今は鳴りを潜めている理由は、多分こういう事情があったのではないか。元々自分の鬱屈した不満をぶつけるためにやっていた活動が、ああやって実を結んだ。指示されたのか、自発的にやっていたのかは定かじゃないが、バレた瞬間の顔も、後ろ暗さと憔悴加減がすごい。
何も喜びが浮かんでない。誰かを踏み台にしてでもなり上がるって気持ちのいい悪党ならこんな顔しない。バレて顔面蒼白ってわけでもない。
「お前だったらこんなことしなくても余裕でなり上がれたんだろうよ。良いよな、持っている奴は何でもかんでも実力で黙らせることが出来て」と諦めきった顔。この後絶対に全部暴露されて私の人生終了だろう? もういいよ、疲れたよ。そんな顔だ。
……だが、実際に泥を被ったのは、燦然と輝くトップアイドルの橘ののかだけだった。全て知られた上に言い逃れ出来ない自白もして、なお暴行の理由を話さず黙って去った。2年経ってもなお、雪音ピに悪評はあってもメロには行かないのは未だ暴露していないからだろう。
こんな優しさを
こんな無力感を
こんな敗北感を
メロはどう処理すればいい?
不満を吐き散らかすアカウントを消さずに放置し続けたのは、「いつの日か誰かに見つけてもらい断罪してもらうため」に残しているのか? 犯した罪を忘れないために立てているのか? 真意はわからない。しかし彼女は活動を続ける道を選び、サンドー本来の形、3人で頑張っていた。
復活を果たし、さぁ頑張っていこうとした時。橘ののかが、2年もの潜伏期間を経て、炎上と共に再び表舞台に現れた。JELEEという謎の覆面アイドルとして活動し、元々強かった彼女の歌を強力に後押しするMV・演奏・イラストを引っ提げて。
あれだけ世間のバッシングを受けて、表舞台に立つことそのものに恐怖を抱いてもおかしくないだろう出来事があった上で戻ってきた。
8話のメロの表情は、「憎い奴」「ばらされる恐怖」「なぜ今?」のいずれでもない。「やっぱり活動していたか」じゃないか。
4話のメロの台詞「終わったこと…ね…」は、2年経過して尚ぐしゃぐしゃな心を整理できていない複雑怪奇な胸中の吐露って感じで良い。
離れてしまう恐れ
好きな人が離れてしまう。
それは花音ちゃんにとって何よりも回避したい事で、二度と経験したくないことだ。離婚して父とは疎遠になり、母からは見限られて、心は再起不能になりかけている。それでも、最後はカラフルムーンライトに込めた「誰か」に見つけてもらうために、「自分の変な部分を理解し愛してくれる」まだ見ぬ誰かと何かを成し遂げるために。
最後に「お母さんだったんだ」と言った花音ちゃん。違う。その誰かは、もうすでに君の隣に、君の後ろに、今日まで無条件に信じて付いてきてくれていた。
「それだけは絶対に離れて欲しくない『待ち焦がれた誰か』」が、自分との約束以上に大事な己の夢を追いかけてどこか遠くに羽ばたこうとしている。
耐え難い苦痛だ。1話でやたら「奇跡」と言っていたのも頷ける。まひるとの出会いは花音ちゃんにとって、本当に奇跡のような出来事だった。
だからこれまで見せた事もない激しい一面を見せる。羽ばたくクラゲの足に、約束という呪縛を幾度も投げつけて、その場に留めようとする。私を置いてどこかに行くことは私への裏切りだ。そんな子供じみた発狂が、
「まひるは、ヨルは、泳げないクラゲなんでしょう!?」
心の奥底にあった、絶対に明かしてはいけないブラックボックスを解き放ってしまう。
離れてでも挑みたい現実へ
量産型の仮面をつけて泳げないクラゲに甘んじていたまひるが、刺激的な野生のクラゲの光にあてられて新たな世界に飛び込んだ。
様々な活動を通じて、喜怒哀楽をぶつけられるほど真剣に創作に取り組んだ。誰のため? 自分の、ひいては花音ちゃんのためだ。JELEEとして爽やかな復讐を遂げようとする彼女のために、もっと上達し、もっと知名度を上げて、尽くし、尽くし、頑張ってきた。
いつしかまひるの夢もそこに乗っていた。
上昇志向、基礎からじっくり上手くなっていく自分の力、毎日がイロドリに溢れていて、楽しい。いつまでもクラゲでいられない。花音ちゃんもきっとこの成長を喜んでくれる。この仕事を終えて完全に自信を持てたら、より絵の事を好きになれる。よりJELEEへの貢献も出来る。あんなササクレみたいなコメントを受けても動じない心を手に入れることも出来るだろう。
「まひるは、ヨルは、泳げないクラゲなんでしょう!?」
どんなコメントよりも痛烈な言葉が、
誰よりも親しい人物から飛び出た。
誰よりも自分を信じ、誰よりも深く愛し支え、飛躍的成長のきっかけをくれた恩人で、心の底から愛してやまない存在から、
「弱いままであってほしい」「弱いお前は私がいないとだめだ」「私に付いてくるべきだ」「腰巾着でいてほしい」「クラゲのままでいて欲しい」「私の夢」「私以外の者になるな」「私が望むものでいて欲しい」
『泳げないクラゲなんでしょう』という言葉に内包される、自分を下に見ていた。下であるべきだという傲慢さ。蔑みの目。侮蔑の一言。
1年。鮮烈なハロウィンでの出会いから1年が経過したにもかかわらず、花音の中にあったまひるへの感情の、根っこの部分に、「いつまでも私から離れないで」という根深い思い。繋ぎ留めるために今までの『楽しかった』思い出を鎖のように投げつけ、『約束』で繋ぎ留めようとして、それでも先に進もうとする愛しい存在に、決して言ってはいけないこと。『私が救ってやったんだ』という恩の押し付けの後すぐさま叩きつけられた言葉に、
一瞬で、まひるは量産型の仮面を取繕おうとしたが、震える手は中途半端な所で取りこぼす。
「そんな風に…思ってたんだ…」
薄ら笑いでこの場の空気を濁してしまおうとしたのだろう。でも、そんな気遣いすら出来ないほどのダメージをまひるは負ってしまった。
花音ちゃんは何も変わっていなかった。良い意味でも、ダメな意味でも。
衝動的な感情と行動が、大切な者の夢を傷つける。
1度目は母やサンドーを、2度目はまひるとJELEEを。
最後の心の拠り所だった「誰か」を今、否定してしまった。
もう。戻ることは出来ない。
好転するか、転落するか、それは「進まなければ」得られない。人は夢を傷つけられて血を吐いても、足掻いて立ち上がり夢を追う。
しかしクラゲはどうだろう。
波もなくなった水底に沈められたら、藻掻くことも出来ない。藻掻いても浮上出来ない。
弱いクラゲは自分だったと、ヨルの出会ったクラゲは泳げないのだと、誰にも届かぬカラフルムーンライトを歌いながら花音ちゃんは今。全てを失ってしまった。
誰がこの2人の関係を修復するか?
早く来いみー子!!! 銀河の光を灯されたあんたが、今度は花音ちゃんに光を与えてやるんだ!! そこは木村ちゃんとかキウイちゃんだと? こんな超絶の修羅場を経験してないでしょ2人は! シングルマザーになった経緯とか散々な評価されてもここまで生き残ってきた骨太の人生経験を持つ彼女が、疑似的な「母親」としてアドバイスをくれるって私、信じているから!(オッズも銀河系最強かもしれん)
それでは感想はここまで。
次回予告が早く見たいけど見るのすっげー怖い!