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夜のクラゲは泳げない12話(最終回)「JELEE」感想

光の差しこむ未来へ行け!

前回のあらすじ

 体も作れる世の中だ、全てを好きで作り上げたって構わない。


※この記事は、夜のクラゲは泳げない12話のネタバレあり感想記事です。見ていない方はご注意ください。


今回のあらすじ

 バズ・炎上・身バレ。この世のインターネットを楽しむ集団、クラゲの子JELEE。恩を絶対返すまひるの放った一言が、JELEEを大舞台へと駆り立てた

まひる「年末のこのサンドーのイベントに、JELEEも一緒に、出してもらえませんか?」

 サンフラワードールズは3大バズを手に入れ、渋谷を水族館にする。世はまさに、ヨルクラ最終回!

 ……………………最終回なんて、いやですぅううううううううう!!!!

火だるまプレゼン

 花音ちゃんの身バレから始まり、JELEE解散騒動と熱意溢れる切り抜きがバズと期待値を底上げ、あわや炎上騒動になった竜ケ崎ノクス身バレも開き直りと啖呵を切ったことで全て吹っ切れた。

 年末ライブに向けて注目度は急上昇し、勢いだけならサンドーを凌ぐほどにまで育ったJELEEを交渉材料に、サンフラワードールズ(以下「サンドー」)のライブに捻じ込んで欲しいと頼むまひるさん。打算的な要素を考えればデカい恩恵と少々のリスクを孕む提案に対し、

「そこに美学はあるの?」

 び…美学…? 怪盗三世のテーマ以外でなかなか聞くことのない単語だが、要するに「己の芯」か。どうしてこれを提案したのか。海月ヨル、或いは光月まひるとして、何を示したいのか。単純にJELEEを売り込みたいとか、花音ちゃんを表舞台に立たせたい等の「利益・利他的な提案」だけなら一蹴されていただろう。

「恩返し」を提示して、「自分がやりたい事」「自分の夢」という事で、夢を追う雪音ピには結構刺さったと思われる。まひるさん、自分をここまで連れてきてくれた大恩を、愛した人に返したい一心なんだよな……どこまでも真っすぐなお方だ!

夜明けを求めて

 ライバルと定めているグループから共演を申請される……うぐぐ、やはり、やはりこのアニメは制作陣営でガルクラと何かしら裏で繋がっているんだろう、そうなんだろう!?(陰謀論)

 唐突な申し入れに、復活したての花音ちゃんはどうするのか? 逃げ……ません! 今度は戦います! 

世間の反応

 世間を騒がせるJELEEと売込中のサンドーによる年末ライブコラボ。話題性は十分だろう。サンドーはJELEEの持つ可燃性の話題をノーリスクで受けることが出来るし、もし炎上してもJELEEの責任にすれば万事逃れられる保険付きだ。

 JELEEにも旨味はあるので双方WINWINである。ただまあ、世間的には懐疑的な視線を向けられても当然。JELEEの正体が花音ちゃんだというのはバレているため、つまりは元サンドーとサンドーとの感動的なライブを演出したかったのかなんて思われてもしょうがない。

グッバイ世界

 いつもキウイちゃんは「グッバイ世界」の時に背を向けたり、配信を即切ったりしていて、手を振るなんてマネはしていなかったような気がするんだ。これは世界に向き合うという姿勢を感じられて非常に良い。

一線を超えられない?

 自分が夢を壊してしまった女性と、自分のエゴで関係を壊した大事な人が並んでいる。そこに踏み込める勇気はまだない。それでも花音ちゃんは背を向けない。

ラブリーウェザー

 やはりいい歌なんだよなあラブリーウェザー。しかしあからさまな前座扱いで草。まあその場にいるファンたちの主役はサンドーだとしても、アニメを見る我らからしたらJELEEの方がメインだから致し方なし(予算があと少しあったらここら辺めっちゃ踊っていたのかな?)。

