俺は全てを【パリイ】する 9話「俺は軍勢をパリイする」感想

プランAはリーンちゃんにパリイされました。

※この記事は「俺は全てをパリイする9話」のネタバレを含む感想です。

前回のあらすじ

 竜殺しに憧れる漢ノールは、滅国の力を持つ竜をパリイし続けて屈服させました。

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マー族の株暴騰

 その鱗や爪等、竜を構成するあらゆる物質は富に成り得る。破壊された国の復興資金にもなることはノールも分かっていたが、どうしても殺す気になれない。気配が大きく変わったことを野生の勘で察したのだろう。

 生かしてあげたいというノールの言葉を、リーンちゃんは悩みながらも聞き届けた。救国の英雄たっての頼みならそうせざるを得ない。

 というわけで。マー族のロロ君に「元いた場所にお帰り」伝えるようお願いするノール。彼はこの竜が大人しくなった原因が自分ではなくマー族の能力だと勘違いしていた。

ロロ「

 と言ったところでノールには話が通じません。彼は未だに自分を過小評価しているから。ロロ君は取り敢えず魔竜にノールの気持ちを伝える

ロロ「かくかくしかじかこれこれうまうま」
厄災「了解した。主の命令なら全てを受け入れましょう」
ノール「主!?(流石マー族! もうそこまでの信頼を勝ち取った!)」
リーンちゃん「主!?(先生……あなたはどこまで高みに行くのですか!)」

 今思えば、リーンちゃんがノールにあんなことをする決定打的な一幕だったのかもしれない……



真のフィナーレ

 魔導皇国の最後の切り札が厄災の魔竜……と思っていたのに、実はこの竜も国を亡ぼすシナリオの駒に過ぎないとな? 危険だから迷宮の管理を任せろと言っていたのに、魔竜が帰らずの迷宮からPOPしたことで国が滅びました、「あいつは言う事を聞かなかったからなあ」と最後は王国の証人たちと魔竜を1万人の軍勢と巨大兵器で皆殺しにし、歴史には自分たちが正義だったと筆を舐めてしたためる算段。

 外道どものシナリオに厄災の魔竜生存はない。というわけでビーム砲を受けて魔竜は丸焦げになった。あんなお目目をした魔竜を倒すとか人の心!

 一気に召喚、或いは待機していた軍勢。マジックソードとかマジックシールドとか、結構な強化を施しているんだろうけど適当なネーミングセンスのせいで凡庸な印象を受ける武具を装備している。マジックキャノン……しかもバズーカタイプ、どこぞの7番目の王子が興味深そうに眺めているかもしれない。

・移動型魔力防壁生成装置「イージス」3機

・超高出力魔力線放射兵器「ブリューナク」4門

 ううむ、凄い。凄いぞ……これでは普通の国だと滅亡するだろう。しかもこいつら、力づくで国を奪う殲滅戦で被る悪評を、それも力づくで黙らせようというのだから傲慢である。

 でも……わかるんだ。

ど う せ み ん な パ リ イ さ れ る

注目度なし

 ノールたちは魔竜を心配して国の外へ。そこで目にした軍勢、そして軍勢もまたリーンちゃんたちを目視した。勿論、ロロのことも、ノールのこともノーマークだ。だって王女様と、クレイス王国最強の盾がそこにいる。どうしたって注目がいくのはそっちである。それに可愛いし。

 伝説がうんぬんかんぬん言うてますが、要するに強い者を叩き潰すのは楽しいよねって愉悦的笑みを浮かべる皇帝。ブリューナクで塵も残さず焼き、生き証人を消してやろうという。

ノール「パリイ!!」

 CM挟んでも、結果は変わらん。そう、パリイです。魔竜のブレスすらも弾き飛ばしたのだ、こんな叡智ビームでノールを倒せるはずがない。

皇帝「どういうことだ?」
視聴者「わからん……」
リーンちゃん「先生は神です」



ここは勿論、プランAだよね?

 某人間賛歌な一族もとっておきの作戦に「逃げる」がある。最近は逃げ上手なお方もいる事だし、逃げる事は場合によっては良い事という肯定的な意見だってある。

 毒ガエルを倒し、厄災の竜を屈服させた男、大量の兵士団と充実の装備を見て流石にこれは勝てないと踏んだその判断は、通常正しい。ノールは今回の騒動、国盗りのために仕掛けられた侵略だってことを知らんのです。

 王族から謎の馬車旅行をプレゼントされてご満悦中に、畑を台無しにしつつ配達中の毒ガエルと配達人のマー族と出会い、王都には何故かデカい竜がいて…………

 気付けや…! 愚鈍め…! あるかっ、そんな偶然が…!

リーンちゃん「私たちは撤退して兄と合流します。先生はどうされますか?」

ノール「この状況だ(もう逃げるしかないよ)聞くまでもないだろう」
リーン翻訳「(魔竜を倒した俺に雑兵の群れ?)聞くまでもないだろう」

リーンちゃん「そうですね。愚問でした」

 リーンちゃん!? どうかお気を、お鎮めて!

逃げ上手だったノール

ノール「奴らをひきつけて少し時間を稼ごうと思う。その隙に3人は逃げてくれ」と勇ましいノール。その自信はどこから? 蜂の群れの逃亡から。

 この話をしたらリーンちゃんのこと「先生にかかればあの軍勢も蜂の群れ、鬱陶しいだけの存在でしかないと……?」とか勘違い重ねそうだから黙っておこうね?

背中を押しましょう

 リーンちゃん! ノールにウインドブラスト直撃ちをしてはいけません、人には危険な力で渦巻いています! リーンちゃん、リーンちゃん、リーンちゃあん!

