俺は全てを【パリイ】する 3話「俺は弟子入りをパリイする」感想
「この程度か」「本気で来てほしいな」
「もういい、お前の実力はわかった」
「また手合わせするまでには強くなれよ」
前回のあらすじ
謝礼をパリイしまくっていたら溝攫いソードを貰いました。
※この記事は「俺は全てをパリイする 3話」のネタバレあり感想になります。
槍の戦士の武勇伝
槍を持った瞬間。彼の世界が変わった。
まさかの無礼な槍術使いギルバートの回想に入るとは思わんかった。てっきり即刻やられて「つ、つえー」とぴよぴよ負けする運命と思っていたのに感情移入を促してくる。
槍を握って無双、無双。英雄譚の1ページに刻まれそうな凄い実績を積み上げているのだが、本人曰く「つまらない」。なろう主人公の適正はないようだ。彼が求めるのは国の平和とかよりも「自分に比肩するかそれ以上に強い敵(好敵手)の存在」だ。それ故に王国で名を上げ、王様の護衛に付くようになった彼の元に現れたのが
やたらがっしりした屈強な身体で、気配は凡庸な男。ブロードソードでミノタウロスを撃破、王にも気に入られて黒い剣を贈られた男。
そりゃあもちろん。手合わせしたいと少年心(ハート)が疼いて仕方ない。
当たらなければ意味がない
模擬戦。得物が木製とはいえしっかりと槍術を駆使するギルバートさんだが、なんか知らんが当たらない。どれもこれも紙一重どころか、まるで軌道を察知されているかの如くスイスイ避けられる。ミノタウロスを倒したその実力が如何ほどの物か知りたいのに、回避ばかりされてしまう。
素早さと、そのスピードが生み出す突きの威力で伸し上がってきた男の槍が当たらない。
ノールからすれば「遅く見える=手加減されている」と思っているこの状況、動体視力と神経の反応速度が何やら桁違いというカラクリがあった。カラクリってなんだよ、ただの実力差じゃんかこれ!?(セルフ突っ込み)
ノール「そこまで手を抜かなくてもいいぞ」
ギルバート翻訳「さっさと当てに来い」
格段にスピードを速め、最早模擬戦を超えた速度。しかし、当たらない! ここまできたら疑う要素はない、規格外の身体能力で回避に専念しているのではない、この男……俺を試しているのだと頑張るギルバートさんだったが
ノール(無防備になる瞬間あるな、狙ってくれという事か……まだ花を持たせてくれる優しい人なのかもしれない)
アニメだと長い硬直時間、恐らく実際はあんなに長くないと思う。あれはノール視点だから、ギルバートだって隙だと自覚出来ないほどの僅かな時間なのでしょう。変則的な攻撃や、そこから回避した際に生じる回避不可能な滞空時間中に、ノールの顔を目がけて突いた一撃は空を貫いた。完璧に、瞬速の一撃をじっくり眺めたうえで回避した。
「何故」がギルバートの脳裏を駆け巡る混乱状況でノールは進言。
ノール「まだ大丈夫だ。もう少し速くしてくれてもいいぞ(いい加減俺を勝たせようとかの気遣い良いから全力できて欲しい)」
ギルバート翻訳「これで本気なわけないよな?」
頭蓋骨を的確に射抜ける軌道を見せてもビビるどころか回避して平然とする。この大男、見た目以上に俊敏。
ノール(あれ……もしかして俺……相手の本気に普通に対処出来ている??)
おっ! ようやく、ようやく自分が弱いって逆勘違いを克服し、究極ノールになるのか!!
ギルバート「ドラググレイブ!!」
1文字違ったら超有名魔法になるような奥義をぶちかますギルバート、お前今殺すつもりでやっただろ!? 当たれば先ず生身の人間は昏倒するか死ぬぞ! これを回避出来た敵はひとりとしていないはずだ、勝った! パリイする 完!!
ノール(…あんな凄い技…凄い…やっぱり俺ってまだまだ雑魚なのかもしれん)
勘違いの殻に籠ってしまった! 逆アイアンメイデン!! 違うんだノール、何でお前無傷なんだよワレェ!!?