 そして現実で踊るサンドーに加え、配信画面では海月ヨル先生のぷにぷにSDキャラが躍るという、Vtuber好きにもウケがよさそうなチョイス。リーチを描けることが出来ると目した雪音ピの着想は間違ってはいない。サンドーの知名度は鰻登りだろう。

ゆこち

 気だるげで配信とかしてそうな声の司会者。いったい誰だろうと思っていたら、ゆこち。…………ゆこち!!? 1話でまひるさんがつけていたリップを押していた人、フォロワーも120万人の大人気インフルエンサーだ! ここでようやくお目見えか、何らかの形で出るとは思っていたけどこれは意外。120万人の方を司会に据えるとか金かかってそうだなこのステージ。

「私を責める声」

 自分がしでかしたことで失望させたかもしれないファンもいるだろう舞台。聞こえてくる罵声に恐れを抱き、足が竦み、声も出てこない花音ちゃん。遠くから見守るまひるさんの耳には、そんな声聞こえてこないのに。

現実(まえ)見ろ

そこで背中を思い切り推してくれるのが、キウイちゃん、木村ちゃん、まひる、観客、母親でもなく

メロ「ちゃんと前見ろ! バカ!」

 エスカレーターで上がってきた時、花音ちゃんを一瞥して何も言わなかった瀬藤メロ。しかし私は知っている。10話、11話で彼女が見せた片鱗、複雑骨折したクソデカ感情を。きっとやり遂げるだろうと何も心配していなかったのか、或いは声をかけると他のメンバーに変に思われるから何も言えなかったのか。

 しかしいつまでも歌わないばかりか、歌う前にマイクを下ろしかけている花音ちゃんを見て、流石にいてもたってもいられなかっただろうことは理解できた。

 目の前に広がる、大きなクラゲ、魚。いつぞや約束した、渋谷の水族館がそこにある。ライトアップもされていて、幻想的な光景だ。でも、足りない。

「花音ちゃん、作ってよ。渋谷に大きい水族館を」

 水槽と、魚はいる。描かれた巨大なクラゲもいる。でも、この中にはいないのだ。

 野生のクラゲがいない。

 それを入れねば、ここは約束した水族館とは異なるものになってしまうだろう。入れるにはただ、声を出さねば、前を向かねばならない。

深海遊泳(カソウライブ)

 声を出すごとに、観客の顔にかけていたモヤが溶けていく。自分が勝手につけていたフィルターが魔法のように消えて、純粋な瞳を向けるファンたちだけが見えるようになっていく。まひるさんが自分の心に呪縛をかけていたように、花音ちゃん自身がかけていた呪縛が解けたのだ。恐れている場合じゃない。ファンを大事にするそれが、山ノ内花音、橘ののか、いや、ここにいるJELEEちゃんである。

 安堵したまひるさんの顔も良いが、「そうでなきゃ困る」とメロの満足げな顔も良い。約束の水族館が今、8話でお蔵入りになったカソウライブが、ようやくここに結実した。振り返ってばかりだった自分と決別するように、前を向いて泳ぎだすJELEEちゃん。

「泳いで行ける」のフレーズで泣きそうになり、橘ののかとして雪音ピを見ながら「もう雪の音が聞こえなくても」で感激に涙が零れる。掴んだんだな花音ちゃん、自分が決めた自分の拠るべき目的を!

逸る気持ちとエスカレーター

 行き先がまるで違う。その出会いと別れはほんのひと時。でも、繋いでいたい想い。まひるさんと花音ちゃんのすれ違うようなエスカレーターコントは、これまでの2人を描くようで本当に笑いと涙が浮かんでくる。ここで花音ちゃんの方に行けない常識的思考のまひるさん本当にまひるさんだ。

 木村ちゃんに至ってはいつの時代のリアクションだよと突っ込みたくなるぜ! ところで……見えないところでキスはしたんですか? 恩を返すのなら、ほっぺにチューをするべきだと、私は思うのですがねえ!