 しかし、視聴者の祈りは届きませんでした。何故ならリーンちゃんの頭には、「最強のノール先生」がいたからです。もうおしまいだよこの国。

 彼がやる事はすべて正しい。実際、リーンちゃんが心酔するには十分すぎる実績を積み過ぎているノールへの全幅の信頼は、将来パリイ教の教祖としてノールを崇め奉るんじゃないかって危惧するレベル。多分作中でノールに致命的ダメージを与える人間はリーンちゃんだけだと思うぞ。無邪気な信仰心って本当に怖い!



ノールの退き口

 リーンちゃんにウインドブラストにより、プランA「逃走」はパリイされました。よってプランB「中央突破」に強制変更!!

 何が何だかわからんが、リーンちゃんに敵陣へウインドブラスト便されてしまった以上もう行くしかない! 頭には「修羅の果てまでも」を流そう。爽やかな逃げと打って変わって超臨戦態勢。どっちもジャンプ作品だ!

 宙を舞う剣と盾。宙を舞うイージス。宙を舞うブリューナク。ヤケクソみたいな量が空を飛ぶさまを見て僕らは思う。

「これ絶対にパリイじゃない」

 やっぱり、パリイと思い込んでいるだけで実際は全く違うスキルなのではないか。むしろそうであってほしい。どういう変遷辿ったらこんな無双スキルに仕上がるんだ。

 剣を振るう度にウインドブラスト並の威力が吹き荒れるのってこれもしかして、前回のウインドブラスト便の力が黒い剣に吸収されていて、振るたびにウインドブラストが発動しまくっているとかないかな? 植物が吸って吐いてを繰り返すみたいに、魔力を吸って吐きだす系?

 そうであってくれ……そうでなきゃ今回のノール単なる化け物なんです! 逃げるために一騎当千の修羅になった彼は、敵側から見るとどういう存在なのか…………少し考えてみた。



皇帝の軍勢から見たノール

 それは。悪夢というにはあまりにも凄惨なものであった。

 先ほどまで国崩しの大役を任された誇り高き軍勢は、古の魔竜さえも焼き落とす兵器を見て自分たちが仕える国への忠誠心と戦の高揚感に溢れていたことだろう。

 一方的な勝ち戦が待っていると皇帝ですら疑わなかった軍勢は、突如現れた黒い剣を持つ男の一撃により、マジックソードとマジックシールドをどこかに弾き飛ばされた。一撃で、数百人分の剣や盾が失われた。

 姿を捉えた瞬間に繰り出される黒閃を防御など出来ようはずもなく、成すすべなく武具は宙を舞う。そして、それらがどこにあるのかを探して、空を見上げた時には既に遅く。魔法によって強化された数多の剣が先に降ってくる。盾がないと慌てふためき逃げようとするが、辺り一面平地で荒野。隠れる場所などなく、間に突き刺さる剣。剣。そして

「俺の事をお探しかい?」

 と満を持して降ってくる重厚な盾の群れは、鎧でも弾けない衝撃を伴って兵士たちにダメージを与えた。自分たちの用意した武具で壊滅的損害を出す軍勢が、あちらこちらにある。その被害を拡大させる謎の男は未だ、とんでもない脚力で疾走している。

「パリイ!」と聞こえた時には既に攻撃は終わっている。あれはパリイなどではない。振り下ろすパリイがあるものかと後に兵士たちは語る。

 一時は皇帝に剣が届く距離まで行ったにもかかわらず、執拗に軍勢の士気を削ぐように、執念深くパリイを繰り返しては去っていく。そして降り注ぐ無数の武具でまた被害は広がる。

皇帝「あの板切れは何だ?」

 知っているハズの物体を知らぬという皇帝は現実から目を逸らしていた。理論上は魔竜のブレスさえも防げる最高の盾、イージス3機。それが遥か彼方から降ってくる。何故? 吹き飛ばされたのだ。誰に? 何故?

 疑問を浮かべる皇帝の前に、兵士たちを薙ぎ払った謎の男が立つ。その手に持っていたのは、クレイス王国の国宝、迷宮の遺物、黒い剣。

 単体ならば皇帝が「化物」と評価する程の膂力を持ったクレイス王ですら両手で扱う超重量級装備を、片手で易々と構える謎の男は、皇帝に近付く。

 首をとろうとしている。そうに違いない。

 皇帝は恐怖した。絶対的な力が、あれだけの軍勢が、盾が、この男には何の意味もなさない。僅かな拠り所であるオリハルコン製の鎧とカイザーソードに縋りつく王を見て、謎の男はため息をついた。どういう意味か測りかねた皇帝の目の前から男が消えた……瞬間、伝説を焼き落としたブリューナクが、4門とも、空から降って、地に落ちた。

 これは最早狩りだ。先刻まで自分がクレイス王国にやろうとしていた愉悦的な国崩しを、この男はたった1人でやり遂げようとしている。

 殺そうと思えばいつでもできるのにそれをせず、ただただ心を折るための行動に腐心し笑みを浮かべる男。皇帝はあまりの恐怖に失禁し、何もかもの選択肢を失った末に最後に残った「逃げる」選択肢にカーソルを合わせて、「皇帝である象徴と思い込んでいる王冠」を拾いあげて兵士のことも顧みずに逃走した。

いや、可哀想

 でもお前たちが仕掛けた戦争だから文句はあるまいよな?

 次回は復興(に伴う大変な労働)をパリイするのか? 

 ロロの処遇もどうするのか気になるところだ。

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サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。