ノール「分かった、俺の負けだ(俺ロクな技使えないしアカンこれ以上はダメだもう帰ろう、帰りたい)もう分かった、これ以上続ける意味もないだろう」
ギルバート翻訳「ミノタウロスを倒した技を使う価値もない」
ノール「また、次に会うのを楽しみにしている」
ギルバート翻訳「鍛錬して出直してこい」
屈辱的完敗
あれだけの精度の突きを雨霰と与え、小技も奥義も駆使して確実に勝ちを取りに行ったのに、相手は無傷で立っている。それどころか本当に回避ばかりで、技の軌道を逸らす等の妨害行為も一切しなかった。更には最初に「距離で勝る槍」に対して木剣を後出しで選ぶハンデに近い行動もされている。
全部の技を晒すつもりで挑んだのに、唯一引き出したのが「忍び足」「身体強化」だがこれもギルバートからすれば何が起きたのかもわからない有様(種が割れても、下級スキルの合わせ技で奥義を回避したとか絶対に信じないし信じたくないだろう)
「ミノタウロスを倒した技」を引き出すことは遂に出来なかった。
因みにパリイすることも出来ただろうが、やったら物凄い勢いで壁に叩きつけられ重傷を負っていたと思う。
それらの事実をひっくるめて、最後の最後に勝ちを譲ってもらう。武勇に全てをかけた戦士としてこれ以上の敗北はあるまい。部下の慰めの言葉は癒しどころか剣山のように突き刺さっている事だろう。
だがこの屈辱は、彼を絶望の底に落とすものではなく、灰色だった世界に豊かな色彩を与える事になった。本当に欲しいものが今存在する喜びに、自然と笑みがこぼれたのは男の子って感じで良い。
頑張れ ぴよバード。槍の速度を磨きリベンジするのだ。ぴ~!
大きな強いつるぎで~ド☆ブ
黒い剣「いやああああああああああああああああああああああああ」
煌びやかな城の。玉座の後ろに飾られていた、王の誇り。
黒い剣「やめっ、やめろおおおおおおおおおおおお!!!!」
姫を救った救国の英雄への褒美として賜られた時、剣に心があったらさぞ心が躍っただろう。
黒い剣「俺を、俺を誰だと、誰だと思ってやがおぼぼぼぼぼ」
そして言葉がつかえたら、今は絶叫していただろう。英雄はこの黒い剣を、本当にドブ攫いの道具として使い込んでいた。
黒い剣……この黒い部分が今後はドブ色に染まっていくのだ……ドブソード……王家の宝の姿か、これが……臭く、汚らしく、無骨な姿がべこべこに見えてしまう有様。生き恥。
そして、あまりにも頑丈過ぎて、破壊されたくても破壊できないので、その内黒い剣は、考えるのを、やめた。
この剣で俺に出来る事……
ドブ船:オール代わりに使う。剣が錆びる、もっと駄目になる!
ドブピザ:ドブ攫った剣でピザ焼くな衛生組合様あああああ!
ドブ焼肉:食中毒ぅうううう!
ノールの両親、夢枕で良いからコイツに真っ当な剣の使い方を教えてあげてくれ! このままではドブと人生を添い遂げかねない!! そして腹を壊しかねない!!
清涼剤(リーン) 現着
14分……まともな女性キャラがいないむさい男同士の語らいとドブまみれの時間を超えた先に、満面の笑みを浮かべるリーンちゃんが現れた。ああ……ドブ色の世界がとても綺麗になっていくのがわかる。
従者にしてください!
とにかく凄いスキルをたっぷり身に着けていることをアピール、自分は使える人間だからとノールへの弟子入りを志願するリーンちゃん。
何だか勝利確定の剣みたいな構えの技あったけど気にしないでおこう!
(……まさか槍男のギルバートってそういう!?)