「「約束、守ったよ!」」

 ………………ま。そんな肉体的接触が霞むほどの尊さを今感じたから、どうでもいいんですがね。

私を知る者全てに

『サンフラワードールズのことを深く知る方々にとっては、過去と現在のコラボ』何て一文を添えられているEDクレジットは必見。

 全て終わった後で、和解できたからこそ出来る花音ちゃんとまひるさんの語らい。隠し事も遠慮もない、他愛のない話。9話ラスト以降求めてやまなかった雪解けを私は今噛みしめている。

 そこで語られた、花音ちゃんの新しい夢。新しい目標。それは誰かに託した物ではない、誰かの後追いでもない。苦しみと懊悩を繰り返し辿り着いた花音ちゃんの回答。これはアニメで聞いてくれ。私たち全員を後方腕組勢にするぞ。

求めた2文字

 スタッフロールに流れるJELEE。

竜ケ崎ノクス。
木村ちゃん。
海月ヨル/光月まひる。

早川花音

 JELEEちゃんでも、橘ののかでもない。山ノ内花音でもない。いずれでもない者の名前がそこにあった。それでも、その2文字だけを、ずっと花音ちゃんは追い求めていた。もう一度、娘を名乗りたい気持ちがあっても、まひるとの電話の時でさえ早川を名乗れなかった花音ちゃんが、今ここで母親の作り上げたスタッフロールの中で、その名を示される。

 全てが赦された事への感動が涙になって押し寄せるシーンに、当然ながら泣いた。無音なのも粋だ。

ドームですよドーム!

 同接5万人。こんな数字はめったにない。そして花音にとっては10万人フォロワーよりも大事な、約束の数字だ。神様に願い事はないと言った花音ちゃん、無事神様から数多の試練を課されて1年頑張り申した。あっぱれ!

そして後日談へ

 ここで、卒業シーズンへと行くわけですが、1~11話までの物語という意味では、早川の名を名乗れた時点で終わっていたりします。この後はその後の物語。エピローグです。

渡瀬キウイと小春日和

 この口ぶりは、何度もオフで会っているな!? そしてこの赤らめた顔は完璧に……いや、違う! 小春さんと連絡先交換した7話では小春さんから持ち掛けられたけど、11話で竜ケ崎ノクスとしての男っぽい面を見せてからのこれだ、つまり、キウイちゃんは求めたのだ、小春さんとのオフを! 赤らめる何かを求めているのだ! こいつらグッバイ世界したんだ!!! 事件の匂いがします、次回作が大学生編とかになったら、絶対に濡れ場がありそうな雰囲気だ!

31(サーティワン)改め

 32。これは進化だ。40過ぎてもやる気か、静江! 腋の処理も完璧なアイドル! 33歳になったら盛大に祝ってもらえ、あとは再婚報告で完全無敵になれるぞ!

己の力でバズりたい

 姉の寝顔を勝手に撮ったり、姉を利用してバズろうとか思っていたり。妹ちゃんはいつも「バズに飢えている」けど自分自身の力では無理だと心の底で諦めていた。今は違う。やる気に満ち溢れ、好きを貫いて雲の上まで手を伸ばしたクラゲの姉を、尊敬の眼差しで見ている。昔の妹ちゃんだったら、超有名人になった姉の素顔とかでバズろうと盗撮上等だったはずだから。

「自分のバズ」を見つけようとする彼女は素敵な最強になってほしい。

良エエ面(花音 メロ)

 まひかのでは摂取出来ない酸素を供給出来る、かのメロ。まひかのとは違い、喧嘩ばかりするけど仲直りもすぐ。仕事ではニコニコ、後で仕事ぶりに文句やダメ出しも言い合える。何ならたまに家に行って駄弁るとかオフモードでも、映画見ているでも構わない。次回作でまひるさんとの三角関係になっても美味しい。

「そういえば見ろバカについての贖罪とかないの?」とモヤる人は結構いそうだが、虹色少女が開示請求とかしなけりゃバレないし、あれがもし本当に未成年とかだったら訴えてもイメージの払しょくは難しいなあ……という思いしかない。もしも2期があったら、そこら辺触れていくと思われます。

卒業とコメント欄へ

 23歳(×)からの有難い言葉。己の好きに真摯であれというアドバイスは、キウイちゃんだからこそ導きだせたもの。身バレして弄られることは今後もあるだろうけど、沢山の勇気を与えてくれるヒーローとして人気者のままなのは間違いないだろう。学歴や経歴はここからの実績で黙らせていく、最後はカッコよく決められるはずだ。

推される側

 かつて自分が救われたように、今度は誰かを救う。ののたんがそうしてくれたように、ののたんの姿で後輩を勇気づける木村ちゃんは素敵だ。この子もいずれストーカーになるとかないよね?

