【ビジネス書を読む時間がない若手金融会社員・就活生向け!】ファイナンスの基本2
前回から、ファイナンスの基本について記載しています
今回は、リスクとリターン、資本コストについて記載したいと思います
自社や他社の企業価値を算定する際に必要な知識となるため、ファイナンス業務が専門外の方にとっても知っていて損はないと思います
実務上は、投資ファンドや投資銀行のM&Aチーム、ファイナンシャルアドバイザー(FAS)が専門的な知見を保有しています
私自身も、投資ファンド在籍時は案件ごとに企業価値算定を実施していました
1. リスク
ビジネスのリスクとは、資産のリスクと捉えることができます
つまり、DとEのオーナーである、債権者と株主が負担していることになります
債権者が担保を取っており、ビジネスの成功有無に関わらず収益(リスク)が同じである場合は、ビジネスリスクは背負っていないため、株主が100%リスクを負っていることになります
なお、投資家目線ではリスクは2種類に分類できます
①ユニークリスク(他同業社の株式を保有する等で、リスクのコントロール可能)
②システマティックリスク(リスクのコントロール不可)
2. リスクとリターン
CAPM(資本資産評価モデル)
事業の経済性を評価するためには、各事業の株式のリスクをどのように評価するのかが重要となります
この問いの回答となる1つが、CAPM(Capital Asset Pricing Model:資本資産評価モデル)です
まず、株式への投資を判断する際のベンチマークとして最適なのが、マーケットポートフォリオです
なぜなら、マーケットポートフォリオは株式で構成されていて、リスクとリターンの関係において最強であるとともに、株式を買う投資家にとって実行可能なオプションであるためです
つまり、投資家はマーケットポートフォリオという投資オプションを持っている中で、ある特定の株式を買うことになります
X社に投資する場合、リスクが増えるのであればX社に高いリターンを要求する必要があり、逆にリスクが減るなら低いリターンでも良いと考えられます
これが、CAPMの中心となるβの考え方です
β(リスクを表す係数)
βは、マーケットポートフォリオの収益率が変化したときに、ある株式の収益率がどのくらい変化するかを表しています
つまり、株式投資において実行可能な投資オプションであるマーケットポートフォリオをベンチマークとし、それに対する個別株式の相対的なリスクを表しています
株式市場全体と同じ値動きをする株式のβは1となります
βが1よりも高い株式は、株式市場全体よりもリターンの変動が激しいことを意味するためハイリスクハイリターンということになります
景気に左右されやすい会社のβは1以上、政府規制下にあり安定的なビジネスを行う会社のβは1以下であることが多いです
CAPMの公式
βを使うことで、ある株式Xに期待されるリスク・リターンを以下のように表すことができます
E(rx)=rf*<投資の時間的価値>+βx(E(rx)-rf*)**<リスクに対する報酬>
※rf*:リスクフリーレート
※(E(rx)-rf)**:マーケットリスクプレミアム(株式投資をした場合に得られる一般的なリターン)
βが0であればリターンはrf(株式投資により生じる投資の時間的価値に対する報酬)となりますので、リターンはその株式のリスクを表すβによって決まります
3. 資本コスト
資本コストとは
投資家から資本を提供された経営者は、その対価(投資家が要求するリターン)を払う必要があります
投資家が提供する資本の形態は、負債と株式の2つに分かれます
負債の対価は金利です。金利のコストは、企業が借入を行う際に資金提供者との間で取り決められますが、債権者は企業のリスクを判断して、金利の水準を決定します
株主資本の対価は、配当とキャピタルゲインという形態をとります。株主資本の対価は、資金提供者との間で取り決めはなされませんが、リスク資本である株主資本に対しては金利以上のリターンが要求されます
株主資本のコストを上回るリターンを実現しないと、投資家は資本提供を控えるようになるため、経営者は常にに株主資本コストを上回るリターンを実現しなければなりません
負債株主資本で構成される資本のコストを、資本コストと呼びます
資本コストは、投資を行うために必要となる資本に対して発生するコストであるため、事業の経済的価値を計算するときに割引率になります
資本コストの定義式(WACC)
資本コストは、通常WACC(Weighted Average Cost of Capital:加重平均資本コスト)と呼ばれます
以下式で表されます
WACC=D/(D+E)<負債調達比率>×(1-t)×rd<負債調達コスト>+ E/(D+E)<株主資本調達比率>××re<株主資本調達コスト>
資本コストは投資の意思決定を行うために使うため、過去ではなく将来に向かって発生する資本コストを使用する必要があり、現時点における最も確からしい数字に基づいて求めることになります
いかがでしたでしょうか
本日は、リスクとリターン、資本コストについて記載しました
次回もお楽しみに!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?