とはいえ、教えられるスキルはパリイ以外なんもないのでリーンちゃんには無意味。天涯孤独を十数年続けているため炊事洗濯関連は必要なし。ノールからすれば弟子をとる理由が存在しない。時間の無駄になるだけと全力で弟子入りをパリイ。
ノール「俺が君に教えられることは何もない。役立って貰おうと思わない。自分のことは自分で出来る」
リーンちゃん翻訳「俺の弟子になるには君はまだ、未熟!」
リーンちゃん「それなら、私を好きに使って構いません!」
アカン! ノール、薄い本の圧をパリイしろ!!!
木「俺の心配を、誰もしないんだね?」
朧刀という謎の奥義の犠牲者、リーンちゃんに斬られたんだ、本望だろ。
ノール(この子……俺に教えを乞う価値ありと勘違いしているようだから早く断らないとだめだ……)
それはそう。パリイは凄いけどアレを極めるなら朧刀極めて森の木々を切り倒させた方が強い気がする(木こりスキルじゃねぇ!)
ノール「ますます君に教える事などない」
リーンちゃん翻訳「その程度のスキルでこの俺が弟子に取ってくれると思っていたのか?」
今のはプチファイヤーだ。
今のは本当にプチファイヤーなんだ、実は上位魔法を圧縮したシロモノとかそういう魔王が言いそうな文言じゃないんだ、ただ本当にちっぽけなプチファイヤーなんだ。ノールが使えるまともな魔法はこれしかない。
何かプチファイヤーにしてはデカくない????
伝説の超凡人
1話ではさらりと行っていたノールの6か所巡りは、ちょっとした伝説になっていた。屈強な戦士でも3日で音を上げる過酷な訓練。それを満期、6か所巡り。……あれってそんなに厳しいの!!? そうか、ノールの視点でしか語られていないから「とんでもない苦難」が全然伝わらんのか、彼の人生そのものがハードモードだからなあ!
「先生らが言うにはな、6つの施設で訓練を満期受けた凡人がいたらしい」
「ほー。そりゃあ作り話やな。あんな地獄を1年以上やったら死んでまう」
で。そんな凡人がひたすら鍛錬した結果、磨き抜いたパリイがあれ。
じゃあ、1つしか得られなかった大切な魔法だったらどこまで鍛える??
リーンちゃん「200年生きたオーケン先生のよりデカい……」
多彩かつ天才のリーンちゃんですらプチファイヤーはマッチで擦った程度の火球。
「でも、ただのプチファイヤーじゃねえぞ」
プチファイヤーといいつつ単なるファイヤーだろと言いたくなる大きさ。プチ要素何処? ド級の(以下略)
ノール「これが俺のプチファイヤーだ(最下級魔法しか使えない)。他のスキルも(全部これと同じでしょぼい)こんなもんだ。これがどういう事かわかるか?(つまり俺は雑魚なんだよ、何も教えられないんだよ、時間の無駄になるからさっさとお帰り)」
リーンちゃん翻訳「極めれば最弱でも別物。他のスキルも全て極めつくすために今なお研鑽を積み重ねている。君はまだこの境地に立てていない、出直しなさい」
ミノタウロスを倒したあの強さを追い求めて弟子入りに来たリーンちゃんは、あまりの格の違い(勘違い)に圧倒された。それだけの力を誰にひけらかすこともなく、誇示することもない圧倒的精神力。国を担う者に必要なのはこの世界だと確かに武力も必要だろう、だが、それ以上に心の強さが必用なのだ。だからこそ、今一度弟子入りをしたいと固く誓うリーンちゃん。
「でも、ただの弟子入りではありません」
何度断られても精神的強さに惹かれ弟子入りを志願する。ド級の弟子入り、ド弟子だ!!
リーンちゃん「ノール様。よく分かりました」
ノール(お、ようやく俺が弱いってわかってくれt)
リーンちゃん「己の慢心、そして未熟さが!」
ノール(あれ、なんか、風向きが変わった?)
リーンちゃん「ノール先生!」
ノール「せんせい?(なぜ????????????)」
困惑の嵐で意識を持っていかれそうなノール。リーンちゃんの確固たる決意を知ることはない!
ミノタウロスはパリイ出来ても、たった一人の女の子はパリイ出来ねえようだな。
次回、何をパリイするのか? もしくは出来ないのか?
頑張れノール。強い弟子と一緒に、己の知見を広げるのだ。
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