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Instagramが縦に伸びて、写真の時代は終わりを迎える?

気づけばInstagramのプロフィールグリッドが正方形ではなくなり、4:5の表示になっていた。これまで4:5で投稿していたものは、一覧表示でもフルフレームで表示されるようになったわけだ。

Instagramといえば正方形。写真のスタンダードである2:3の比率をグッと圧縮し、プロダクト的表現として確立させたのが、Instagramというプラットフォームの本質だった。ハッセルブラッドやローライといった中判カメラの伝統的なフォーマットが1:1だったこともあり、デジタル時代においてもこの比率は自然に受け入れられた。むしろ、Instagramの登場によって写真の画角が時代を遡るような変化を遂げたとも言える。

Instagramは写真表現だけでなく市場を変えた

写真のフォーマットが変わるということは、それに依存する市場のあり方も変わるということだ。Instagramの登場以降、1:1の比率に適したビジュアルが求められ、特にファッション業界はその影響を大きく受けた。

たとえば、デザイナーたちは正方形のフレームで映える服を意識するようになり、ブランドのビジュアル戦略はInstagramを前提としたものへと変化していった。オーバーサイズの流行も、トレンドサイクルの中での必然という側面はあるものの、Instagramの正方形フォーマットが影響を与えた要因の一つかもしれない。とにかく「プロフィールグリッドで映えること」がブランド戦略の鍵だった。

その意味で、今回の4:5化は多くのアカウント保持者、とくにビジネス利用者にとって大きな変化をもたらすことになるだろう。

写真の逆襲が始まる?

現在の投稿は、正方形で見えることを前提に構成されている。しかし、4:5になれば、これまでフレーム外に切り捨てられていた部分が突然浮かび上がることになる。「正方形だから」とトリミングしていた余白や写り込みが、否応なく目に入るようになるのだ。

写真とは「四角の芸術」である。そう考えれば、この変更はある種の写真の逆襲とも言える。

今回の変化をもたらしたのは、明らかにリール(動画)の影響だ。

Instagramのアルゴリズムでは、現在、写真よりもリールの方が圧倒的に収益を生む。それゆえ、プラットフォーム側はリール優先のUXを推し進めている。当然ながら、リールをメインにしているユーザーにとっては歓迎すべき流れだろう。

写真の終わりか、それとも新たな始まりか

このエッセイのタイトルは「写真の時代は終わりを迎える?」としたが、むしろ新たな写真の始まり、あるいは写真の逆襲の始まりなのかもしれない。

なぜなら、写真の四角があらわになるからだ。

正方形というフォーマットは、構図のバランスが取りやすく、何を撮っても整った印象になりやすい。ある意味では「商品化された写真」の象徴だった。しかし、4:5になることで、フレームの四隅に不完全な要素が現れ始める。それはノイズであり、ベンヤミンの言葉を借りるなら、そこにプンクトゥム(心を刺す要素)が生まれ、写真にアウラ(独自の雰囲気)が宿る。

さらに言えば、4:5という比率は、大判カメラ(シノゴ)のフォーマットと同じである。

小さなiPhoneの画面の中で、写真のノイズたちがざわめき出す。2:3 → 1:1 → 4:5 という遷移の中で、写真家たちはこの時代にどんな夢を見るのだろうか。

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Tokimaru Tanaka
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