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『冬乃くじのBFCトリロジー』
冬乃くじによりBFC4に投稿された三作は内容的に共通する点があり、三部作として読むことで完成される。と、いったような要旨。
1.は前二作の三部作における位置づけ。2.は三作目の意図するところについて。
1.
「サトゥルヌスの子ら」(以下「サ」)は主人公と、抑圧的な父親、父に才能を搾取されていた姉の三者の関係の物語だ。
「あいがん」(以下「あ」)は主人公と、抑圧的な母親、母から溺愛されて
BFC4 本選Dグループ 感想文
たそかれを 「日記」
タイトルからすればこれは日記の記述なのだろうが、誰かに読んでくれるよう頼んでいて、つまりこの文章を読むような親しい人が身近にいる。語り手は最低でも三回は離婚を経験している。アルバイトで生計を立てている。親の介護、葬式など考えているところからして、それなりの年齢なのだろう。読んで欲しがっている“少し前にあった出来事”の話は、要約すれば三度目の離婚のきっかけになったマーセ
BFC4 本選Bグループ 感想文
タケゾー『メアリーベル団』
ヤングケアラーを扱った本作は、主題のアクチュアリティという意味で冬野くじ『サトゥルヌスの子ら』と並び本選の中でも目立っている。
主人公は三つ年下の妹の世話をずっとしてきた小学四年生の男の子。小学校に入ってから十歳の十月までの四年以上もの期間、授業が終わるとすぐに帰宅して夜十時まではひとりで妹の世話をしている。母親の仕事が休みの日は役目から解放されるのだろうか?多
BFC4 本選Aグループ 感想文
古川桃流 「ファクトリー・リセット」
よくある家庭の風景、と思わせる出だしから、段々と様子がわかってくる流れがとても良くできていて、家や母親についてのちょっとした叙述トリックめいた仕掛けも意外性がある。読みながら、エンターテイナーの丁寧なもてなしを感じた。
ただ一方で、この世界におけるロボットの立場がよくわからなかった。アリスは主人公の持ち物なのに何故ビルの隙間にいるのだろう。それとも自律し
『Kとサイゼのミラノ風ドリア、』感想
さらっと読んでしまうと、長い付き合いの友人との別れを描いた物語、としか見えない。イグナイトファングの出番のない少し感傷的な百合風味ブンゲイ的一品だ。
しかし注意深く読むと、不思議な記述が頻出することに気づく。これは見かけ通りの物語ではないのでは、というのが以下の文章の要旨です。
サイゼリヤのミラノ風ドリアが300円になったのは2020年7月からとのことなので、作中の時代設定はそれ以降。