親離れ

 卒業式に母親が来てくれたが、その車には乗らずに別の道を行く。これが、彼女の選んだ道。雪の音が聞こえなくてもぶれずに進めるようになった、本当の意味で成長した花音ちゃん。幸せになってくれ。

夜のクラゲたち

 海月ヨル先生の絵に、どんどんとクラゲを足していく。敢えてぶつ切りにして、ホームビデオ感を出していて演出的に面白い。アリを映し続けていたのは誰だろう? あと自分の服を絵筆代わりに出来る花音ちゃんロック過ぎてカッコいい、木村ちゃんはそれただの痴女になるからダメ! 表現の自由にも自制の心を持ちなさい! それはそれとしてこのNGになるだろうビデオは私が預かりますs(手錠をかけられる音)

 25時間じゃ足りない青春も、活き活きとした心持で挑めれば良いじゃん。これから、長い人生を歩んでいけ! 苦難を抱いて行け、クラゲの皆! 光の差し込む方に進んでいけ!

総評

 欲を言えばあと1話欲しかった。BDにオマケの1話とか追加されるのかな? 全体的に良くまとまっていて、無駄なく卒なくという堅実な作品でした。1~7話までは楽しい中に色々な悩みがあっての作品ですが、8話からそれだけではない事態に巻き込まれていき、夢と希望で包まれていた時間の終わりを告げるような作り。色々と青春の波動が強すぎる7話はとても良いけど、やはり全てがまとまる最終回も至高。

 所々百合要素もありましたが、添え物程度に思っていた人とそれがメインと思っていた人とで、この作品の評価が真っ二つに割れそうな気はします(私は特に問題ない派)モブキャラも実は繋がっていたりで、名もない誰かにも人生を感じて素敵。

 何も考えなくていい日常回が欲しいけど、いざ作ったらきっと余計なものになることは何となくわかってしまうので諦めています。公式がお出ししているボイスドラマで補填しよう。メロちゃんをどう思うかで最終回も楽しめない人、彼女はやらかしが酷いけど、もしもそれを清算するとしたら続編でしょう。

作品評価点数:85点(適当な体感値、100点満点中)

 11話がほんの少し、敵となる存在が露悪的すぎた気もします。キウイちゃんが戦う敵はそれこそコメントの奥にいる見えない悪意とかが相応しい気がするし、叫んで破局を迎えかけた9話、音痴でも叫んでバズった10話と、「大きな声で事態が動く」が3回連続となると結構食傷気味。持ち前の動画技術とかそういうので「自分を好きになる」心構えとかをアピールして開き直るとかそういうのでも良かったと思います。

 それ以外は概ね問題なく楽しめました。というか、楽しすぎた。偏に制作陣営全員から伝わる熱量の高さとまとまりの良い物語が、最終回を迎えた時の満足感とロスに繋がっている。勿論、12話の中で取捨選択した中に取り入れきれない要素もあったでしょうが、それは小説版とかで摂取可能の様なので心配していません。

 この3か月、最も楽しませてもらった作品は間違いなくこのアニメ「夜のクラゲは泳げない」で決まりです。私の人生、或いは誰かの人生にも深く刻み込まれた、思い入れの強いアニメになったと思います。

 2期があるかは不明ですし、これ以上続けた場合は「大人になった人たちの描写」が過分に描かれそうなので、そうなると本物の深夜アニメになりそうだからやらない方が良い気もする複雑な心境。やって欲しいけどね!

 それではこれにて筆を置きます。最後まで読了、ありがとうございました!

サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。